BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――同窓会?

 

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 キュコキュコキュコキュコ。朝よりもさらに静かなピットに、鳥のさえずりのようにも聞こえる音が響いていた。音の主は池本輝明。整備室の隅のほうでゲージ擦りをしていたのだ。新プロペラ制度導入からもうすぐ3年。何度となく見てきた光景である。ペラを叩くよりもペラゲージ作り。ある程度、調整は終わっていると判断していいだろう。

 その隣の席に、今村暢孝が腰かけた。今村もゲージ擦りか、と思いきや、違った。今村は特に何もせず、池本に話しかけ始めたのであった。満面の笑みで、時に体を揺すったりしながら、楽しそうに話すノブさん。ゲージ擦りも含めて何もすることがないわけだから、こちらも余裕というか、切羽詰まって調整をするという必要はないわけである。

 

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 ノブさんがその場を去ると、その椅子にすわったのは森竜也。ドラゴンもゲージ擦りしないで、池本に話しかけていた。人のよさそうな笑みを浮かべながら。

 すでにお気づきの方も多いだろうが、この3人は同期である。59期生。あの植木通彦さんも同期。一昨年、ノブさんがマスターズデビューし、昨年はドラゴン、そして今年は池本が出場した。植木さんがこの場にやって来ることはないわけだが、59期というのもなかなかハイレベルな期なのだと改めて思う。あ、そうそう。これは11R発売中に見た光景で、そのレースの3号艇・山田豊も同期生です。レベルも高いが、個性も豊かですね。

 

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 やがて、池本はゲージ擦りの手を休めて、エンジン吊りの準備を始めるために席を離れた。すると、そこに座ったのは江口晃生。江口もなーんもせずに、どっかと腰かけて、柔らかな微笑を浮かべていた。なんか話しているようでもあるのだが、独り言? と思ったら、よく見ると死角になっているところで島川光男がゲージ擦りをしていたのだった。江口は島川と会話をしていたわけである。江口と島川も54期の同期生です。

 というわけで、ゲージ擦りテーブルは、にわかに同窓会の趣きとなっていたのでありました。すでに引退した同期も少なくないなか、この舞台で顔を合わせられるのは、感慨深いことであろう。

 

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 いや~、それにしても強い。凄い。今村豊、ついに無傷の5連勝である。あと3回逃げればパーフェクトV。ミスターには、簡単に言うなと言われそうだが、ではいったい誰が今村を止められるというのか。「今村が何かしらんがドカ遅れ」という自滅以外に想像がつかん。進入かき乱すイン屋の存在に期待したいところではあるが……。

 

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 熊谷直樹に期待はしていたし、熊谷自身もその思いは強かったはずである。スタート展示でインを獲られ、本番でも危ないところだったが、意地を見せて主張した。そしてトップスタートを放った。やや深い位置からコンマ10なのだから、お見事である。それでもあっさりまくられた。熊谷は舳先をかけようと抵抗したけれども振り切られた。もうどうすりゃいいの、ってなところである。

 熊谷は道中4番手くらいを走っていたが、2周2マークで気合の切り返しを見せて逆転2着となっている。でも、そんなの慰めにもならんでしょう。カポック脱ぎ場で今村とレースを振り返り合って、笑みを見せてはいたけれども、内心はどうだったんでしょうね。その後、熊谷の前で2番手競りをしていた渡辺千草と大場敏に頭を下げに行った熊谷だったが、今村と話しているときと表情が変わっていなかった。表面的な笑みが貼りついている感じだった。それが熊谷の心中をあらわしていたように思えるがどうか。

 ちなみにピットでは、昨日のようにはスゲエスゲエという会話は交わされていない。話題にしても仕方ないというか、あえて言葉にして確認し合う必要がないというか、「太陽は東から上る」と同じくらい「今村のパワーが凄すぎ」は人々の共通認識になってしまっているのだ。こうなったら、今村が敗れたあとのピットの様子=今村のふるまいと勝者の周囲の沸騰を見てみたい、というのは天邪鬼ですか?(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)