BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

準優ダイジェスト

 

初戴冠の予感

 

10R

①桐生順平(埼玉)11

②安達裕樹(三重)19

③平尾崇典(岡山)11

④吉村正明(山口)07

⑤守田俊介(滋賀)09

⑥前田将太(福岡)11

 

 

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 昨日に続いて、桐生順平がキッチリ逃げきった。スタートも上々、1マークまでに伸びていく気配も上々で、まずは盤石の横綱相撲と言っていいだろう。最近の桐生は大舞台の1号艇で凹んだり、サイドが掛からず流れたり、スリットがバラけて展開に泣かされたりなどなど取りこぼしも多いのだが、2戦連続でインから押し切ったのはデカい。足的にも全体的に上位の下レベルはあり、彼のターン力をもってすれば充分な相棒と言えるだろう。後のレースの結果も踏まえて、SG初戴冠にグッと近づいたとお伝えしておく。

 

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 2着争いは二転三転の大乱戦となったが、守田俊介がなんとか粘り込んだ。1マークで俊敏な割り差しのハンドルを入れたときは「1-5確定」というムードだったが、そこは5年ぶりの優出が懸かった1戦。1周2マークでバランスを崩したり、2周2マークのツケマイが流れたり、ファンをハラハラさせる道中ではあった。それでも3周1マーク、一度は先着を許した前田将太に強烈なツケマイを浴びせて、再逆転の2番手確保。そのまま粘りきって、嬉しい4度目のSG優出をもぎ取った。

 

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 足は全部の足がやや強めの上位級。特筆すべき点はないものの、俊介は「乗り心地」を何よりも重視するのでソコさえフィットしていれば明日も同じレベルのレースはできる。頭まで突き抜けるには、スタート全速でキワまで踏み込むか、絶好の展開が必要だとは思うのだが……。

 次々と銘柄級が脱落し、ドリーム戦士がすべて消えた明日のファイナル。この流れはSG初Vレーサーの誕生を予感させるのだが、その条件を満たすのは桐生か俊介か、このふたりだけだ。

 

学べ、昌希!

 

11R

①篠崎元志(福岡)16

②西川昌希(三重)20

③松井 繁(大阪)15

④中澤和志(埼玉)21

⑤平本真之(愛知)19

⑥石野貴之(大阪)18

 

 

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 松井繁に、真の王者の姿を見た。トップスタートから怒涛の絞りまくり。まくり差しもある隊形だったが、迷うことなくインの篠崎元志まで叩き潰しに行った。レース後、松井は「2着(明日の外枠)では優勝できない足。だから1着を獲りに行った」と語ったという。これぞ王者。単に優出を目指すのではなく、明日の優勝だけを考えていた。「今日1着じゃなければ、2着でも大敗でも同じ」という強い気持ちで行き足~伸びを付け、一撃勝負のギャンブルに出たのだ。

 

 

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 結果的に、このギャンブルは失敗に終わった。気の強さで鳴らすインの元志が、この松井の強攻を跳ね飛ばした。不良航法こそ取られたが、この意地っ張りなブロックも天晴れだったと私は思う。ここは準優だからして、「首を引っ込めて松井にまくらせ、小回りで残して2着狙い」という戦術も考えられる場面だ。が、元志はそんな素振りを微塵も見せなかった。元志もガチンコで1着だけを獲りに行った。おそらくは勝手に身体が反応したのだろうが、こうした気の強さがSGレーサーには不可欠なのである。王者と若武者の意地がぶつかり合い、ド派手に弾け散った。結果だけを見れば何の戦果もない刺し違いではある。だが、私はこのふたりの大競りに、懐かしい競艇の匂いと崇高なものを感じた。ターンはどんどん進化しても、強いレーサーの気骨は変わらない。いいものを見せてもらった。

 

 

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 で、この松井の締めまくりに連動し、ズッポリと突き抜けたのが中澤和志だ。まさに展開一本の勝利ではあったが、こういう運が混戦シリーズではもっとも怖くもある。エンジンは前節で山室展弘が節イチ級に仕上げた56号機。今日のレースはパワーと無縁だったものの、底力は桐生や毒島のそれをはるかに上回っている。ニュージェネレーションターン(NGT)という流行言葉に浮かれて内2艇ばかり見ていたら、どんでもないしっぺ返しを喰らうかも??

 

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 2着は石野貴之。アウトからこれまた大競りを巧みに突いて進出したものだが、この伸び足は絶対に軽視してはならない。今日の松井が必死に伸びを付けたのとは違って、20号機はシリーズ前から「伸びトップ級」と謳われた。その足が、今日はさらにレベルアップして見えた。最近、SGでは石野=グリーンというイメージが強いのだが、明日もまた緑のカポック。松井がいないから前付けもあるし、伸びをさらに特化して大外から一撃勝負もありえる。枠的にもパワー的にも、「なんでもできる」という強みが石野にはある。

 

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 そして……惜しくも3着に敗れたのが西川昌希だ。いやーー惜しかった。大競りを見たときは「差して2着以内が確定か!?」と思ったものだが、やはりSG準優の面々は甘くない。ズボッズボッと音を立てて差され、あと一歩だけファイナルに手が届かなかった。まあ、25歳の西川にはいい薬だな。王者の意地、元志の負けん気、SGレーサーたちの機敏に展開を突く判断力……それらをひとつのレースでいっぺんに味わったのである。若いもんが2コースからちょいと差しただけじゃ優出できないぞ、昌希。大いに反省し、「何が自分に足りなかったか」を真摯に考え、明日からのレースにこの貴重な経験を生かしてもらいたい。

 

悶絶ターン

 

12R

①仲口博崇(愛知)18

②山崎智也(群馬)21

③毒島 誠(群馬)13

④菊地孝平(静岡)06

⑤白井英治(山口)05

⑥峰 竜太(佐賀)04

 

 

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 うーーーん、唸るしかない。素晴らしいターンだ。4カドの菊地の締めまくりにぐいぐい圧迫され、内にいる艇とも接触して万事休すかと思われる態勢から、毒島誠があっという間に抜け出した。魔術を見ているようだった。今日の1マークはいわゆるNGTとは違うのかもしれない。ただ、左右から挟撃されてもボート全体のバランスを崩すことなく、すぐにハンドルを入れたあたり、並の人間にはできない動作だと思った。うーーん、強くなったなあ。本当に強くなった。とやっぱり唸ることしかできない1マークだった。

 

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 パワー的には中堅ど真ん中。その評価は前検から変わっていない。伸び足に関しては中堅以下ではないかと思っている。その劣勢パワーを補って余りあるターンスピードが、明日も通用するか。桐生相手にどんな戦術を組み立てるか、明日の気配をチェックしてしっかり見極めたい。まくるか差すか……間違いなく明日のキーマンのひとりだからだ。

 

 

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 2着にはその毒島を押し返すように踏ん張りながら、仲口博崇がなんとか粘りきった。勝てば明日の1号艇というミッションはクリアできなかったが、メンバー的に4号艇は悪くない。パワー的にも桐生と同じかそれ以上とも思えるし、何よりも気力の充実もビンビン感じられる今節である。去年のチャレカで無闇に6着を並べたときは「SGひとつで終わるんじゃないか」と思った。それくらい不甲斐ないレースぶりだった。あれに比べたら今節は別人で、おそらく気力の充実ぶりだけでいうならあのダービーのときよりも上だと思っている。今日の2着で人気の盲点になるようなら(おそらくなる)、舟券的にも美味しい予選トップレーサーと言えるだろう。(photos/シギー中尾、text/畠山)