BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット@グランプリ――石野が“入った”!

 

 

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 石野貴之が早くも“入って”いるように思えるのである。マスクをしているので、表情全体はわからない。ただ、目が怖い。というか鋭い。ここ一番の石野貴之。そう見える。そもそも、地元グランプリに特別な思いを抱いて住之江入りしたのは間違いない。年頭から「ベスト6でグランプリへ」を目標に戦い、それを果たしたのだ。そのうえで、石野はエース機を引いた。もう一丁、気合が乗って当然の状況だ。いや、それらが先入観であることは否定しない。そういう目で、僕が石野を見ているのはたしかだろう。それを差し引いても、石野には感じ入るものはある。ピット節イチというものがあるのなら、僕は迷わず石野貴之を指名する。

 

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 では、節二は誰かといえば、僕のなかでは中島孝平だ。やけにテンションが高いのである。“寡黙なる闘神”とは、一昨年のグランプリで公募され、中島につけられたキャッチフレーズ。たしかに、ピットでは基本、黙々と作業に専心するのが彼のスタイルと見える。ただ、戦いの場を離れれば饒舌。自分の思いを朗々と言葉にできる人でもある。その中島孝平が、トライアル1st組の共同記者会見で見られたのである。中島といえば、本人曰く「前検では(直線で)いつも下がる」。出足やターン回りが仕上がっても、伸びがなかなか来ないというのが、よく見られる中島の足色である。それが今日、「下がらなかった」というのだ。「もしかしたら出ていくくらいかもしれないと思える」とやけに慎重に言葉を選んではいるが、大きな手応えを感じてもいる。グランプリでその感触があったら、テンションが上がるのも当然だろう。12Rは6号艇に原田幸哉がおり、前付けも予想されるが、4号艇に入る中島は「6コースには行きませーーーん!」。行きません、ではなく、行きませーーーん。中島の心中がハッキリとうかがえる、その口調なのである。

 

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 節三までいこうか。笠原亮だと思う。「昨日は緊張して眠れなかったんですよ~」。マジか。そういう素振りをちらりとも見せないのが笠原亮である。レース前でも。優勝戦前でも。もちろん緊張皆無ということはありえないが、それにハマることがないのが、笠原のイメージだ。やはり10年ぶりのグランプリは特別ということか。笠原亮にいろいろと考えさせてしまうのが、グランプリという舞台である。

 ただ、試運転で不安は一気に解消したそうだ。「ピット離れも行き足も問題ないから、もう不安なく行けますよ!」。表情は力強い。あとはターンのスピード感をつけることだけで、そこが来たら彼の爆発力が発揮できる状態が整う。錚々たる面々が揃ったグランプリ、10年ぶりに出場する笠原はもしかしたら馴染みが薄いと感じる方も多いかもしれない。それはかえって舟券的には美味しいということにもなる。少なくとも、今日の段階での雰囲気は、まぎれもないグランプリ戦士のそれである。

 

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 一方、逆の意味でおおいに気になったのは、峰竜太だ。記者会見の開口一番は「スタート練習しかしてないけど、悪くないと思う」。額面通りに受け取れば、まあそういうことになるのだろうが、顔色がいつもとはまるで違っていた。早く言えば、引きつって見えた。焦りのようなものがハッキリと見て取れたのである。

 そのスタート練習が始まるより前の試運転タイムに、峰がペラ小屋でガンガンとかなり強く叩いているのを見かけている。試運転の感触によるものなのか、形状をチェックしたら自分の形とは大きく違っていたのか、それについては確認できなかったが、そのときペラ小屋で調整をしていた選手の中に、そこまで木槌を強く振り下ろしていた者はいなかった。それをリンクさせて考えれば、「悪くない」は決してポジティブなものとは思えないのだ。「エンジン本体も視野に入れないと」という言葉も見逃せないな。本体整備をする峰竜太をほとんど見かけたことがないし、峰自身「普段やらないので……」と語尾を濁してもいる。その言葉が出たこと自体が……と言うしかない。

 明日1日、たっぷりと時間があるなかで、どこまで納得の調整ができるか。峰の動き、表情には注目しなければならない。

 

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 もう一人、松井繁も少し気になった。前検でこんなに忙しそうな松井を見たことがあったかな、と思うのである。ギアケース調整とリードバルブ調整が主な作業のようであり、それは特段、いつものSGと変わったことではない。だから、特筆するようなことでもない。だが、妙に慌ただしく見えるのだ。ギリギリまで作業して、エンジン吊りに猛ダッシュで向かっていたから、だろうか。そう、松井がそこまで全力疾走している姿はあまり見ない。異常事態などとは言い切れないが、王者の珍しい姿を見たのはたしかだ。まあ、にもかかわらず、切羽詰まった感じも見えなかったわけだが。トライアル1stで勝ち抜けなければ王者ですらシリーズを走ることになる、という状況を、僕自身が重く捉え過ぎなのかもしれませんね。

 

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 1st組ではもう一人、明日はいろんな意味でカギを握りそうな原田幸哉だ。いいエンジン引きましたね~、と声をかけると、「残り物だけどね」とクスリと笑った原田。期待度大かも……と思ったりしたわけだが、なんと「全部やり直す」と言うのだ。つまり、感触が「好みではなかった」、だから「やり直す」ということ。70号機が別物になる!? もともと直線寄りの足という評判だから、気に入らなかったのはターン系か。それがどんな変化を遂げるのか、明日は展示などでぜひ確認してほしい。

 で、気になるのはやはりコース獲りでしょう。6号艇の原田幸哉が黙って6コース、は考えにくい。ただでさえ考えにくいのに、たった2走の短期決戦にあってはなおさらだ。

「相手次第なので何とも言えない。獲らせてもらえれば獲りますけど……」

 って、そんなの原田幸哉らしくないぞ。もっとも、その後には獲るつもりになったら何コースかはともかくどこまでも、的な彼らしい言葉も出たが、「相手次第」なんて言葉は原田幸哉には似合わない。もちろん仕上がり次第ということになるだろうが、明日は暴れる原田幸哉を見たいぞ。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)

 

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※他では、田中信一郎がいい雰囲気と見えました。ミスター賞金王の本領発揮か!?