１Ｒの予想会を終えてピットに駆けつけると、意外やなんとも静かな空気だった。初日はけっこう慌ただしいものなのだが、整備室には選手の姿が皆無だったし、装着場も魚谷智之と齊藤仁が装着作業に没頭しているのみ。単に時間帯の問題？
もちろん、係留所は満艇状態。ボートがずらりと並んでいる。だが、選手の姿はそれほど見られず、エンジン音もそれほど大きく響いてはいなかった。１Ｒの出走時刻が迫っている時間だったので、いったん手を休めてレース観戦しようという選手が多かったのだろうか。
やがて、整備室に瓜生正義が入っていった。初日にドリーム戦に出走する場合、早い時間帯から本体を割って、点検やちょっとした調整をするのは、瓜生のルーティンというか、よく見かける光景である。前検では、エンジンを受け取った状態で試運転やタイム測定を行ない、そこで得た感覚をもとに初日に調整をする、というのが瓜生のスタイルで、本体を割るのもその一環。今日も本体調整に向かうか……と思ったら、ギアケースを外しているのだった。それほど大きなことをしなくてもＯＫ、と判断したのだろうか。
その様子を整備室の入口あたりで眺めていたら、後ろに寺田祥がいるのに気づいた。慌てて挨拶。寺田はクールに返す。というより、寺田はじっと考え込んでいる様子で、手にはペラがあり、軽くこすって磨きながら思索にふけっているのだった。どうやら、試運転からいったん戻って、その感触から調整の方向性を考え込んでいる様子。そういえば、前検では起こしの重さを口にする選手が多く、今日はまずそのあたりの感触を探りながら調整を行なっていくという選手が多いのかもしれない。その後も寺田は静かにペラを磨き続け、思考を深めていっているようであった。
１Ｒ、吉田拡郎が快勝。今節のオープニングを飾った。前回のＳＧの最終日最終Ｒを勝ったのはカクロー。まさに節をまたいでＳＧ２レース連続１着！ まあ、そんなことにたいした意味はないし、カクロー自身もそんなことは何も感じていないようだった。
それにしても、吉田の勢いはスゴい！ オーシャンのあとはすべて優出。１カ月経っても好調ぶりは変わらない。メンタル的にも非常に安定しているというか、とにかく強さが感じられるというか、レース後の表情も実に力強いものだった。いや～、今のカクロー、本当に強いなあ。ＳＧ連覇があってもまったく不思議がないと思うぞ。
２Ｒを勝ったのは桐生順平。若松はデビュー以来これが６走目。６節目、ではないですよ。まさしく若松の水面を走るのは６回目、なのだ。経験が少ないなかでも、見事なツケマイ勝ち。桐生らしいあざやかな勝利だった。
で、こんなときの桐生は必ず言うのである。
「たまたまです」
たまたまのツケマイじゃないでしょっ！ と振っても、桐生はいやいや、たまたまですを繰り返すのみ。決して大きなことは言わないのである。今日はピット取材のあとは予想会ブースに戻っており、ここは公開勝利者インタビューのブースと共同。そこにあらわれた桐生は、やっぱり「たまたま」を繰り返すのみなのであった。絶対たまたまじゃないと思うけどなあ。
まあ、たまたまでもいいから、今節は大活躍を期待します！（ＰＨＯＴＯ／中尾茂幸 黒須田 ＴＥＸＴ／黒須田）
やはりこの人の雰囲気はバツグン！
ＳＧ初出場！ いつかは王者のようになれ！
