BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――皆ゆったりと

 

 

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 ぜーんぜん、優勝戦メンバーがいない。いつもどおり1Rのスタート展示後にピットに入ったのだが、ベスト6はまったく見当たらない。というより、今朝はさすがにゆっくりした空気が流れるピットで、選手の姿は少なめだった。ピット全体の人口密度は高くない。

 整備室を覗き込んで、やっと見つけた。渡邊雄一郎だ。ゲージ擦りをしている秦英悟と鎌倉涼の隣にすわって、大阪トークを繰り広げていた。渡邊自身は特に何もしておらず、のんびり後輩との会話を楽しんでいる様子。時折、3人の爆笑が装着場のほうにも聞こえてきたりした。

 ただし、その後、いちばん最初に作業らしい作業を始めたのも渡邊だった。2R発売中にペラ叩きを始めたのだ。ペラ室を覗いて、池上カメラマンが興奮気味に「初めて見た!」と声をあげる。見ると、宇野弥生と話し込んでいる姿だった。今節の最ベテランである90期コンビ! ともに16歳でデビューし、ヤングダービー創設にそろって参戦した。だが、たしかに今節、二人の絡みは見なかったんだよなあ。最終日に目撃できたのは、実に貴重であった。

 

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 ペラ室には、桐生順平が何度か出入りしている。といっても、ペラ調整に没頭しているといった雰囲気はなく、1回の滞在時間もそれほど長くないようだった。朝のスタート特訓では、スロー発進。それを振ると「どこからでも行けるように、ですね」。ただ、前付けを宣言している土屋智則に抵抗するつもりがなければ、スローの練習をする必要はない。桐生は控えめに言ったが、その言葉の裏には決意が込められている。「ここまできたんで、リラックスしていきます」とも言っていたが、実際は優勝戦を前にすればとことん気合を高めるはずだ。桐生は胸の奥の炎を隠すように、コメントは控えめにする。僕はそう思っている。

 

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 地元勢では、黒井達矢が早々にプロペラゲージを片付けていた。全部ではないかもしれないが、控室に運び込んでる姿があったので、あとは本当に微調整だけか、どのゲージに合わせるかを決め打ちしているということだろう。

 黒井は、BOATBoy10月号でヤングダービーの公約を振ったとき、「優出します!」と言い切った。黒井はどこぞの政治家とは違いまっせ。公約、見事に果たしました! 黒井は「よかったです。表紙にまでしてもらったので、果たせてよかった」と笑った。

 だが、「本番はこれからですから」とも黒井は言った。ここがゴールではないことをしっかりと認識しているのだ。コースがどこになろうとも、戸田の水面は知り尽くしている。戸田生まれの戸田育ち、まさに純地元のこのプールで、黒井は大勝負をかける心づもりだ。

 

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 さてさて、その3人以外を見かけるのは、もっぱらエンジン吊りだった。いや、正確ではないな。3R発売中にいったんピットを出て、この原稿を書いているわけだが、それまでに長尾章平は一度も見かけなかったのだ。エンジン吊りにもいなかったもんなあ。単に見落としてただけ? 朝のスタート特訓には出ていたから、その後は控室にこもり切りということだろうか。

 

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 土屋智則は1Rのエンジン吊りに登場。てきぱきと作業を終えると、整備室内調整所でペラを叩いていた西山貴浩のそばに座り込んだ。にこにこと会話を交わす土屋。2Rエンジン吊りでは、山口達也に声をかけたり、池永太と話し込んだり、ようするに97期の同期生との絡みが目立っていた。実は前身の@Nifty時代、一度だけやまと学校の卒業式をレポートしたことがあるが、それが97期の卒業式だった。時期はちょうど今頃ですね。あのとき、多くの訓練生が「土屋くんに負けないように」とコメントしていたのを思い出す。そういう存在だったのだ。あれから9年が経った。そうか、彼らもキャリア10年目に突入するんだな。そんな感慨とともに、土屋の笑顔を眺めた次第。ともかく、リラックスして過ごせてはいるようである。

 

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 峰竜太は結局、2Rエンジン吊りしか姿を確認できなかった。それも、めちゃくちゃ肩の力が抜けた、あまり見たことのない峰竜太だった。なんか、家で休んでいてちょっと散歩に出ました、といった雰囲気すらあったぞ。その後は、桑原悠のモーター返納にも立ち会ったりと、きびきび動いてはいたが、その間も緊張感はほとんどなし。スイッチはオフのままのようだった。スイッチオンになるのは優出インタビューの後あたりか? 優勝戦直前のピットでは、そのギャップを楽しみたいと思います。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)