BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――年間最大の勝負駆け

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 問題です。どっちが東京で、どっちが福岡でしょう?

 

 などと言っている場合ではない。シリーズ戦記事のほうで書いたように、緊張感高まる5日目の朝なのだ。トライアル第3戦は、間違いなく、年間最大の勝負駆けである。ややこしいこと言って浮かれている場合ではないのだ。

 とは言いつつも、東京在住福岡支部の瓜生正義と、福岡在住東京支部の齊藤仁は非常にリラックスした様子で、会話を交わしていた。仁ちゃんも、こちらを見つけるや、爽やかな笑顔で声をかけてくれて、こうした雰囲気はまったくもって、いつも通りである。

 

 

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 ピリピリ感をもっとも強く感じたのは、松井繁である。作業などにあたっては、いつだって王者モード全開の厳しく凛々しい表情を見せる松井であるが、その度合いが今日は明らかに増しているように思える。賞金王の戦い方を世界一知っている男。ということは、今日がどういう日なのか、世界一知っている男である。戦略も含めて、松井のコンピュータがもっとも高速回転する一日であろうから、自然と顔つきにも熱を帯びるのは当然というものだ。

 

 

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 迫力を感じたのは、田村隆信だ。整備室前に置かれていたボートの上に、オレンジ色のものが見えた。体重50kgを切った選手が、重りなどを入れて体重調整をするベスト=オレンジベストだ。そう、今日の田村は体重が50kgを切った。前検時の体重が53kgである。たった3日間で4kgも落としたのだ。ほとんど何も食べていないだろう。よく見れば、頬がコケている。そのオレンジベストこそが、田村の気迫のあらわれなのだ。ただ、声をかけるとなんとも柔らかい表情を見せてくれた。ずいぶん減量しましたね。「ははは、久しぶりにね」。この男、抜群の勝負師である。

 

 

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 湯川浩司も、朝から試運転を続けるなど、緊張感を保っている。得点的には、かなり厳しい状況である。自力での優出は、現時点では可能性をなくした。しかし、今日は1号艇なのである。激戦となるトライアル3戦だけに、何があるかわからない。湯川としては、ひたすら逃げるだけなのだ。1R発売中にはいったん、ボートを陸に上げている。こちらの存在に気づいて、ペコリと頭を下げてきた湯川。その表情は凛々しく、また力強かった。

 

 

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 太田和美もまた、今日は気合の入る一戦。太田に挨拶をすると、ふっと表情を緩めて、優しく言葉を返してくれた。リラックスしている? まあ、緊張しまくっているという感じではないし、まだリラックスできているかもしれないが、僕はその柔らかさに太田の気合を見たような気がする。たしかグラチャン優勝戦の朝も、こんなふうに柔らかかったからだ。もちろんあのときとは状況が違う。グラチャンは1号艇、今日は勝負駆けの6号艇である。だが、そうしたかたちで太田は臨戦態勢を整えていくのではないかと勝手に深読みした次第。大外枠だろうが軽視禁物、そう思った。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)