BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――元志、帰郷……

 

 

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 今日は転覆が2件。鎌倉涼と黒井達矢だ。幸いにも、二人とも身体は無事。黒井は遅くまで試運転をしていたし、鎌倉も調整作業を懸命に続けていた。いきなりの転覆は痛いが、明日からも元気に水面に登場するだろう。

 

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 一方で、無事ではない選手が出た。篠崎元志だ。篠崎は5Rで妨害失格。2周1マークでキャビって、鎌倉涼の転覆に関わってしまった。そして、その接触で左腕を打撲。これが悪化したことで途中帰郷になってしまった。残念だ。

 残念がっているのは、もちろん本人も同様。なにしろ、痛みに耐えて出走した10Rで1着なのだ。妨害失格がなければ、という思いがまず浮かぶ。足も良さそうで、賞典除外になっておらず、このまま走り続けられたら、優勝戦線に絡んでくることは必至。しかしその道はすでに閉ざされ、さらには体が痛んで帰郷の憂き目。元志はこちらの顔を見るなり、「残念!」と叫んだが、心中にはいろんな思いが渦巻いていそうな雰囲気だった。

 今年に入ってSGでは結果を出し切れてはいない篠崎だが、勝負はここから! 次節には地元福岡の周年も控えている。まずは傷を癒して、この鬱憤を晴らす活躍を見せてもらいたい。

 

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 接触といえば、10Rでは石渡鉄兵も道中で接触があった。ピット離れで遅れ(回り込んでコースは取り返した)、道中では接触があり、と散々な結果に。ピットに戻って、エンジン吊りもそこそこに医務室に向かったので、容態が心配されたが、その後は元気にピットにあらわれていたので一安心。自分を一気にまくっていった原田幸哉と、笑いながらレースを振り返り合っていて、明日以降のレースに影響はなさそうだ。ピット離れにしろ、レースにしろ、一気に自分を超えていった原田に対して、石渡は苦笑いがたっぷり含まれた笑顔を向けていた。笑うしかないっすよね、あの展開では。ともかく、笑顔が出るなら問題ない。この巻き返しを断固たる決意で果たしてもらいたい。

 

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 笑うしかないといえば、井口佳典が笑ってたな~。11R、井口はたしかにインから先マイし、逃げ切り態勢を築いていた。しかしバックで後続を振り切れず、むしろ松井繁と菊地孝平に伸びられてしまう。2マークはさらに他の艇の突っ込みも待つ展開になり、結果的に5着と大敗してしまった。ずり下がる、というのはこのことだ。

 レースを終えて、ピットに帰還する際、ボートリフトに乗る直前で、井口は一瞬、がっくりとうなだれている。1号艇を活かせず、大敗を喫してしまった落胆がハッキリと見て取れるものだった。ピットに上がっても、深刻な表情。劣勢の機力も含めて、暗澹たる思いがあっただろう。

 だが、着替えを終えてピットにふたたびあらわれた井口は、あまりの敗戦にもう笑うしかない、ってな感じで笑顔を浮かべていた。こういうことってありますよね。今日は手の打ちようのない敗戦だったのだ。その後に入ったペラ室では、愛弟子の新田雄史にからかわれたのか、声をあげて笑う場面も。うーん、かえって心中の悔しさが見えるように思えたなあ。その笑い声にすべての鬱憤を乗っけて吹き飛ばせ! こちらも明日からの巻き返しを期待しよう。

 

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 さてさて、装着場のど真ん中で、あまり見かけたことのない組み合わせが。市川哲也と赤岩善生だ。10Rのエンジン吊りが終わったあとに、おそらく市川から声をかけて会話が始まり、他の選手がいなくなっても延々と話し続けていた。詳しくは聞こえてこないが、赤岩がしゃべる時間が長かったなあ。市川は赤岩の言葉にうんうんとうなずく場面もあった。

 二人の会話が終わって、その数分後だろうか。整備室をふと覗いたら、市川が本体整備をしていた。今年のSGで市川はなぜか抽選運に恵まれておらず、本体を割るシーンも何度も見かけてきた。だが、赤岩との会話の直後にこの姿を見たら、先ほどの“会議”に意味があると思うしかないですよね。整備巧者の赤岩が話し続け、市川がうなずく。これ、市川が赤岩に整備に関して質問を繰り出していたシーンであろう。赤岩も手の内を隠すのではなく、先輩の問いかけに応えた。それを参考にして、市川は本体と向き合ったのだ。

 

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 衒うことなく後輩に教えを請う市川。先輩の熱意に男気で応える赤岩。何てことのないシーンだと思ったが、それは何とも素敵な一場面だったのだ。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)