BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――笑顔が見たい!

 

f:id:boatrace-g-report:20171213142940j:plain

 初日まくり快勝だった今村豊。足的に不安はないのか、レース後の作業はかなり早い段階で切り上げて、通勤着に着替えゆったりと過ごしていた。1着発進で、気分も上々。こうなるともう、誰彼かまわず、ちょっかいを出さずにはいられないようである(笑)。

 基本的にエンジン吊りにしか出てこないが、控室へと戻り際に、そこにいる選手に声をかけまくる。たとえば江口晃生。今村がなんと声をかけたのかはわからないが、江口は「ガハハハハハ!」と大笑いを返しており、どうもペラ調整に向かう江口をからかったようであった。江口は笑いながら大声を返す。

「(ポンポンと腕を叩きながら)ここをついてこさせるペラを作るの!(頭を指さしながら)ココを使って!」

 江口の突っ込みに嬉しそうに笑う今村。ちょっかい出して、ツッコミを受けて、満足そうな笑顔を見せる、のである。江口と別れたあとにはたまたますれ違った池田浩二にも声をかけていたぞ。ほんと、楽しそうである。

 レースの合間に、一服しようと喫煙所に行った。すると、そこでは今村豊オンステージが繰り広げられていた(笑)。記者さんを相手に一席ブッているのだ。話題は何かと思ったら、パチンコとパチスロ(笑)。自分の仕事は終わっているから、すっかりリラックスモードである。えー、ワタクシ、そちら方面はまるで詳しくないので、話は7割がたチンプンカンプンだったのだが、しかし軽妙な自慢&自虐トークは爆笑の連続で、タバコを吸い終わっても立ち去れなくなってしまった。そうこうしているうちに、ファンファーレが鳴る。それでも話をやめない今村豊(笑)。あやうく11Rを見逃すところであった。

 こんなにおもろい今村豊を見られるのは、このうえない幸せである。

 

f:id:boatrace-g-report:20171213142959j:plain

 9R、インの齊藤仁が敗れ、6コース-5コースの決着となった。勝ったのは峰竜太。2着は岡村仁。95期同期ワンツーである。

 6コースからの勝利は、選手にとってもとにかく爽快だ。峰は報道陣に向かって笑顔満面で両手ガッツポーズを見せたりもしている。会心の差し切りに、心を存分に弾ませていた。こういうときの峰竜太は強い。気分を高めることでモチベーションもアップさせ、それをハンドルワークやレバーワークに反映させることが多いので、笑顔がたくさん見られるときのほうがいい結果をもたらすのだ。

 僕の聞き間違いでなければ、レース後に「ジン、ごめん!」と言ったと思う。それを聞いた瞬間、ちょっとドキリとしたのだ。1号艇の齊藤仁を呼び捨てにし、タメ口を利いた? 勝ったからって、仁ちゃんがバリバリの好人物だからって、大丈夫なの? はい、ジンはもう一人いたのです。岡村仁。ただし、こちらは「まさし」と読む。でもやっぱりジンと呼ばれますか。我々もそう読んでますしね。峰に笑顔を向けられた仁は、おぅっと笑顔を返す。同期ワンツーが嬉しくないわけはない。(もし聞き間違いだったら、この部分すべて台無しですね)

 

f:id:boatrace-g-report:20171213143022j:plain

 ただし、岡村の本音はちょっと違う。そりゃあ、自分が勝ちたかったに決まっているのだ。しかも、1マークの展開は一瞬、岡村の突き抜けを浮かび上がらせている。岡村も手応えはあっただろう。ところが、内には緑色のカポックが突っ込んでいた。それが同期とわかったとき、きっと「負けたくない!」という思いも強く抱いたはずなのである。

 実際、その後、何度も同じ言葉を耳にした。「ええターンできたと思ったのに、もっとええターンをされた」。新聞記者さんや、JLCの長嶺豊さんのインタビューや、さまざまな人に声をかけられ、岡村はその言葉を繰り返していたのだ。そりゃ、悔しいよなあ。言っておくが、峰を心から祝福する気持ちと敗戦を思い切り悔しがる気持ちは、同居できるし、両立もする。岡村は峰を称えながらも、またワンツーを喜びながらも、一方で「クソッ」というつぶやきをなくしてはいないのである。この男、まだまだ強くなりますよね。

 

f:id:boatrace-g-report:20171213143040j:plain

 11Rでは、山崎智也の会心の笑顔も見ている。勝って上がってきたときには、意外なほど淡々としている智也だが、今日もピットに戻った直後はそれは変わらなかった。毒島誠がにこやかに声をかけると、ヘルメットの奥で目を細めたが、それほど深い笑みではなかった。これが山崎智也である。

 心からの笑顔は、ヘルメットを脱いだ直後にあらわれた。平石和男が歩み寄って、からかうように声をかけたときである。一気に目元と頬が緩み、「あんまりいじめないでくださいよ~」と吹き出しをつけたくなるほど、柔らかく笑った智也。間違いなく、勝利に浸っている表情である。やっぱり智也はそうでなきゃね。これでこそ、山崎智也である。

 

f:id:boatrace-g-report:20171213143108j:plain

 最後に、調整の様子を少し。今日はレース後に本体に手をつける選手が少なくなかった。ざっとあげると、徳増秀樹、仲口博崇、石川真二などなど。ギアケース調整も多く、江口晃生と大笑いしながら調整している秋山直之も見た。秋山がこんな顔で笑うの、最近ほとんど見たことないぞ。鎌田義も、11R発売中まで試運転を続け、12R発売中にギアケースに取りかかった。とまあ、整備室では多くの選手が目撃できたのである。

 そんななか、濱野谷憲吾も本体整備! 最近では時折見かけるようにもなったが、もともと濱野谷はプロペラ調整のみで仕上げるのがスタイルであった。今でも、基本はプロペラ、というのは変わっていないように思う。だから、こうして本体と向き合っているのを見ると、ちょっとテンションが上がる。それほどエンジンが動いていないのだという可能性もあるが、濱野谷が必死にパワーアップを突き詰めようとしているというのは間違いないからだ。ガツガツしている濱野谷、カッコいいと思うぞ。

 その後は、さらにプロペラ調整も始めて、作業は最後の最後、ギリギリまで続いた。気持ち入ってます! 明日はファンタジスタらしいさわやかな笑顔を見たいですね。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)