BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――混沌たる戦況

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 毎朝、9時半頃からスタート特訓が行なわれている。その申し込みは前日。細かなシステムは場によって違うだろうが、福岡では9R頃に「明日のスタート特訓2回希望の選手は競技(本部)へ」とアナウンスがかかって、このあたりが申し込みの締め切りとなっているようだ(別の場では、宿舎に申込み用の紙が置いてあって、選手が書き込んでいるのを見たことがある)。

 というわけで、このアナウンスがかかると、選手が動き出す! 競技本部には選手が次々にやってきて、申し込んでいる。それまでプロペラと向き合い、究極の集中力で調整をしていた選手も、強烈な瞬発力で駆け出していく。烏野賢太の出足、すごかったな~。それを追う峰竜太も軽快に駆け出していたが、伸びは互角で、烏野のほうが先に競技本部に着いている。申し込みが終わると、烏野も峰もやはり駆け足でペラ調整所へ。明日の戦いはすでに始まっているわけである。

 

 

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 もちろん、その時点では今日の戦いがまだ終わっていない。まさに9R、篠崎仁志は6着に敗れてしまった。ドリームも6着で、これは点増しがあるわけだが、今日の6着=1点のみの加算はやはり痛い。明日は一日早い勝負駆けとなってしまった。

 レース後、悔しそうな顔で視線を送ってくるので、歩み寄って声をかけてみると、とにかく悔恨ばかりが仁志の口からこぼれてきた。「スタートが届いてないっす……せめて展開が見える位置にはいなきゃいけないのに……」。焦りも生まれてきているようだ。現在の得点率は4・67。「次に1着を獲れば、6・00にはなりますよね」を何度も繰り返した。算数苦手なワタクシですが、必死で計算すると、確かにその通り。予選終盤にメドが立つことになる。でも、そんなん考えないで、残り3走全部ピンなら余裕で予選突破ですぜ。そう言うと、篠崎はカハハハと笑った。ムチャ言うよなあ、という笑いである。だが、今は下を向くことなく、明るく戦ったほうがいいんじゃないかな、とも思ったりする。というわけで、明日もさらにムチャブリをすることにしよう(笑)。

 

 

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 いや、もちろん仁志自身、諦めてなどいるわけがないが、決して悲観すべき状況というわけでもないだろう。というのは、鎌田義曰く「いまだ混沌としている戦況」なのだ。今のところ、頭ひとつ抜けた選手はいない、というのが鎌田の見立てで、「たしかに毒島(誠)がええ調子やけど、おい、一真、毒島が抜けてると思うか?」と森高一真に問いかけると、「いや、それはどうだろう」となぜか標準語で返したのである。森高はなぜかずっと標準語で通していたので突っ込むと、「江戸っ子だからよぉ~」とのこと。違うでしょ(笑)。

 

 

 

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 11R後、カマギーが「な? わからんやろ?」と言う。勝ったのは先輩の吉川元浩。今日は連勝だ。だが、「いちばんエンジン出てない人が、連勝や」。ようするに、水面が非常に難しく、どんな展開でも起こりうる状況だというのである。スタンドから見ている分にはあまり実感できないが、鎌田によれば、福岡特有のうねりがやはりレースに影響しているという。特に水面が高いときがそうで、低くなってくると2コースからでもまくりやすい状況になっている。つまり、時間帯によって水面が刻々と変わるために、選手もスタート勘やら何やらがつかみにくくなっているのだ。今日、前付けのない枠なりで、今村豊が5号艇でもないのに、5対1の進入が2回あった(カマギーの走った9Rもそうだ)。福岡はダッシュが180mまでしか引けないコース形態で、しかも2マークの幅が広いため、自分の居場所がわかりにくくなることがあるという。だったら、ターンマーク起こしのほうがいい、ということになるわけだ。さらに言えば、進入がもつれればやはり起こし位置がわかりにくくなるので、外枠が前付けに行きにくい状況にもなっているということである。

 ということはつまり、「現在の成績やモーター相場は、決して絶対ではない」ということなのだ。鎌田や森高も上位を虎視眈々と狙っているし、他の選手にも上位浮上は充分可能。ファン的に言えば、「2日目までの成績が悪くとも、簡単に見限るべからず」ということになるだろう。これ、僕もちゃんと覚えておこう。

 

 

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 ただ、カマギーも森高もひとつ共通していたのは、「宇野弥生のパワーはけた外れ」ということ。「優勝するんじゃないかと思えるほど、インパクトがある足だ」とやはり標準語で森高が言っており、宇野が捨て身で攻めて来たらかなりの脅威だと感じているようである。もちろん、なんとしてもそれに対処しようという思いも、二人にはある。

 

 

 

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 ようするに、明日もさまざまな攻め筋が見られる、実に面白い一日になる可能性がたっぷりとある! そうしたことを、他の選手たちも肌で感じているのか、少しでも上積みせんと、調整をなかなかやめようとしない選手たちもたくさんいた(カマギーもそうだった)。たとえば井口佳典は8R後に整備室に直行して、本体整備をしており、かなり長い時間これを続けていた。齊藤仁も、同様。1便(10R終了後出発)で帰ってもおかしくない選手が、11R以降も数多くピットに残っていたのである。

 個人的には、ここまでやや不振の選手が絡んでくれれば穴になるので、今からワクワクしております。まずは6R5号艇、勝負駆けとなりそうな仁志を狙ってみようかなあ。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)