BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット@シリーズ――試運転に、エンジン吊りに、忙しい!

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171220172358j:plain

 福岡ピットにある3カ所のプロペラ調整所。そのうちのひとつが、整備室の入口脇にある“スタンド調整所”。テーブルが置いてあって、椅子はなく、立ったまま叩く“立ち叩き屋”だ。屋じゃないか。立ち飲み屋じゃないんだから。

 10R発売中にここで叩いていたのは、赤澤文香、矢野真梨菜、櫻本あゆみ。時に会話を交わしながら、時に笑みをこぼしながら、仲が良さそうに作業をしていた。その様子を確認して、ちょっと水面を眺めにいったら、係留所にボートが5艇。手前から赤澤、矢野、櫻本……おぉ! 彼女たちは遅い時間帯まで試運転を続け、赤ランプがついて試運転タイムが終われば、ペラの調整に取り掛かる、というのを続けていたわけだ。交わしていた会話は、足合わせの感触の話だったのかもしれない。

 

f:id:boatrace-g-report:20171220172413j:plain

 もう2艇は、今井、水野とプレートがある。この二人は、装着場の隅っこにある“屋外”調整所でペラを叩いていた。彼女たちの調整の指定席はこちら。やっぱり若手は寒くても我慢、ってことなんでしょうか。暖冬ということなのか、そこまで寒くないというのが救いではある。今井はけっこう強めにカツンカツンと叩いている。カツンカッツン、カツンカッツン、カツンカッツンと基本二拍子で、二拍目が一拍目より強めに叩かれる。ほぼ正確にリズムを刻んで、一区切りで形状を確認して、またカツンカッツンがしばらく続く。なんだかいい音色なのであった。ちなみに、今井を除く4人は11R発売中に一斉に試運転に飛び出し、そこでボートを陸にあげている。今井も遅れてボートをあげて、ここですべての試運転は終わった。若手の皆さん、ご苦労様!

 

f:id:boatrace-g-report:20171220172431j:plain

 さらにちなみに、この若手の試運転あがりのエンジン吊りには、金田幸子が大活躍であった。ボートを展示ピットにつけて、陸に上がったらちょうど、若手たちが試運転を終えるタイミングだったのだ。金田といえば、「歩くより遅い駆け足」。態勢は駆け足なのに、スピードは普通に歩くよりもずっと遅いという、不思議すぎる移動なのだ。しかし、このときは実にスピーディ! きっちり走り、きっちり動き、キビキビ金ちゃんだったのである。これもメリハリというやつでしょうか?

 

f:id:boatrace-g-report:20171220172445j:plain

 屋外調整所では、中谷朋子がギリギリまでペラを叩いていた。中堅世代の中谷も、寒さなどまるで気にせずに、こちらで叩いているのだ。昨日はかなり強めに叩き、大きな音を響かせていたが、今日は音量がかなり絞られている。音量もそうだが、音自体も軽い感じになっている。最後の仕上げの段階に入っていたということだろう。ドリーム戦の結果は残念だったので、明日もさらに煮詰める作業となるのは間違いない。明日も冷え込まないといいですね。

 

f:id:boatrace-g-report:20171220172500j:plain

 10R、津田裕絵が4着。いったんは2番手争いにも絡む様相だっただけに、手痛い敗戦だ。ピットに上がってきてヘルメットを脱いだ津田は、仲間に声をかけられてニッコニコ顔だったけれども、これはもちろん苦笑いの成分が大量に混じったもの。ベテラン二人に競り負けたことは、足的にも経験的にも、負かされた感が強かっただろう。

 その津田が、着替えの部屋に向かう途中で足を止めて、長く話したのが堀之内紀代子。おぉ、朝にも見た組み合わせだ。今回は立場が逆となっていて、堀之内が津田を慰めたりアドバイスしたりという雰囲気であった。ようするに仲良しなんでしょうね。16期も離れた先輩後輩だが、お互いを高め合う関係にあるわけだ。

 

f:id:boatrace-g-report:20171220172521j:plain

 その10Rを勝ったのは、樋口由加里だ。堀之内はもちろん最初はこちらのエンジン吊りに参加していて、樋口の勝利を祝福している。このレースは中四国が4人も登場していたから、該当地区の選手は大忙しで、堀之内も金ちゃんもテキパキと動いて、樋口の作業のあとは他の中四国勢のヘルプに参戦している。樋口は先頭を走って操縦席に水をもらっていないから、わりとあっさり作業は終わる。他の岡山勢はその後に角ひとみとか津田のもとに駆けつけるわけである。

 樋口は対戦相手だから、もちろんそういうわけにはいかなくて、ではさっさと控室に帰るかというとそうではなく、挨拶行脚が始まっている。差し切った角のもとに向かって頭を下げ、上を叩くかたちとなった岩崎芳美にも同じように頭を下げ、他のメンバーにも頭を下げて、ひとりひとり全員に丁寧に礼を尽くすのであった。もちろん、後輩の渡邉優美にも。樋口といえば、谷川里江と並んで艇界最小兵。そんな樋口が、けっこう長身の角や渡邉に頭を下げている図は、なんだかかわいらしかったです。山椒は小粒でもピリリと辛い。明日からも存分に暴れてくれ!(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)