BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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尼崎オールスターTOPICS 3日目

あるぞ、SG最年長V!

 

 安芸の猛将・西島義則の勢いが止まらない。昨日まで、あの手この手で2着3本。例によってしぶとい実戦足を作り上げ、深い起こしでも自滅することなく丁寧に8点を積み重ねてきた。今日は8R5号艇の一本勝負。西島の予選は全5レースだから、3着以内で早くも準優当確が見えてくる。

 

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 だが、もちろんこの猛者が3着狙いの走りをするわけもない。スタート展示のピットアウトから激しく攻めたて、1号艇の遠藤エミに揺さぶりをかけた。遠藤も立派だった。スタ展で敢然と枠を主張し、本番の待機行動ではさらに早めに動いて西島を牽制した。

「やるわい、小娘め」

 と思ったかどうか、西島はスピードを緩めて2コース水域に構える。折り合った。その分、内2艇はスタ展よりもたっぷりの助走距離を約束された。遠藤が100m起こしで、西島が110m起こし。スリットから3コースの瓜生が飛び出したが、2艇揃ってしっかり伸び返す。そして、遠藤が強めに握って旋回している間に、西島のズッポリ差しが決まった。展開の利もわずかにあったが、凄まじい差しハンドル。ブイを舐めるようにして、180度くるり回ってみせた。うーん、これぞ昔から通のファンを唸らせ続けている「西島の2コース差し」。今日のそれも、微塵の衰えすら感じさせない的確かつ勇猛な鋭角ターンだった。西島、圧勝。2221着で節間勝率は8・50。準優当確どころか、一気に予選トップに躍り出た。

 それにしても、強い。先のびわこマスターズでも、整備力・旋回力ともに他を圧倒する凄みを魅せ続けた。優勝戦のS遅れさえなければ、国士無双の強さと言えただろう。そして、あの心肺停止に陥った悪夢の常滑グラチャンから3年、西島は再び最高峰の舞台に帰ってきた。

 

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「しばらく記念から遠ざかってるんで、今はSG云々で偉そうなことは言えない」

 去年のインタビューで、西島は少しだけ不安そうな顔を見せた。が、同時にこうも言った。

「レース勘さえ取り戻したら、この齢でもまたSGを獲れると思う。獲れます」

 この3日間の走りは、その言葉をまんま証明している。54歳での8度目のSG制覇に、ぐんぐん近づいている。もちろん、明日からが胸突き八丁の正念場、SG常連たちの逆襲も熾烈を極めるだろう。一昨年はミスター今村豊が2連続のSGファイナル1号艇で、ともに菊地孝平に敗れ去ってもいる。ここから先が、真に険しい勝負。そうと知りつつ、私は同い年のオッサンレーサーのSG制覇を信じ、応援するつもりだ。

 

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 この8Rで2着に粘りきった遠藤エミについても、少し触れておこう。西島の激差しを喰ったエミだが、2マークのターンは絶品だった。SG都合ン十冠の面々にせっつかれつつ、それらを一撃で払拭する全速ターン。女子レーサーたちの多くが2マークで着をズルズル落とす中、そのターンはピッカピカに輝いて見えた。「これなら、準優に行ける」と直感させた。明日は3・4号艇で④④条件。前半2Rで②着を獲りきろうものなら、その場で当確ランプが点る。

 が、オールスター4日目の女子の勝負駆けと言えば……去年の小野生奈が記憶に新しい。④⑤条件で、まさかの4着・転覆。そして、エミ自身も去年のメモリアルの④条件でエンスト失格。精神的プレッシャーか、猛者たちの迫力に屈したのか、女子レーサーには「魔の4日目」という悪しきイメージがつきまとう。明日のエミもまた、かなり微妙な条件が残された。去年も書いたことだが、今年こそは「守り」に入ることなく、ピンピンを狙うくらいのつもりでアグレッシブに攻めてほしい。そうすれば、自ずと結果は出るはずだ。

 

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 西島に戻る。明日は12Rの1回走り。1着を獲ればトップ確定か、と言うと、実はそうではない。11Rまでに茅原がピンピンなら、その場で茅原の自力トップが決まる。そして、この12Rは1号艇の篠崎元志がメイチのピン勝負だわ、茅原の結果次第で予選トップの目がある松井繁や峰竜太もいるわで、進入から大乱戦ムードが漂うカードでもある。予選トップ争いはともかく、西島にはハッスルし過ぎることなく、無事に予選のラストランを駆け抜けてもらいたい。(photos/シギー中尾、text/畠山)