BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――若武者たちの思い

 

 

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 SG常連クラスにヤングダービーについて話を聞くと、ほとんどが口をそろえて「記念のひとつと捉えている」と語っていたものだ。新鋭王座にこだわりをもっていた峰竜太もそう。どうしても獲りたいタイトルだった新鋭王座を獲ることはできず、しかしヤングダービーができたことでふたたび“期間限定の若手タイトル”を獲るチャンスができた。ところが峰はそうは受け止めてはおらず、「ヤングダービーで主力として扱われるより、SGで挑戦者として戦いたい」と言った。すでに視線ははるか上を向いているのだ。

 ところが、昨日行なわれた前夜祭などを経て、峰の心境は変わったらしい。

「僕らドリーム組が頑張らなければ、売上にも響く」

 どんな立場で参戦しているかを改めて自覚し、しかも業界全体のこのレースに対する期待は大きい。それをつくづく実感したようなのだ。彼らはいずれ、SGでも同様の立場で登場することになるだろう。そう、これを未来のSGと捉えれば、おのずと気持ちも入る。上の人間たちがそうした感覚を抱いたのなら、このヤングダービーは想像以上に熱くなる! そう、彼らの感覚はともかくとして、これはプレミアムなGⅠなのだ。

 

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 もっとも、桐生順平はまた違った思いを持っている。言うまでもなく、戸田は地元。誰もが今節の絶対的な主役と桐生を捉えている。誰が考えたって、今節もっとも活躍が義務付けられているのは桐生順平。もちろん、桐生だってそんなことはわかっている。

 それをふまえたうえで、桐生はヤングダービーを「地元のGⅠ」と位置付けている。戸田でGⅠを優勝することを目標のひとつとしている桐生にとってはつまり、大チャンスがめぐってきているわけなのだ。まして、戸田は幅員が日本一狭く(それもかなり)、インが利きにくい難水面である。好き嫌い、得手不得手も分かれるだろう。SGでだって、地元選手の利を感じることは多々。そんな水面をもっとも多く走っているのが桐生なのだ。

 ようするに、ヤングダービーをどう捉えているかはともかくとして、桐生にとっては負けられない戦い、なのだ。だからだろう、同世代ばかりという和やかな雰囲気のなかで、桐生は一味違って見えた。リラックスはしている様子だが、その奥に特別な闘志がしっかりと宿っているというか。肩に力は入っていないけれども、心に力は入っている。そんなふうに僕には見えた。

 

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 では、篠崎元志はどうだろうか。昨年のMB記念優勝戦Fで、賞金王以外のSGを棒に振ることとなった。その年季は明けて、来月のダービーからSGに戻ってくるが、その前にこのヤングダービーで、特別競走への復帰を果たすこととなった。しかもドリーム1号艇。日の当たる場所にふたたび戻った感慨や、そこに懸ける強い思いがあるのではないか。そう想像するのが普通だろう。

 もちろんいろいろな思いはあるようだ。ドリーム会見に向かうエレベーターで一緒になったので、「お久しぶりっす」と笑いかけたら、「カハハハハ」と元志も笑った。自分がどう見られているかも含めて、元志は状況をよーくわかっている。ただし、やはり勝負はSG。本当に勝負を懸ける場所はどこかといえば、やはりダービーなのである。あのつらすぎるフライングを切ったのはSGなのだから、本当のリベンジはSGでしか果たせないのだ。ましてF持ちの身、ダービーを前にここでがんじがらめになるわけにはいかない。元志のなかでは、ある意味複雑な思いが渦巻いているのである。

 でも「そうはいっても、負けたら悔しいんでね……。水面に行ったら、どうなるかわからない。そこの葛藤、ですよねえ」とも言っている。そう、レースとなれば本能むき出しの野獣レーサーとなるのが元志のカッコいいところ。さまざまな思いのなかで、元志がどう戦うかは今節のひとつの焦点となるだろう。

 

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 というわけで、まずは銘柄級に目が向くわけだが、同時に「まだそこまで名前が売れているわけではないけれども、魅力たっぷりの原石」を見つけるのが、やはりヤングダービーの醍醐味のひとつであろう。舟券妙味的にも、ね。

 やはり西川昌希は気になりますよね。好モーターを引き、早くも「西川が出ている」と話題になっているのだ。なにしろ、この人のレースはまさに野獣系。スタート決めてまくるし、外枠なら果敢にコースを獲りに行く。いつだったか、2回乗りの前半でその期2本目のFを切り、後半レースでは6号艇から前付けしてインを奪い、ゼロ台のスタートを決めて逃げ切ったことがあった。前付けの時点で唖然としたものだが、強烈なスタートで呆然となり、逃げ切ってひっくり返った。F2とか事故率とか、この男はまるで気にしていないのだ。

 そんな西川が、エンジン出ているのです! しかも明日の2R6号艇は「動きます」だそうだ。いや~、明日は祝日、朝からヤングダービーを見よう! 勝ち負けはともかく、西川がきっと興奮を我々に与えてくれる。

 

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 あと、女子選手にも注目! 今節、特に初日2日目あたりは女子が舟券妙味になるのでは、と推測している。SGでもそうでしょ? 予選序盤は、好モーターを引いた女子選手が穴をあけているではないか。後半ではエンジンで追いつかれることもあってか、結局予選を突破できないことが多いけど。しかし、特に12名出場で予選突破0だったオールスターの印象もあって、今節はあんまり人気にならないような気がするんだよなあ。そして、SGよりは予選後半でも健闘すると思うんだよなあ。つまり、ずっと穴を出してくれるような気がするんだよなあ。あくまで「気がする」ですが。

 特に、まだSGには顔を出していない松本晶恵や遠藤エミが面白い存在だと思う。特に松本は、メンバーのなかでは先輩のほうで、同期も何人かいるから、気後れすることもないはず。機力の手応えは上々のようだから、ちょっと狙ってみたくなる。

 たしかにSG常連の銘柄たちは強い! だが、そうでない選手と決定的な差があるとも思えない。今節は、ビッグネームの強さと、その間隙を突く選手が出してくれる穴舟券を、存分に楽しみましょう!(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)