BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――レディチャンが始まった!

 

 

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 見てくれ、この表情。1R、1マークで行き場をなくして5着に敗れた長嶋万記だ。

 長嶋の頭にはもちろん、勝つための戦略やウィニングロードが描かれていただろう。宇野弥生が攻めて、自分は間隙を突く、といったような。しかし、長嶋が突っ込んだ先には道はなかった。オープニングからの痛い敗戦。笑えるほうがどうかしている。

 だから、この長嶋の表情はとびきりカッコいいものと映った。悔しさをグッと噛みつぶし、しかし瞳にはそれを宿らせる。長嶋の女子王座初出場は07年。あれから約7年半、すべての長嶋の王座を見てきたし、5月にはSGのピットでも彼女を見た。07年の頃にはただただ初々しい若手だった長嶋万記が、いまや立派な銘柄級ナデシコになった。その神髄たる部分を、この表情があらわしていたように思う。顔に刻まれる年輪というものがたしかにある。それを長嶋万記は無意識に表現していたのだ。

 

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 正反対の表情は、もちろん宇野弥生である。1Rは先のオールスター(笹川賞)に出場していた選手が3人もいるという豪華なオープニングだったわけだが、その戦いを3コースまくり差しで制した。近況の宇野は、センターからのまくり差しが増えているのだが、これは長嶋とはまた違ったかたちの、成長の証しであろう。まくり一本ではなく、まくり差しもある。これが選手間にも浸透すれば、またまくりの威力が強くなる。今や「私らしく」には、このまくり差しも含まれていると考えるべきだろう。

 というわけで、レース後は笑顔! 会心のレースであったのは間違いなく、細川裕子とはハイテンションでレースを振り返る様子があった。渡辺千草ともハイタッチ! BOATBoyで「鬼の副編」と恐れられ、副編集長をしりぞいて一スタッフに戻ったと思ったら、ここ福井でベストセラーとなっている『福井の逆襲』という本を上梓した内池久貴が、「僕の弥生さん」と呼んで偏愛しているのが、宇野弥生である。帰京したら印税で奢ってもらうつもりだが、それはさておき、内池が心から愛しているのが、宇野の笑顔なのである。今節は何度、内池の代わりに目の当たりにすることになるだろうか。

 

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 2R、見事な勝利をおさめたのは福島陽子だ。展開をズバリ突いた航跡は、ベテランらしい巧みなもの。今節、最初の波乱は福島が巻き起こしたかたちだ。

 福島といえば、ナデシコ王国・岡山の精神的支柱とでもいうべき存在。岡山勢のレース後には、勝っても負けても岡山支部の選手が集まって、輪になって“岡山会議”が行なわれるのが常で、そんなときに後輩への指南役となるのがもちろん福島やテラッチということになる。いや、福島は穏やかに笑顔を向けている姿が印象的で、そうした空気感が後輩たちにとっては心強いのではないかと勝手に見ている。

 そんな福島が、この2R後には輪の中心にいた。福島にアドバイスを送っている感じではもちろんなく、福島の快勝を皆で喜んでいるような雰囲気があった。

 大挙8名参戦、優勝候補もズラリ、という岡山勢にあって、福島は決して派手な存在ではない。だが、これをきっかけに主役に駆けのぼっちゃうってのはどうでしょうか。明日からの福島陽子に注目!

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 さてさて、3Rから安定板装着でレースが行なわれております。向かい風が強く、水面が波立つ状況では致し方なし。2R発売中に選手班長を呼び出すアナウンスがピットに響き、何事かと思ったら、安定板装着を決定したということだったようだ。

 各選手、さっそく整備室で安定板を受け取り、モーターに装着。写真で選手の手にある大型のフォークみたいなやつ。これが安定板であります。これをギアケースの上あたり、ちょうど水面に接するあたりに装着するわけですね。モーターと水面の接地面積が大きくなるので、ボートも安定するという次第。これをつけるとモーターの気配も変わることが多いので、選手たちは非常に忙しそうにしていたのでありました。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)