BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

TOPICS 3日目

 

エミ&生奈、散る。

 

 

 

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 若手の女子レーサーの中で、誰のレースを見たいか。そう聞かれたら、私は迷うことなく遠藤エミと小野生奈の名を上げる。男子顔負けのターンスピードを誇るエミ、やんちゃで元気ハツラツの生奈。今節も、このふたりがV戦線で大暴れすると決めてかかっていたのだが……なんとなんと、ふたり揃って予選24位以内から消え去ってしまった。

 まず、6Rの1マークで遠藤エミが選手責任の転覆失格。西村歩のまくりを喰って、焦りが生じたのだろう。巻き返しの差しハンドルを入れようとしたが、気持ちと初動がまったく噛み合っていないようなターンになった。豪快に振り込んで、ドボン。

 

 

 

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 10Rの小野生奈は、フライングに散った。すでに予選突破は確実な身の上だっただけに、実にもったいない勇み足だった。まあ、そんな状況下でも常に全力で1着を獲りに行くのが生奈の魅力なのだが。それにしても、6コースから一撃で差し抜けたスピードの凄まじかったこと。あれがフライングでなければ、「女茅原、電撃の6コース差し」としてしばらく語り草になったことだろう。

 今節の楽しみがいっぺんにふたつ消えてしまったが、このふたりには“罰ゲーム”として、一般戦での桁違いの圧勝を義務付けたい。消化試合でも全力投球、その心意気がさらなるスキルアップにつながるのだから。

 

 

 

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 一方、もっとも嬉しい予選突破を果たしたのは、長嶋万記だろう。昨日までの24位ボーダーが5・67で、今日のそれが5・00。この劇的なまでの暴落が、ミラクルを呼ぶ。5・5・3着という冴えない成績だった長嶋は、9Rの1号艇を与えられた。おそらく、余計なことは何も考えず、無心でレバーを握ったに違いない。鮮やかにイン逃げを決めて5・00。とても24位には届かない数字かと思いきや、前出・生奈のFなどもあってあれよあれよとギリギリ24位に滑り込んだ。足的には中堅レベルでも、この勢い&強運は馬鹿にできないな。元より実力的にはファイナルでも通用する万記のこと。しっかりパワーアップに専念して、生奈やエミの分まで奮闘してもらいたい。

 

グレートマザーの効力

 

 

 

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 視線をボーダーから上に移そう。予選トップの座を勝ち取ったのは、ちょっぴり意外な香川素子だった。流れ的には3連勝中の魚谷香織か、ドリームを制した松本晶恵か、というムードだったのだが、このふたりが今日はまったく振るわず1・1・3・1着と手堅く着をまとめた香川が首位に浮上した。もちろん、この逆転トップで初の女子王座に大きく近づいたわけだが、パワー面も加味すればV戦線がより混戦モードに傾いたとも言えるだろう。私個人としては、穴党の心を心地よくくすぐる準優進出戦のメンバー&枠番になったと思っている。

 

 

 

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 で、今日のトップ争いで特筆すべきは日高逸子の存在だ。「女子戦は波風の立たない枠なり3対3が基本スタイル」としたもので、昨日までピット離れの良し悪し以外での進入の乱れはまったくと言っていいほどなかった。で、今日は5号艇&6号艇の日高(すでに予選突破はほぼ当確)がどうするか。私はこの1点にかなりの興味を抱いていた。

 もしも、今日の勝負駆けで逸子ママが動かなかったりしたら、今後の女子レースはほぼ完璧に枠なり、オール進入固定戦になるかも?

 そんな危機感とともに。仮にグレートマザーが外枠で動かなかったとしたら、「逸子様でも我慢したんだから……」みたいな空気が蔓延して、みんな金縛りのように枠なりを選択するのではないか(現状でもほとんどそんな状況だけど)。いささか大げさに言えば、今日の勝負駆けで逸子ママが前付けするかどうかで、今後の女子レースの待機行動のスタイル、方針が決まる。それくらいの心持ちで注目していたのである。

 

 そしてレース本番、逸子ママは当然のように前付けに動いた。過激に、獰猛に。トップ(または明日の好枠)狙いの本気の勝負駆けであることを、態度で示した。勝負駆けの気合はスタートや道中の戦術にも投影されるが、ファンにもっとも明快に伝わるのはコース獲りだと私は思っている。スタートの前段階で「他の選手に嫌われてもいいから、本気で勝ちに行く」という姿勢と覚悟を見せられるからこそ、ボートレースは他の公営ギャンブルより奥深いとも。その大きな醍醐味がどんどん薄れている昨今、日高逸子のような存在は貴重すぎるほど貴重だ、とも。グレートマザーのトップ勝負駆けは不発に終わった(2・5着で10位)が、勝負に対する激辛な思いは私の胸にしかと伝わった。

 

赤面のセンター祭

 

 

 

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 余談ではありますが……人間、滅多なことで能書きなんぞ垂れるもんじゃない。つくづく反省した今日の前半戦だった。昨日、「今節も1・2コースがやたらと強い、3~6コースのまくりはゼロなので、素直に内枠から穴を狙え」みたいなことを偉そうに書いたらば、今日は3、4コースが勝つわ勝つわ! 2Rは池田浩美が4コースから抜き、3Rは4コース山川美由紀が一撃まくり、4Rは4コース香川素子が差し、5Rは3コース松瀬弘美が絞りまくり、6Rは3コース西村歩が全速まくり、7Rも3コース寺田千恵が強ツケマイ……いきなり3、4コースが6連勝、しかもまくり決着が4発というド派手なセンター花火大会になってしまった。ひとつだけ弁解させてもらうなら、今日は1R~7Rまで昨日よりはるかに強い向かい風が吹いていて、「センター勢がスリットからぐんぐん伸びていた」という水面事情があったのですな。で、パタリと風が止んで静水面になった8Rからはイン選手が5連勝。三国オーシャン同様、風の魔力っていうことでひとつ……ダメですか、そうですか、はい、恥ずかしくも偉そうな能書きを垂れて、すいませんでしたっ!!(photos/シギー中尾、text/畠山)