浩二のお告げ
さ、さすが「スロー帝国・住之江」!! 11Ｒまで１着の艇番は３１１３２３２１２３１……握り屋が多い女子レーサーをもってしても、ダッシュから突き抜けることができなかった。「まくり」は５Ｒの谷川里江、６Ｒの香川素子、７Ｒの細川裕子と３連発で決まったものの、もちろん２、３コース。11Ｒまでの４～６号艇のアタマ舟券全660通りは、すべて紙屑になったのである。このまま最終ドリームも内３艇のアタマで決まりか、という勢いだったのだが……！
そのドリーム戦、最後の最後でダッシュ勢が風穴を開けた。４カドの谷川が、５Ｒに続いて怒涛のスタート攻勢を仕掛けたのだ。さすが、ここ一番で頼りになるのは、やっぱ百戦錬磨の姐御だなぁ。で、同じ愛知支部の大瀧明日香が、その大先輩まくりをぴったりマークしている。極撰の5-4を買っていた私の心もそぞろときめいた。5-4-1なら320倍だ。
話は逸れるが、今朝がた、池田浩二が私に水泳のテクニックを伝授してくれるという不思議な夢を見た。池田は足を交差させてバサロ泳法のようにﾊﾞﾀﾊﾞﾀとキックし、「こう、こうやるんだよ。そうすれば上体も自然に動くんだ」と言った。ほとんど泳げない私は、なるほどそうなのか、と納得したところで目を覚ました。今まで、池田が夢に出たことは一度もない。朝方の夢は正夢だと言うし。これは、何のお告げなのか？ 真剣に考えた。黒須田にも相談した。
「水泳だから、魚。魚谷香織じゃない？」
なるほど、魚谷を買おう。
「同期で一字違いの池田浩美がいたら絶対に買いだけどね。残念ながら、ケガで出てないし」
なるほど、じゃあ“池田浩”の代わりに繰り上がりで参戦した矢野真梨菜を買ってみよう。それから、もちろん池田紫乃。それからそれから愛知支部も絶対に舟券に絡めよう。と、２Ｒの宇野弥生から手当たり次第に“お告げ（っぽい）舟券”を買い続けた。そして、ドリーム戦も愛知支部の明日香－谷川を極撰の本線にし、そのまま買った。明日香を前検横綱に指名したため、裏の4-5は買わなかった。
１マーク……明日香のマーク差しは、惜しくも谷川に届かなかった。④谷川－⑤明日香の隊形が徐々に開いてゆくのを見ながら、「あ～あ、池田のお告げはこの愛知のセット舟券だったんだなぁ。ダッシュ勢が勝ったたったひとつのレース、獲りたかったなぁ。裏も買っときゃよかったなぁ」なんてぼんやり思った瞬間、私はふとあることを思い出した。
池田浩二のキャッチフレーズが『ブルーインパルス』だったことを。
奈美の誤算
池田のお告げ＝オカルト舟券とは別に、昨日の夜から真面目に考えたことがあった。「初日はＡ１レーサーなど名前の売れた選手は買わず、まだ全国区に知れ渡っていない選手を買おう」。これはヤングダービーでも採用した作戦だが、「この選手、誰だ？」と思われている内が狙い時なのだ。
たとえば、塩崎桐加（ひさか）。最近、実力が赤丸急上昇中の桐加ちゃんは、今日も６コースからなかなかに非凡なスピード旋回で３着に喰い込んだ。２連単が15倍で、３連単は約100倍。もしもさらに展開がハマッて１、２着なんてことになったら、あっという間に300～500倍級の大穴になる。今節（特に前半）は、こういう選手を積極的に狙おう、と心に決めたわけだ。
一方、同じ若手でも「竹井奈美や今井美亜、遠藤エミらすでに今年のＧＩで名の売れた選手はあえて買わない」とも決めた。人気先行になりがちだからだ。で、今日はその方針を守ったのだが、それははっきり失敗だった。たとえば、４Ｒ。１着③竹井、２着④今井で３連単100倍を超えてしまった（３着はドリーム１号艇の高橋淳美）。昨晩、黒須田と酒を飲みながら「このレースの3-4は売れるでしょうね」「売れる売れるーー２連単３桁かもな」なんて話していたら、あっさり万太郎である。
11Ｒもちょっと驚いた。大人気の長嶋万記が逃げきり、⑤竹井と⑥樋口由加里がスピード溢れる旋回で、あっさり1-5-6が出来上がった。２連単が10倍で、３連単は43倍。いい配当なのである。私の脳内オッズでは30倍弱だった。
グランプリの茅原は別格としても、最近の若手レーサーのスピードは男女ともにグッとアップした。オール女子戦で竹井の５コースなら、パワー不問で十分に２着は取りきれる。だかしかし、そんなことは全国の誰もが知っているから、配当が安いと極め付けていたわけだ。
私がハタと気付いたのは、やはり今日の全レースが終わってからだった。このシリーズは、単なるオール女子戦ではないのだ。今日だけで11億円!!を売り上げたこの“一般戦”は、最後に餅代を稼ぎたい全国のドロドロ舟券オヤジetcが五万と参戦しているのだ。
「タケイナミ? 誰だそりゃ?? だったら芳美ちゃんだろ！」なオヤジたちが、ガンガン舟券を買うのだ。そう、一般戦でありながら、実はグランプリの延長戦なのだな。
今晩、私はまた作戦を組み立てなおす。明日、本当に美味しい選手は誰なのか。それをしっかり見極め、枠番やパワーと照らし合わせて好配当を召し取るつもりだ。今日１・２着の竹井奈美は、明日から売れるだろうなぁ……涙。（photos/シギー中尾、text/畠山）
