BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――瓜生、元気!

 

 

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 朝一番というか昼一番、ピットに入った瞬間、装着作業を丁寧に行なっている瓜生正義の姿が目に入った。うん、元気そうだ。

「身体は大丈夫ですよ。違和感は少しあるけど、特訓で乗ったら、まったく影響はありませんでした」

 声も表情も明るい。うん、本当に大丈夫そうだ。昨日の転覆シーンは実に危険だった。周囲からも、大事故になっていても不思議ではなかったと言われたそうである。「その意味では、(大けがにならなくて)恵まれてますよね」と瓜生は笑った。いやはや、ファンの皆さん、安心してください。まったくもって、瓜生正義は大丈夫ですよ!

 転覆したことで、いったんモーターをバラして洗浄する“転覆整備”を行なうわけだが、それによって足がもう一丁、上向いたという話がピット内では聞かれた。

「エンジンは動いてましたから、ここから、ですね」

 と瓜生も言う。肉体的にもモーター的にも、動きが落ちるのではないかとの心配も、どうやら必要ないようだ。転覆=0点で、得点争いでは一歩だけ後退しているが、ここから瓜生はきっと巻き返す。6Rは6号艇、でもなんか怖いな~、と思った次第である。

 

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 元気そうな瓜生と話したことで安心し、整備室を軽い気持ちで覗き込む。平本真之が本体整備中だ。

 それにしても平本は本当によく整備をする。たぶん毎節見てるんじゃないかな、平本の本体整備は。昨日の終盤の時間帯にもやっていたし、今日はボートにまだ艇番もついていなかったから、スタート特訓をスルーして、整備に励んだようである。

 ただし、これは「足が悪いから何とかしよう」という類いのものではないようだ。

「まだ1回も整備が入ってないモーターなんで、開けてみて、点検したんですよ。それはいつもやっていることですね。だって、相棒ですから。やっぱり手をかけなきゃダメですよね。今日も部品は換えてませんよ」

 相棒をとことん大事にし、かわいがる男=平本真之。もちろん、不安点があれば部品交換も含めた整備となることもあるが、彼が整備室にこもるのは決してそれだけではない。ある元選手が「若い子には『一日じゅうモーターに張り付いてろ』というアドバイスをしたことがあるね。一緒に戦うモーターじゃないか。時には本体を割って、油を差してやって、大事にしなきゃいけないんだよ。俺は現役時代、良くても悪くても、一節に多い時は5~6回は割ったよ」と言っていた。平本がそういうアドバイスを受けたのかどうかは知らないが、平本は同じポリシーを持っているわけである。そういう積み重ねが、いつか結果に結びつく。今年の好調は、決して偶然やフロックではないと思う。

 

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 昨日時点で予選トップは下條雄太郎! それほど急ぎの動きを見せていたなかったので、声をかけて3択クイズを投げかけた。

 昨日の9Rの逆転勝利は、足? 腕? 気持ち?

 いきなり3択を提示されて、言葉に詰まる下條。そりゃそうだ。僕も無茶な質問をしたものだ。

 やや考えた下條は「足、ですね。出足がいいんですよ。ただ、伸びがもうひとつ。だから今日はそこを調整する」

 まあ、いちばん無難な回答ですよね。腕と気持ちは自分をほめることになる。足のおかげ、というのが平均的な答えだと思う。実際、足はいいのだろう。ただ、僕はその実、その足を活かし切るだけの気持ちがあったのではないかと勘繰っていた。

「ははは。でも、大村じゃないので気は楽です。大村(オールスター)のときは緊張しましたからね(準優出)。あれを思えば、今回は楽ですよ」

 地元SGを、その舞台での準優を経験したことが、下條を一回り大きくしたということだろう。そう、確実にメンタルが上向いたのだ。だから、こちらが「じゃあ今回はいい枠で準優に乗りましょうよ」と煽っても、「そうですね! 頑張りますよ」と力強く言葉を返してきた。今日明日の結果で状況は変わるとはいえ、2日目時点でも予選1位に立てているのは決してフロックや番狂わせの類いではないだろう。今日の2走をうまく乗り切れば、大仕事を成し遂げる可能性も充分あると見たぞ。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)