BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――選手心理

 

 

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「ハラワタ」って何だと思います?

 9R終了後、エンジン吊りに向かう池田浩二が言っていたのだ。

「ハラワタが見えてた」

 うがっ、どこかで事件でも起こったのか!?

 よくよく聞いてみると、1周2マークの事象について話していたようだった。逃げて先頭を走っていた毒島誠がキャビったようなかたちになって、三角哲男に差されたシーンだ。そう、どうやらボートの底の部分を「ハラワタ」というみたいですね。艇がバウンドしてボートの底=ハラワタが見えた。なるほどなあ。選手間の俗語というやつだろうが、なんだか勉強になったぞ。

 

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 三角と毒島が艇を並べて迎えた2周1マーク。毒島は渾身のツケマイで三角を撃沈。一気にぶっちぎって、再逆転を決めた。その瞬間、ピットでは「うぉぉぉぉっ!」と歓声があがる。それはあまりにもカッコ良すぎるツケマイだった。

 ところが、公開勝利者インタビューのブースにあらわれた毒島は、まず泣き真似をした。そうなのだ。逆転したシーンよりも、逆転されたシーンのほうが毒島の心を占めていたのだ。再逆転したからよかったものの、あれは情けないターンだった、ということだろう。こっちがいくら「いや、めちゃカッコ良かった!」「めちゃ沸いた!」とあおっても、「差したら届かないから行っただけですよ」「でも2マークが」と決して自分をほめようとはしない。選手真理というのは、そういうものなのだろう。もちろん、実際のところは、あのターンは会心の一撃ではあったはず。そして、それが可能な足色だったことが、毒島に安堵をもたらしている。いずれにしても、毒島のメンタルは仕上がっている! 連覇が見えてきた、といっても差し支えないのではないだろうか。

 

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 毒島とは反対に、精彩を欠いているように見えるのは岡崎恭裕だ。足はいいと思う。だから、それほど深刻でもないと思う。だが、やはりどうしても元気がないように見える。8Rの1号艇で勝てなかったあとの岡崎は、落胆の色が強かったと僕には思えた。

 岡崎はボートを磨いていて、なぜか口には出走表がくわえられていた。特に意味はないんだろうけど、僕には「何か聞きに来ても、何もしゃべりたくありません」と言っているように見えた。まあ、穿った見方です。声をかければ、ちゃんと答えてくれただろう。だが、どうしたって、そんなふうに思えてしまう。少し心配なのだ。

 繰り返すが、足はいいと思う。だから、明日は今日の敗戦を取り戻す活躍を見せてほしい! それを足掛かりに、元気ハツラツの岡崎恭裕を見せてほしいぞ。

 

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 その8Rで、岡崎をまくったのが鎌田義である。チルト0・5度に跳ねて、豪快に握った。もちろん、狙いすました一撃であり、伸びの良さを生かした戦略だった。惜しくも中澤和志の差しが届き、「ヘタ打ったわ~」と3着にまで下がってしまったが、これだけのレースができたことは鎌田に充実感を与えたようで、「メドが立ったわ」と爽快に笑った。

 明日からは、枠番によって、取り付けを再考するそうだ。チルト0・5で足はいいが、スタート勘がやはりいつもと違うとか。握り込みの感触に普段とは違うものがあるそうだ。明日は1号艇。ならばチルトは下げてくるか。もちろんそれでも、足は好感触。ここでもきっちり戦略を練り上げて、必勝態勢で臨んでくるだろう。

 

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 さてさて、11Rを勝ったのは石渡鉄兵である。田村隆信が豪快に握り、魚谷智之がインからそれを受け止めた内側を、石渡は的確に差した。混戦の2マークをしっかり捌いての勝利。会心のレース運びだったことだろう。

 公開インタビューブースにあらわれた石渡は、開口一番「差さったわ~」。その言い方が、まるで他人事のような、あるいは見事な差しが決まったレースをモニターで観戦していたかのようなものだったので、ブースにいた人たちは大爆笑となった。

 その朴訥としたお人柄がたまらない!

 近況、SGではなかなか結果が出せず、悩みのなかにあった石渡だが、今節はそれを払拭できる足色。断固たる決意で臨んで、なんとか平和島賞金王への足掛かりを! 昨年は齊藤仁の賞金王出場におおいに楽しみを感じたものだが、次はこの人の決定戦出場を本気で見たいのだ。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)