BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――前検の気配

 

 

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 畠山が好評価をくだす17号機を引いた湯川浩司。感触、いいでしょ? 問いかけると湯川は首をひねる。

「いや、そうでもないで」

 あら。期待したほどではなかったか。ただ、こうした反応はよくあることだ。好素性と評判のモーターを引いた選手が、前検で「エース機の動きではない」「思ったほどの動きではない」とコメントするのは珍しいことではない。期待が大きい分、自分の中のハードルが上がっているのか。あるいは、少なくとも数日は動かしていない分、モーターがまだ目覚めていないのか。湯川が示したのは、また別の理由。

「最近、ペラ潰しとるみたいやね」

 というわけで調べてみると、3節前にプロペラ交換が行なわれている。バトルトーナメントで今井美亜を優勝に導いたプロペラが消えているのだ。その後に17号機に乗ったのは水野望美と山ノ内雅人。若手のB級選手、しかも一人は男子とは仕上げ方が違ってくるとも言われる女子選手、まだプロペラが仕上がり切っていない可能性があるということだろう。それでも水野は3勝、山ノ内は2勝しているので、やはり素性は悪くないのだろうが。

 湯川がどう仕上げてくるのか、その気配には日々注目するべきだろう。東京3場で無類の強さを誇る湯川だけに、仕上がれば大暴れ必至である。

 

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 まあ、湯川に限らず、前検の感触は必ずしも明日につながらないものである。と言うと、必死で前検チェックしている畠山には申し訳ないのだが、それはひとつの真理として頭の片隅に入れておくべきである。

 会見があったドリーム組のコメントを聞いても、その一端はうかがえる。たとえば桐生順平。第一声は「悪くないと思う。スタートもなんとなく勘と合っていた」である。なるほど、前検としては合格、という類いのコメントだ。ただし、桐生は今日はペラを触っていない。つまり「前操者のそのまま」で乗っている。そのため「ターン回りが自分好みではない」ということになる。会見後、桐生はさっそくペラ調整所に陣取り、ペラを叩き始めていた。自分の形に叩き変えているのだと思われる。ということは、明日は今日の気配とはまた別のものになっている可能性もある、ということになる。もちろん、さらにパワーアップしていることも考えられるだろう。これは石野貴之も同じで、感触は「可もなく不可もなく」だが、「いつも通り、やれることをすべてやっていく」というから、いきなり明日「可」のほうに振れてくることも考えられる。最近の石野は、序盤いまひとつでも最後に立て直してくることが多いからなあ。篠崎元志は「イメージとはまったく違っていたので、かなり大きく叩き変えます」。したがって、「今日は参考になりませんし、自分もしてません」ということになる。前検とはまるで違う足になるものだと思っていたほうがいいかも。

 

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 で、やはりペラを触らずに乗ったという山崎智也は、「久しぶりに悪くなさそうな手応え」とコメントし、そしてその後もほとんどペラ調整をすることなく、通勤着に着替えてゆったりとしていた。明日は時間がたっぷりあるので、気候などを見て叩いていくことになるだろうが、今日の状態でも行けると判断したなら、まずは1走してみるということもありうる。その場合は、今日の好感触がそのまま維持されるわけだ。まあ、叩いて乗ってみて、ダメならもとに戻すという作業をする時間もたっぷりある明日だから、いずれにしてもかなりいい状態でドリーム戦に登場しそうではある。

 

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 ドリーム組以外の有力選手では、峰竜太が「ズダボロを引いちゃいました」と苦笑いを見せていた。数年前までは、下位モーターを引いても強気に振る舞っていた峰も、最近はわりと素直に語ることが多くなった。まあ、悲壮感はぜんぜんなく、明るく語るんだけどね。それにしても、なんか声がかっさかさですよ、峰くん。

「昨日、真二さんとカラオケに行ったんですよ。もう、リアル徳永英明ですよ!」

 おっ、壊れかけのRadioでも歌いましたか? その勢いで、壊れかけじゃないけど低調モーターを立て直せ。モーターも峰選手ももやもや病にならないように!(徳永さんにはお見舞い申し上げます!)

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 さて、SG初出場となった川野芽唯&滝川真由子だが、初めてのSG前検でも実にキビキビと動いている。多少の緊張感はあって当然だと思うが、雰囲気自体は昨年のチャレンジカップで経験はしているから、戸惑うことはないだろう。前検は9班で、スタート練習はラストとなる。しかしギリギリまで先に終わった班のエンジン吊りにも参加し、「9班乗艇!」のアナウンスを聞いてピットに猛ダッシュ! 9班ということはすなわち新兵ということなので、今節は一節通じてこのような彼女たちの(遠藤エミも含めて)動きを見ることになるだろう。

 

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 で、8班のエンジン吊りが終わったあとに、控室からあらわれて、喫煙所に向かったのは石田政吾。あれ、8班には後輩の松田祐季がいるんだけど……と思っていたら、その松田からそれを指摘していた。大焦りで目を剥く石田。「えっ、うそっ!」。それをたまたま隣で聞いていたのが山崎智也で、いきり立って石田に猛然と追及を始めた。松田は笑って去って行ったけど、智也はなおも石田を攻め立てる。「丁重にお詫びしておきます……」と石田が言うと、智也も含めて周囲は大爆笑となったのだった。いい味出してたぞ、石田政吾。明日の開会式での「ガンバリマス」も楽しみにしております。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)