BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――応援したくなる強者たち

 

 

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 やっぱり齊藤仁は応援したくなる人なのである。

 10R発売中、仁ちゃんはなぜかボートリフトの前でたたずんでいた。じっと水面を見つめ、物思いにふけっているようにも見える。夕暮れ時の丸亀水面は実に美しいので、僕などもよくぼけーっと眺めたりしている(取材しろって)。

 すると、仁ちゃんは動いた。試運転をしていた興津藍がピットに上がってきたのだ。すかさず歩み寄り、エンジン吊りを手伝う仁ちゃん。そう、試運転組のヘルプをするべく、待機していたのだ。この時間帯、リフトの周辺には人っ気が実に少なくなり、上がってきた選手は一人でボートを押して装着場まで運んだりしている。手の空いていた仁ちゃんは、そうした状況にならないよう、献身的に動いていたのだ。だって、興津とは支部も地区も期も違うんだから、そうとしか思えない。

 その次に上がってきた岡崎恭裕にも、駆け寄っている。東京支部福岡在住の仁ちゃんだけに、同県内に住んでいる若手は後輩のようなもの……というわけではないんだろうな、きっと。

 水の上では先輩も後輩もない。同支部も他地区もない。全員が敵。それを知り尽くしている仁ちゃんだから、賞金王にも出られる。だが、陸の上での仁ちゃんは、最高のジェントルマンだ。だからこそ、応援したい。ギリギリの緊張感が支配する舞台で、仁ちゃんの姿を見たいと思う。あ、あと、話を聞いたわけではないけど、エンジンにも手応えがあるんじゃないだろうか。そうでなければ、さすがに自分の作業に没頭しているはずである。つまり、応援うんぬんを差し置いても、充分狙える存在だと僕は思う。

 

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 ちらりと書いたが、岡崎恭裕が遅くまで試運転をしていた。本人には失礼かもしれないが、これまでこうした姿を見た記憶がない。実際、誰かわからなかったが「試運転してた!?」と意外そうに話しかけてもいる。ようするに、僕は岡崎を「努力している姿を見せたくない」男だと思っている。クールにも見えるし、ガツガツしていないようにも見えるけれども、実は胸の内には野獣を住まわせていると勝手に見ているのだ。その一端が、今日は見えた! 試運転後もリードバルブ調整に取り掛かり、集中した表情を見せている。その姿はなかなかカッコ良かった。前半のピット記事で書いた通り、今の岡崎は迷いの中にいるのだろう。それを振り払うための行動が今日見たものだったとしたら、ここから大反撃を見せてもまったくおかしくないだろう。

 

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 一番最後まで試運転をしていたのは、川﨑智幸だ。出走表には47歳とあるから、マスターズ世代目前。ベテランの域に差しかかった、と言って差し支えないだろう。その川﨑が、最後の最後まで試運転をしていたのである。まずは頭が下がる。

 理由はもちろんある。スリーブを新品に交換したようなのだ。こうした場合、馴染ませるためにもエンジンを回さなければならない。回すだけなら調整用のペラをつけて係留所でやってもいいわけだが、川﨑は試運転を延々と続ける方法を選んだ。もちろん体力は試運転のほうがたくさん消費される。夜になっても気温は高い、それでも川﨑は走ったのである。一緒に眺めていた青山登さんとも話したが、機力上昇うんぬんより、ここまでやったのだという精神的なプラスが大きいのではないか、と思う。努力は技術を身に着けるが、自信をも心に植え付けるもの。明日の川﨑は何よりその部分が脅威であり、6号艇といえども一票を投じたくなるわけである。

 

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 ところで、1Rで見事なまくり差しを決めた濱野谷憲吾が、夕刻にピットに入ったら、なんと整備室にいた。しかも、本体を割っているではないか! マジか? あれだけ華々しいまくり差しをともに決めた相棒に、さらに手を加えているとは! 最近は、濱野谷の本体整備をかつてより頻繁に見かけるようになった。だから、もはや本体整備をしていたとしても、特に驚きはしない。だが、あれだけのレースのあとで!? 池上カメラマン情報によると、濱野谷自身は「エンジン出てない」とか言っていたということで、まだまだアレでは物足りないということなのか。僕は、これを濱野谷の本気と、前向きにとらえたい。やっぱりこの人には平和島賞金王にいてもらわなくては困るわけで、好気配の今回がスパートのチャンスだと本人は捉えていると勝手に思いたいわけである。少なくとも、濱野谷の表情は機力出しに苦戦している人のものではない。充実感はたしかに伝わってくるのだ。(PHOTO/池上一摩 TEXT/黒須田)

 

 

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ここからは黒須田の写真で失礼。10Rで1着を獲って上がってきた今垣光太郎が、カメラを向けるこちらにペコリと一礼してくれました。やっぱりこの人も応援したい!

 

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10R終了後の「第1便」部隊です。宿舎へは徒歩で帰りますが、選手たちはもちろん管理下に置かれているわけですから、バスに乗らなくても、こうして固まって、列をなして、監督さん付き添いのもと、帰るわけですね。見つけて慌ててシャッターを押したので、これはほんの一部。列の先頭は、今日は田中信一郎&太田和美の69期大阪コンビが歩いてました。お疲れ様でした!