BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット@グランプリ――やっぱり最高峰!

 

 

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 グランプリ初出場は3人。彼らは今日、栄えあるグランプリジャンパーに袖を通したわけだ。ちょっとだけマイナーチェンジしたグランプリジャンパーだが、基本のデザインは変わらない。これを着られるのは、最高峰の舞台に立った者のみ。茅原悠紀は「僕はけっこう破いちゃうんですよ」とのことで今日は普通のSGジャンパーで作業をしていたが、吉田拡郎、桐生順平は真新しいジャンパーをちょっと誇らしげに着用していた。

 よく似合ってる! そう桐生に話しかけたら、桐生はニッコリと笑う。「ここを目標にしていたわけですからね!」。誰もが遠くない将来にここに来るとは思っていただろうが、改めてその姿を見れば、ニュースター誕生の感慨が胸に浮かぶというもの。そして桐生自身、そのジャンパーを身に着けたことでひとつの目標に到達したことを、強く思ったに違いない。

 

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 そんななかで、おぉっ、その懐かしい旧式“賞金王ジャンパー”は! これがまたなんとも感慨深く、また逆に新鮮であった。今村豊が着用していたそれは、まだグランプリという名称が用いられることを想像もしていなかった頃に、やはり特別な12名だけに着用が許された“賞金王”ジャンパーである。

 その着用の意味を、今村に聞きに行こうとして、足が止まった。ここで聞くのは野暮というものだろう。勝手にその意味を受け取ってしまえばいいのではないか、と思ったのだ。もちろん、その意味とは「グランプリと呼ばれるようになる以前から、この最高峰の舞台を踏んできた者のプライド」だ。グランプリ&SGジャンパーが現デザインに移行したのは2010年春。だから、その年にベスト12に入った今村は、新しいグランプリジャンパーを当然所有している(もちろん今日はおニューを手にしたはずだ)。しかし、今村はあえてこのジャンパーを平和島へと持参し、今日着用したのだ。だから僕は勝手に、「システムが変わろうと、ここは変わらぬ最高峰の舞台」であることを表明し、第1回から出場してきたことへの誇りをそこに込めたのだ、と判断することにした。もちろん、機会があれば節中に話を聞いてみるつもりだが、今日はそういうことにしておこう。新たなるグランプリ=賞金王の、記念すべきファーストデイだからこそ。

 

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 それにしても、田村隆信はやっぱり最高だ。前検日から、僕のテンションをひたすら上げてくれる。まず、早々と本体を割った。タイム測定&スタート練習後だ。悪いところはないが、良さも感じないという手応えを得て、いきなり本体整備を始めたのだ。「部品交換を予定しています」。詳細は明かさなかったが、すでに構想はできている様子。そのうえで、注目のコース獲りはこうだ。

「いろいろ希望はあります」

 やはり具体的には明かしていないが、何かしますよ、と言っているのに等しい。すでに丸岡正典も仲口博崇も「入れる気はない」と表明しているし、井口佳典は「インしか考えていない。外は関係ない」と己を貫く覚悟を決めている。それを田村自身、わかっているだろう。そんななかでも、何かをしようとする。それが田村隆信のプロフェッショナルなのだ。

 さらに。記憶に新しいチャレンジカップでのフライング。F持ちでのグランプリ参戦となってしまっている。そこを聞かれて、田村は言った。

「今節はスタートは入れるだけ、ですね」

 やはり慎重にならざるをえないのか……と思ったら、田村はこう付け加えた。

「05でも入っていればいいです」

 フライングは絶対にしないが、スタートは行く! この男の勝負師魂は、やはり素晴らしい。そして、それがもっとも光り輝くのが、やはり最高峰の舞台なのだ。

 

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 トライアル2nd組は、レースはまだ3日先というなかで、今日という日をどのように動くのか、と注目していたのだが、もうそれぞれが戦闘モードに突入していて、システムが変わろうとも変わることのないグランプリの舞台、と実感させられた次第である。

 菊地孝平がすっかり表情を凛々しくしていたのにも感じ入ったし、吉田拡郎も早くもオーシャンカップで見せていたような顔つきになっていて、気合を感じずにはいられなかった。

 

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 そして、松井繁はピット内を走っていた! 試運転の後、ペラを必死で叩き、また係留所へと駆けていく姿は、とてもレースを3日後に控えている選手とは思えなかった。すぐにでもレースに出なくてはいけない、そんな雰囲気だったのだ。つまり、王者も完全に戦闘モード!

 トライアル2ステージ制になり、実は1stから出場する選手のほうが有利ではないか、という声が戦前によく聞かれた。そう主張する人の声を聞くと、そこにはたしかに説得力があった。しかし、王者らの姿を見ると、「本当か!?」と思ってしまった。うーん、やっぱり何が起こるかわからない! ただわかっているのは、グランプリ戦士の闘士が、明日から6日間、平和島に素晴らしいドラマを生み出すであろうということだ。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)