BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

優勝戦 私的回顧

 

 

## ついに

**

 

①谷村一哉(山口)07

②白井英治(山口)00!!!!!!

③寺田 祥(山口)07

④辻 栄蔵(広島)18

⑤池田浩二(愛知)13

⑥三角哲男(東京)13

 

 ついに、ついについについについについについについについについについについについについに「無冠の帝王」を返上した。ホワイトシャークがSGを制した。初優出から13年、14度目の正直だ。白井本人にとって、この13年間がどれほど長い歳月だったか。それはわからない。が、多くのファンもまたこの瞬間を待ち焦がれていたことを、今日、私ははっきりと全身で感じた。ピットアウトから、スタンドの声はほとんど白井一色だった。

「エージー! まくれーー!!」

「エージー、今日こそだぞーーー!!」

 

f:id:boatrace-g-report:20171214104821j:plain

 まあ、レース直前に声援が飛ぶのはいつものことだ。驚いたのは、レース直後だ。白井がゴールを通過した瞬間、いや、最終ターンマークを回ったあたりから、スタンドが熱狂した。半分以上の観衆が片手、または両手を挙げて、「エージッ!!」やら「やったーー!!」やら叫んでいた。間違いなく、舟券を外した人たちも拳を突き上げていた。それくらいの圧倒的な比率だった。そう、みんな待っていたのだ。白井のファンもそうでない人も、長きに渡って「SGにもっとも近い男」「無冠の帝王」と呼ばれていたことを知っている。白井が優出して敗れるたびに、それを知る人々は増えていった。24歳でSG初優出を果たした天才レーサーは、いつしか37歳になっていた。

 今だから書けることだが「これだけ獲れないんじゃ、もう二度と獲れないよ、白井は」という声(オヤジもいたし若者もいた)を何度も聞いた。「そういう星の元に生まれたんだよ、実力だけじゃSGは獲れないんだって」そんな声も聞いた。

 そんなネガティブなことを言う人たちも、実は心のどこかでこの瞬間を待っていた。私は、その“事実”をスタンドではっきり実感した。それは、勝つまでわからないことなのだ。スタンドは、まるでロックショーの会場だった。誰もが、誰もが祝福していた。もちろん、私も!

 

f:id:boatrace-g-report:20171214104830j:plain

 レースの話をしよう。

「僕らしい勝ち方」

 白井はレース後に何度も言った。スタートタイミングは、コンマ00!! 舳先がスリットラインにめり込んでいた。過去13年のウップンを晴らす劇的なタッチスタートだ。が、あと10cmでもズレていれば、それは地獄のバッドエンドだった。観衆は歓喜し祝福する代わりに、「これでもうアイツは本当にSGを獲れない」と呟いただろう。「そういう星の元に生まれたんだ、アイツは」と吐き捨てただろう。今日のスタートは白井の人生を左右する、戦慄すべきタッチSだった。白井は、勝った。今までのあれやこれやを、すべて打破した。白井は、こういう星の元に生まれていたのだ。「英治はこれからいくらでもSGを獲れる」(今村豊師匠)男になったのだ。単にカッコ良かったというだけでなく、良くも悪くも人生のギリギリの境界線まで踏み込んだあたりが、白井らしい勝ち方だったと思う。本当の本当に、入ってて良かった!!

 

f:id:boatrace-g-report:20171214104842j:plain

 嗚呼、まだまだ書きたいことがあるのだが、頭の中がまとまらない。白井は私の将棋の師匠である。その契りを交わしてから、もう6年ほどになるだろうか。「勝ったほうが師匠、負けたほうが弟子になる」という真剣勝負で、はるかに年上の私が(今村豊と同い年です)負けた。それから英治師匠と呼んでいる。どんなに浅い師弟関係だろうが、師匠が大事を成して喜ばない弟子はいない。今日、スタンドでいちばん熱狂したのは、私だったかもしれない。諸手を挙げて、叫んで、ほんの少しだけ涙が出た。表彰式でも泣いた。私もこの瞬間を、切に切に待っていた。待ち続けていた。

 

f:id:boatrace-g-report:20171214104853j:plain

 おめでとう、白井英治師匠様。これからはピットやモーター抽選会場などで、もっと気軽に声を掛けさせていただきます。この不肖の弟子は、実は今までなんとなく声を掛けそびれていたことを告白します。やっぱりなんか、忍びなかったのです。

※今日はここまで、嬉しい酒を飲ませてください。白井師匠や今日のレースについて(寺ショーの3カドなど!)は、また必ず番外編的に書かせてもらいます。約束します。今日のところは、すいませんっ!!(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/畠山)

f:id:boatrace-g-report:20171214104908j:plain