BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――朝から悲喜こもごも

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171220090845j:plain

 2日目も朝から悲喜こもごもである。

 1R、もっとも悔しそうな表情を見せていたのは、北野輝季だ。4カド岡村慶太がのぞいたスタートから内を締めていったとき、北野の脳裏には勝ち筋が浮かんだのではなかったか。岡村に乗ってのまくり差し。見ていた人も、ボートレースの教科書のような展開を想像したかもしれない。ところが、差し場はなかった。インから伸び返していた西村拓也と重なったのだ。

 ピットに戻ると、思い切り顔をしかめる北野。先輩の丹下将が、柔らかな表情で北野の話に耳を傾けているが、なかなか北野の気持ちは癒されないようだった。何度も首を傾げ、どこが悪かったのかを反芻していたが、その鬱憤を晴らすには次のレースで勝つしかないだろう。

 

f:id:boatrace-g-report:20171220090900j:plain

 西村拓也にとっては、痛い敗戦だ。1号艇をモノにできなかったのは、まさに計算外だろう。まして1R1号艇。必勝の気合で臨んだはずだから、顔が曇るのも当然というものだ。

 装備をほどいて、水を浴びたヘルメットを磨く西村の姿は、哀愁を帯びたものだった。ハッキリと伝わってくる落胆。その場所は、秋の陽光に照らされてまぶしかったが、だからこそ余計に西村のうなだれ具合が強烈なコントラストとして映った。心に残った澱を洗い流すには、やはり次のレースで勝つしかない。北野も西村も今日は1R1回乗り。一日かけて、明日以降の戦いへの目算を立てることだろう。

 

f:id:boatrace-g-report:20171220090915j:plain

 2Rは、やっぱり西山貴浩だ。今節、どうしても目が行ってしまう男。このお祭り男が、レース後は顔を引きつらせていたのだから、勝利にかける思いはやはり普段以上と見える。もっとも、選手仲間が周りにいるときには、胸の内を悟られないようにということなのか、微妙な笑みを浮かべてはいた。エンジン吊りが終わり、カポック脱ぎ場に足を向けたとき、まず表情が一気に変わった。そして、軽く顔をゆがめた。ミスった……レースのどの部分を指すのかはともかく、そんな顔つきになった。芦屋の新鋭王座、あれは西山にとって新鋭卒業の一戦だったが、そのときにも確かその顔を見た。あのときの西山は、優勝しか考えていなかった。今回も、であろう。

 

f:id:boatrace-g-report:20171220090936j:plain

 敗れた者が落胆するのは当然。だから勝者が笑っているのも当然、かといえばそうでもない。1Rの岡村慶太はやけに飄々としていたぞ。もちろんちらちらと笑顔は見えていたけれども、大きく表情を変えることはなかった。岡村に会うのは13年新鋭王座以来2回目だから、その人柄について深く知るところではないが、そういった冷静さを持っている男だろうか。

 着替えを終えたあとの岡村は、エンジン吊りをヘルプしてくれた選手たちに頭を下げて回っている。その姿も淡々とした雰囲気だった。同期の竹井奈美に声をかけたときには、やや笑顔を見せていたけれども。

 

f:id:boatrace-g-report:20171220090950j:plain

 一方、古賀繁輝はさすがの元気者! ピットに戻った瞬間からニッコニコだったし、山田康二ら後輩に見せる笑顔は、まさに少年のごとき明るさだった。今年でヤングダービー卒業とは信じられないなあ。新鋭王座に出始めの頃から、ひたすら元気いっぱいの気持ちいい青年だったが、三十路が近づいてもそれは変わらない。不惑になっても変わらなかったらすごいぞ。

 そういう古賀だから、カポック脱ぎ場でも話の中心にいるようだった。「(スタート)早いだろ!?」と古賀が大声をあげると、早い早い早いでしょとみなが口をそろえている。ご名答、全員がゼロ台です! 古賀は、西山とはまた違ったかたちでムードメーカーになりうる存在だ。勝ち星を重ねていけば、ピットの空気はひたすら明るくなる!(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)