BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――山口の快癒を祈る!

 

 

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 1R締切5分前くらいにピットに入ると、装着場には女子選手しかいなかった。思わず「女子戦?」と錯覚しそうになる。谷川里江はスタート特訓のスリット写真をじっと見入っており、頭のなかでは勘との修正をしていただろうか。真剣な目つきだった。平高奈菜、大瀧明日香、永井聖美らは装着作業を入念に。水口由紀は係留所のほうへと降りていき、鎌倉涼は装着場の真ん中あたりでインタビューを受けていた。

 

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「おはようございまーす」

 明るい声が背中からかかる。日高逸子だ。グレートマザーから朝のご挨拶をいただくとはなんとも恐縮。日高も装着作業に取り掛かっており、いや~、やっぱりここは女子王座かなんかのピットですかね(笑)。ま、次の瞬間には白井英治があらわれたので、レディチャン感は一気にぶっ飛びましたけど。減点があったり1号艇をモノにできなかったりと不本意な成績ではありながらも、表情は決して暗くなかった。

 

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 1Rが終わり、エンジン吊りが始まればもちろん、男子選手もぞろぞろと姿をあらわす。やっぱりここはチャレカのピット。そんななかで、小野生奈が真剣な目つきで、魚谷香織に問いかける場面があった。アドバイスを求めたようだ。小野のボートのかたわらで話し込む魚谷と小野。小野はまっすぐに魚谷を見据え、魚谷の言葉ひとつひとつにうなずいていた。魚谷は時に身振り手振りを交えて、言葉をかける。そんな場面がかなり長い時間続いていた。他の1R出走選手は控室へと消え、エンジン吊りの選手たちもそれぞれの動きに移っても、まだ会話をやめようとしない二人。魚谷から投げられた言葉のひとつひとつが、小野の養分になっていくんだろうなと思った。

 

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 そういえば、鎌倉涼が太田和美のもとに駆け寄るシーンがあった。こちらは会話の時間自体は短かった。鎌倉も、にこにこと太田に声をかけている。太田が「回さんでええ」と言っているのが聞こえたので、鎌倉が調整の方向性に関するアドバイスを求め、太田が優しく教えを授けたものと思われる。やっぱり今節というのは、女子選手にとっては学ぶことが多いんじゃないかなあ。こうしてトップクラスから直接教えてもらえることがたくさんあるのだ。全レース勝負駆けという厳しい場だから、仕事への姿勢に感じるものもあるはずである。鎌倉も、にこりと笑いかけつつ頭を下げて、自分の作業へと向かったのだった。太田のアドバイスが効くといいですね。

 

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 そうそう、男女の絡みでは菊地孝平と大瀧明日香を見かけました。東海地区同士ということになるわけだが、二人をデビューの頃から見ている者としては「同県の同世代コンビ」ととっさに思ってしまうわけです。大瀧は現在は愛知支部だが、もともとは静岡支部の83期生ですからね。同じ時期に新人時代を過ごし、一緒に練習したこともあったんじゃないかな。ある意味、同志である。

 

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 とまあ、女子選手絡みでは明るい話を書けるのだが、チャレンジカップに目を向けようとするとどうしても沈鬱になってしまう。2R、山口剛が転覆。これが激しい事故になってしまった。

 

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 山口を乗せたレスキューはすぐにピットに戻り、山口は担架で救護室に運ばれている。田中信一郎がすぐにレスキューに駆けつけて、担架の前方を受け持つ。田村隆信も加わった。数人がかりで運ばれる山口は、担架の上であおむけに寝たまま、まったく動きがなかった。

 

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 次々と選手たちが救護室に向かう。同じレースを走っていた辻栄蔵は、エンジン吊りを仲間に任せて、速攻で駆けつけている。後輩の負傷に不安げな表情を隠せない。同地区でもある森高一真も様子をうかがいに救護室へ。その後も多くの選手たちが山口の様子を心配げに覗き込んでいた。同期の三浦永理の顔は泣きそうな表情にも見えたほどだ。

 

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 転覆させてしまった鎌田義の表情は、痛々しいものだった。ケガをさせてしまったことは、いつ逆の立場になってもおかしくないだけに、心を傷つける。妨害失格となった鎌田はこれで賞典除外、グランプリへの道は最悪なかたちで閉ざされている。しかし、鎌田の頭にそのことはまるでなかったようだった。ただただ己を責めながら山口を気遣い、救護室で見守り続けた。

 

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 やがて救急車が到着して、山口は病院へ搬送されている。残念ながら負傷帰郷となってしまい、山口もまた今年のグランプリ出場がなくなった。現時点でどの部分の負傷かは情報がないが、山口の様子を見るとやはり心配だ。山口自身、無念の思いも強いだろう。とにかく、一日も一刻も早い快癒を祈りたい。シリーズ戦ということになってしまうが、平和島で元気な姿を見せてくれ!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)