BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

TOPICS初日

生奈、躍動

 

 

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「女子7人枠」が適用された今年のオールスター。おそらく、その7人の女侍の心中には「票数が足りているのに、参戦できなかった女子の分まで頑張ろう」という思いがあることだろう。その闘志が、今節の水面にどこまで反映されるか。

 初日の今日は、博多の弾丸娘・小野生奈が気を吐いた。まずは4R、4号艇のピットアウトから大外に追い出されたが、内の茅原悠紀の握りマイに連動する形で全速のまくり差しアタック。この強気の攻めで3番手争いに加わると、今をときめく茅原の猛攻猛追を完封してガッチリ3着を取りきった。明らかにパワー上位の気配も感じたが、一歩も怯むことなく全速マイで攻め続けた姿勢は高く評価したい。

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 で、さらなる圧巻は9Rだ。インコース原田幸哉の展示時計6秒67は、今日イチの出色タイム。一方、2コース生奈のそれは6秒81。単純換算で1艇身はやっつけられそうな差だ。しかも、スリット隊形は幸哉がわずかに先手を奪った。

 こりゃ、差してどこまで迫れるか。

 と思いきや、生奈は半艇身ほど引き離されたポジションから、迷うことなく強ツケマイを放った。それは、半端な迫力ではなかった。幸哉の艇がふら~りよろけたように見えるほどの強烈なツケマイ。命からがら幸哉が残しきったものの、マジで引き波にハメ切るかと思ったぞ。惜しくも2番手になった生奈だが、1周2マークも凄かった。その直前、内からじりじり詰め寄った篠崎元志が、生奈の攻め手を消すような航跡で艇を合わせてきた。

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 握るか、差すか。

 一瞬でも迷えば後手を踏む展開だ。がしかし、生奈はここでもまったく迷うことなく全速でぶん回した。盤上ならぬ、「水上この一手」の全速マイ。これが逆に元志に引き波を浴びせる形になり、あっという間に2着を奪いきったのである。前半の茅原といい、このレースの元志といい、ニュージェネレーション真っ青!の道中だった。

 レース後、記者席にいた元SGレーサーが「しっかし生奈って子、凄いな」と呟いた。その隣にいたこれまた元SGレーサーが「あの1マークで、あのツケマイだもんなぁ」と呆れたように返す。超一流レーサーたちを唸らせるほどのパフォーマンスだったわけだ。初日を③②でまとめた生奈の明日の艇番は、1号艇。ここもキッチリ逃げきって水面に投げ飛ばされる(開会式での公約どおりの水神祭)ようなら、準優どころかさらにその上のステージも視界に入るだろう。

 

銀河帝国の逆襲

 

「そういえば最近、銀河系の名前を聞かないな」

 昨晩、黒須田と大村駅前の『鳥勝』で呑んでいるとき、こんな話題に行き着いた。ニュージェネやら西川昌希やらミスター完全Vやら御大引退……様々なニュースが艇界を駆け巡る中、確かに「銀河系」の名は隅に追いやられた感がある。いや、正確には「隅に追いやった」というべきだろう。このブログでもボートボーイでも「銀河系」とその面々を記す頻度は、極端に減った。

「井口や田村がF2で苦しんでるせいもあるけど、別に銀河の面々が弱くなったわけじゃなし。たかだか半年ほど、記念を勝ってないってだけなのに。結局は俺たちマスコミの移り気というか、新し物好きと言うか、すぐに目移りしちゃうんだよなぁ。ついこの前まで、『井口時代』とか呼んでたのに」

 自戒の念を込めつつ、そんな結論に至った。そして、〆の言葉はこんなだったな。

 

 

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「今節あたり、ガツンとシッペ返しを喰らうかもね」

 12時間後、さっそくその予兆が現れた。小野生奈が3着に奮闘した4R、生奈のはるか前方を走っていたのは丸岡正典、森高一真の銀河コンビだった。2コースの丸ちゃんがジカまくり、前付けに動いた森高が3コースから全速のまくり差し、というふたりのレーススタイルがしっかり反映されたワンツー決着だ。機力的にも、丸ちゃんはスリットからじりじり加速して行く伸び型。初日からこの伸びが来たときの丸ちゃんは怖い。怒涛のジカまくりを目の当たりして、「優勝候補のひとりだな」と直感した。

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 一方の森高はお世辞にも上位とは呼べないが、5号艇で2着8点を稼いだのは好材料だ。回り足は水準レベルはありそうなので、あとは行き足~伸びを強化できればV戦線に食い込めるだけの存在になりうる。

 そして、もっとも不気味なのが湯川浩司だな。今日の8Rは、4カドからスーーッと覗いたものの、攻めが不発で3着止まり。道中では4番手の重成一人に詰め寄られるなど、頼りない一面も見せた。が、足合わせやスタート特訓などを見る限り、スリット付近の行き足は間違いなくトップレベルなのだ。「行き足に特化して回り足はむしろ弱め」というのは湯川らしいスタイルでもあり、だから道中のターンで後続に差を詰められる。その弱点を加味しても、スリットからの破壊力は十分にSGを獲れるパワーだと思う。

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 銀河3人で①②③着。彼らの実力をもってすれば、この成績自体は特筆すべきものではない。だが、それぞれのパワーも含めて、「今節は早い段階からそれぞれの持ち味を活かしきれる」と思わせる初日だった(森高はもう一押し!)。早々に仕上げきった銀河系軍団の強さは、いまさら多くを語る必要もないだろう。しっぺ返しでもデコピン百発でも、心置きなく移り気な我々をいたぶってもらうとしよう。(photos/シギー中尾、text/畠山)