BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――選手の気分

 

 

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 まずは白井英治。時間が過ぎて行っても途中帰郷の報が記者室に届かなかったので、まずは安心していたのだが、後半のピットに入って元気そうな様子を見て、さらに安堵したものだ。明日も水面に登場する! 今日の分を取り戻す走りを期待したい。

 元気とはいっても、陽気で朗らかというわけにはいかない。身体は大丈夫そうだというほどの意味であって、表情はどちらかというと険しさが目立った。あの落水事故のあとで、笑えるはずはなかろう。係留所でニードル調整をする際にも眉間にシワが寄っており、事故の精神的影響は少しはありそうだった。試運転を繰り返して、10R発売中に上がってきたあとも厳しい表情は崩れず。今日はひたすら事故の悔いと戦う一日となっているようである。

 もちろん、それは逆に白井の心に火をつけるものになるはずだ。優勝を充分に狙える足色で、成績も快調。そんななかの急停車、明日は巻き返すのみである。明日はきっと闘志燃える一日。白井の勝負駆けに注目だ。

 

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 後半は、ちょっと不機嫌そうな顔をよく見たな、という印象。10Rでインコースを活かせなかった湯川浩司が、悔しげな顔を浮かべるのは当然である。湯川は前半にも、深い深い思索のなかにいるかのような、見様によっては不機嫌にも見える表情で過ごしていたのだが、敗戦後はその風情がさらに深くなる。もうひとつ弾けられない足色&成績は、好漢湯川の表情を、やはり曇らせることになる。

 

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 8R1着の森高一真も、同様だった。こちらは勝ったのに、である。理由は、機力に納得できていないこと。勝利者インタビューから戻るや否や、整備室に飛び込んでいったのが、森高の心中をよくあらわしていた。森高が取り掛かった作業は本体整備。怖い顔つきでピストンを外したりしていた。選手の気分を大きく左右する、エンジンの仕上がり。そこに不満があるうちは、ただ1着を獲るだけでは、気分はそこまで高揚しない。

 

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 鎌田義にいたっては、露骨に不機嫌そうだった。こちらは5Rで1号艇3着。ポイントアップの最大のチャンスに、もくろみ通りの結果を出すことができなかった。鎌田とかおを合わせたのは9R発売中。プロペラ調整に励む合間に、ほんの少しだけ会話を交わした。しかし、昨日「メドが立った」と話していた時の雰囲気とは正反対。伸びは相変わらず悪くなさそうなのに、成績が伴わなかったこと、レースでの調整に満足がいかなかったことが、鎌田の心に影を落としている。それでもさすがカマギー、柔らかな対応ではあったが、それだけにむしろ、鎌田の心中は強く察せられた。明日の勝負駆け後は、笑って会いたい。

 

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 一方で、笑顔が浮かんだ選手ももちろん見かけている。9Rの井口佳典だ。機力不足に泣いて、初日2日間はゴンロクを並べ、今日の前半も4着。その苦悩の連鎖をストップさせる豪快なまくり差しで、レース後は目元に安堵の色が浮かんでいた。

 その井口に松井繁が歩み寄る。井口は松井の耳元でヘルメット越しに囁き、松井は「アハハハハハッ!」と大笑い。そして、「な? せやろ? せやろ?」と返した。うなずく井口。王者から何かアドバイスがあって、それが奏功したということだろうか。松井は我が意を得たりとばかりに微笑み、井口もヘルメットの奥で目を細めた。準優はすでに苦しいかもしれないが、前半の大敗を少しでも取り返す活躍を見せられるか。

 

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 10Rを勝利した長田頼宗も、嬉しそうに笑っていた。こちらは齊藤仁のアドバイスを受けたのだろう、仁ちゃんのもとに歩み寄って勝利の報告をしていた。仁ちゃんも笑顔を返し、かなり和やかな雰囲気。道中接戦の場面もあっただけに、喜びもひとしおだろう。

 この勝利が大きいのは、明日の勝負駆けにつながったこと。大敗なら終戦もありえただけに、その部分の安堵も長田にはあったはずだ。これを足掛かりに、明日の2着勝負に全力投球。足も上向いているだけに、侮れない存在となった。

 

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 さてさて、今節のピットでは「モーター架台トレイン」をよく見かける。通常、架台は両手に1台ずつ、都合2台をゴロゴロ転がして運ぶのが精一杯だが、若松の架台はタテに連結させられるような作りとなっており、若手2人で一気に何台も運ぶことが可能なのだ。今日は平山智加と桐生順平が10台ほどでトレインを作り、運んでいた。どうも篠崎仁志が伝授したもののようで、桐生曰く「これなら何十台でもいっぺんに運べます」とのこと。他場では見ないシーンなだけに、たまたま通りかかった山崎智也が「おぉーっ!」と目を丸くしていたほどだ。新兵仕事もいろいろ工夫しながら楽しくこなす若手たち、なのである。(PHOTO/池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)