史上初のトーナメント戦ということで、予期せぬことがもろもろと起こるのである。まず、5Rで転覆してしまった木下陽介が負傷により帰郷となった。角谷健吾の欠場で急遽、追加参戦となり、しかしその初戦で負傷して終戦とは、なんとも気の毒。しっかりと傷を癒し、またこうした日の当たる舞台に登場してほしい。
木下の代わりに、地元の山田竜一が追加斡旋となって、今日の午後にレース場入り。前検を行なっている。山田は平和島が純ホームであり、追加の連絡を受けて即座に平和島までやって来たわけだ。参戦を知らなかったらしい渡辺千草は、山田の顔を見るなり目を丸くして、「あ、あけおめ……」と戸惑い気味に挨拶を交わすのであった。
10R、笠原亮が待機行動違反をとられている。1号艇で登場したが、西川昌希にインを奪われ、3コース発進となっているが、その際に転舵があったようだ。一発勝負のトーナメントは、いわゆる賞典レースと扱いは変わらない。というわけで、その待機行動違反はすなわち、賞典除外ということになる。レース後の笠原はさすがに落胆していて、また後悔を残してしまっているようだった。
12Rでは、萬正嗣が不良航法をとられている。森永隆が転覆を喫しており、それに関わったという判定だ。賞典レースの不良航法もまた、賞典除外。笠原同様、勝ち上がりの権利を失ってしまった。レース後の萬は、悔しさもあろうが、まずは無事にピットに戻ってきた森永に申し訳なさそうに駆け寄り、頭を下げていた。
笠原は今朝の枠番抽選で12番、萬は39番を引いていたが、賞典除外により明日の復活戦では6号艇に入る。また、枠番抽選に参加していない山田竜一も6号艇。勝ち上がりがないけれども、大穴をあけて目立ってほしいぞ。
レース後の選手たちは、やはり1~3着と4~6着でハッキリと様子が違う。復活戦からのファイナル進出は可能だとはいえ、やはり勝ち上がれなかった4~6着は、たった1戦で終わってしまったことに対する苦笑いを浮かべる選手が多かった。6Rの澤大介は3着の目もあっただけに、苦笑いが深く、その澤に叩かれてしまった鎌田義、澤のまくりを受け止めようとしてかなわなかった今村豊の3人で、苦笑いを交わし合っている。各レースの4着以下の選手はおおむね、そんな雰囲気だった。今垣光太郎は、準優で敗れた後のような落胆を見せていたが。
勝ち上がりの選手は、どちらかといえば安堵しているという雰囲気。1戦だけで終わらなくてよかった! 1着の選手はともかく、3着の選手に特にそんな色合いが見えた。6Rで澤と3着を競った下條雄太郎が、「セーフ」と両手を広げて笑っていたように、ここで終わらなくてよかったという思いは確実にあっただろう。全員が初めてのシステムだけに、そんな思いになってもおかしくはない。
そんななかで、ただただ会心だったのは、西川昌希だ。「初日は2回乗り有利では?」という記事をアップしたが、西川もそのクチで、前半はたしかにエース機らしいパワーはあったものの、伸び型でイン向きではなかったという。そこで西川は10Rまでに、ベアリングを換えて、ペラもイン仕様に叩き変えたという。つまり、足は前半と後半では違っていたわけで、一般戦の感触を手掛かりにしてトーナメント本番を見据えた調整をしたわけだ。
と、ちょっと待て。「イン向きの足」って、あなたは2号艇だったではないか。そう、西川はハナからインを撮ることを想定していたらしいのである。森高一真がピット離れで遅れ、大回りしてコースを奪いに出たとき、3~4、6号艇も抵抗の素振りを見せていて、それに合わせて西川も動き、結果インを獲ったような形にも見えるが、そうでなくとも西川は獲る気マンマンだった! 昨日「向けるかも」と言っていたのは、本気の言葉だったのだ。やっぱり、この男、スゴい! サイコー! もし予選5~6走だったらここまでしたかと考えると、これもまた一発勝負の醍醐味! やっぱりこういう勝負での西川昌希は、輝きを増すのである。(PHOTO/池上一摩 TEXT/黒須田)