鉄板フラグ
12R優勝戦
①水口由紀(滋賀)07
②谷川里江(愛知)16
③松本晶恵(群馬)14
④寺田千恵(岡山)13
⑤平山智加(香川)13
⑥小野生奈(福岡)22
『古都の美魔女』が、他を寄せ付けずに逃げきった。120m起こし、コンマ07おそらく全速、的確な初動……これでは、並み居る女王たちもなす術がない。あとはクルリンと旋回しただけで、節イチの回り足が他艇を置き去りにした。箒に乗っているような軽やかなターンだった。
A2レーサーにして41歳の水口が優勝すべきフラグは、すでに予選の段階で立っていたような気がする。予選2日目にドリーム組が12戦全敗、A2・B1レーサーが1Rから8連勝という前例のないような活躍を見せた。3日目には、40歳以上のレーサーが大活躍した。怪しい下克上の臭いと妖艶な熟女の匂いが、三国水面に満ち満ちていた。その象徴的存在が、美魔女という言葉が実にしっくりとくる水口だった。
ただひとり、この美魔女の前に立ちはだかる“小娘”がいた。凄まじい勢いでシリーズを突っ走る今井美亜。優勝は、今井か水口か。私もそうだが、多くのファンが4日目あたりからそう予想したことだろう。だが、5日目に悲劇が今井を襲う。わずか数センチのフライング。これが半艇身も出ている“非常識”なものなら同情の余地もないが、何度スリット写真を見てもハミ出しが判別できないほどのFだった。きっと1センチだと私は勝手に思っている。わずか1センチが、究極のタッチスタートと最悪の事態を冷酷に分断したのだ。やはり、これは悲劇としか言いようがない。この結果、水口の手に優勝戦の1号艇が渡された。優勝するときというのは、こういうものなのだ。
完全に優勝のフラグが立ったな。
私はそう確信して、今日を迎えた。そして、箒に乗った美魔女ターンを見た。前検から水口のパワーをSランクと評価し、迷わず◎を打った私にとっても満足のゆく優勝だった。舟券はともかく……。
ただ、シリーズが終わった今も、「1号艇・今井、2号艇・水口」という幻想のファイナルが、私の脳内に渦を巻いて離れないのである。最年少のチャキチャキ元気な小娘が逃げて、古都の美魔女が凄まじい差しハンドルを突っ込む。それでどっちが勝ったのか、私はどちらに本命を打ったのか……嗚呼、そんなA2同士の火花散る一騎打ちに、前夜の予想からとことん酔いしれたかったなぁ。
とにもかくにも、おめでとう水口。そして、お疲れさまでした、美亜ちゃん!!(photos/シギー中尾、text/畠山)