BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――どうするどうなる西山貴浩

 

 

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 今節、どうしても確認しなければならないことがあった。今年2月、僕は飯山泰と一緒に浜名湖でトークショーをした。浜名湖は「全国出身地対抗戦」を開催していて、それは46都道府県出身選手を集めての企画シリーズだった。唯一、出場選手がいなかったのが、長野県。長野出身の選手は現役では飯山ただ一人で、ちょうどF休み中だったのだ。そこで浜名湖では、水面に欠けている1県をトークショーで埋めようということで飯山を招聘。同郷である僕もお呼ばれしたという次第だった。

 僕と飯山は、艇界に数少ない信州人ということで、親近感がある(と僕は勝手に思っている)わけだが、そのとき飯山が「馬場ちゃんが長野に住んだことがあるって言ってましたよ」と言っていた。何っ!? それは初耳だ。それが本当なら、馬場ちゃんもチーム長野ですよぉぉぉぉっ! と二人して盛り上がった。これはぜひ本人に確認しなければ、とそれからずっと胸に秘めていたわけである。

 というわけで、馬場貴也選手、長野に住んでたことあるんだって?

 2日目にして馬場と話すチャンスを得たので、勢い込んでそう質問したワタシでありました。馬場によると、子供の頃に1年弱、お父さんの仕事の関係で住んでいたことがあるそうで、飯山の出身地でもある茅野市にいたとか。茅野というのは僕にとっても思い入れのある土地で、初恋相手の真理子ちゃんが引っ越していった先……というのはどうでもいいけど、馬場貴也に俄然、親近感が沸いてしまいましたよぉぉぉぉっ!

 というわけで、今後、馬場貴也をえこひいきします、はい。

 今日の午後の馬場は、ギアケース調整に精を出していて、そのときの表情がなんとも引き締まっており、カッコ良かった。馬場って精悍な顔つきをしているから、作業に向かうときやレースに臨むときの雰囲気は、実に鋭く見えるのだ。その一方で、話しかけると実に柔らかな空気を醸し出す好青年で、日本一のスピード野郎の意外な素顔に驚かされる。 馬場選手、信州の空気を幼少時に浴びた者同士、頑張りましょう!

 

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 と、極私的な感情を書き連ねたところで、今日のピットのハイライト「ニッシーニャ劇場」をお伝えしよう。主役はもちろん西山貴浩。準主役は池田浩二だ。

 そもそも、池田が西山の後頭部にバリカンでちょっかいを出したのが事の発端のようだった。刈り上げたほうの生え際が妙なラインを描いてしまったため、西山はそれを気にしていた。それを見た石川真二が、「俺にもやらせてよ!」と断髪式のごとくバリカンを後頭部にあてた。黙って石川のなすがままにしていた西山だが、同世代の仲間にからかわれてさすがに呆れた表情を見せている。

 

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 そこに池田浩二、登場! 西山はバリカンを手に、「先輩のせいでえらいことになった!」とばかりに、池田を追及。先輩の髪の毛もこうしてやる、とバリカンを振り上げて池田を追いかけるのだった。

 そうこうしているうちに、西山の周りには錚々たる面々が集結。服部幸男、田中信一郎、仲口博崇、池田、石川……大先輩たちが西山を取り囲んでああだこうだと話し始める。いやあ、強烈なメンバーだなあ。今節の重鎮的な存在がズラリである。

 

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 西山の背後に回った服部は、じーっと後頭部を見つめた挙句、「ここを完全に刈り上げるか、このラインにすればカッコいいよ」とアドバイス。それをきっかけに、先輩たちは好き勝手なことを言い始めた。「ナスカの地上絵」なんて単語も聞こえてきたぞ。頭にあの巨鳥のような絵を描き上げるのか? 無責任な先輩たちの発言に、西山はツッコミを入れつつ苦笑いしている。もはや西山はおもちゃである。

 

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 すると、池田がバリカンを手に取って、西山の前頭部にあてた。そのとき、「あーーっ!」という西山の悲鳴が響き渡った。池田はバリカンの刃の部分を逆さにしてあてたらしく、構造上、0コンマいくつのレベルで刈り上げることになってしまうのだ。池田がバリカンを外すと、西山の前頭部には10円ハゲが!「バカーーーッ!」。先輩だろうが何だろうが、あまりの仕打ちに西山は叫ぶ。池田は大爆笑だ。

 

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 そんなのマジックで塗ったら目立たなくなるよ、と誰が言ったのか。油性マジックで塗りつぶすと……目立ちます、もっと悪い方向に(笑)。服部は「大丈夫大丈夫」とか言ってるが、たぶん大丈夫ではないだろう。これで街中を歩けといったら、さすがのニッシーニャもためらうだろう。さらに、遅れて輪に入ってきた平本真之が、白のマーカーでその上をなぞった。こうすれば今度はマジック跡が隠れて、地肌が出ているように見える……って、そんなわけあるかい(笑)。鏡を見た西山は「カビ生えてるみたいじゃないっすか!」。たしかにね。で、それを見た森高一真が、「西山、そんなんで騒ぐのは失礼や!」と僕を、というか、僕の頭を指さす。一真様、なんで俺に振るのよ。シャレになってないと思ったのか、笑ってるのは森高だけじゃないか。その状況がシャレになってない。

 

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 この一部始終を、少し離れたところで同期の山口達也が眺めていたのが、いい感じだった。もう、まったく他人事、って感じだったなあ。そんなこんなでその後もひとしきり騒いで、ニッシーニャ劇場は選手も報道陣も爆笑の渦に叩き込んでいた。あ、念のために付け加えておきますが、これは12R発売中の話で、すでに作業を終えている選手が帰宿待ちの間に西山をイジっていた、という図であります。

 で、その前の11Rを無傷の3連勝で制した深川真二が着替えを終えてあらわれると、報道陣は一斉に深川を囲んで、ニッシーニャ劇場は見向きもされなくなってました(笑)。深川待ちの記者さんのいい時間つぶしになっていたというか。

 どうやら、西山の髪型については、もうひと悶着ありそうな雰囲気だ。最終日にはどんなことになっているのか、大きな変化があればまたご報告します。もうこんなに長いこと書いたりしないけど(笑)。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)