BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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桐生メモリアルTOPICS 2日目

 

力と運

 

 

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 昨晩、石野貴之のことを書こうと思ったのだが、2日目の出走表(前夜版)を見て「明日にしよう」と決めた。9R1号艇の1回乗り。きっちり逃げきって、予選トップに立つだろう。そんな予感がしたからだ。

 昨日は何を書きたかったかというと、とにもかくにも超抜のリズム。昨日の3Rは4カド川上剛の絞めまくりにきっちり連動してのマーク差し2着。後半9Rはピット離れで1号艇・笠原亮(離れの悪い代表選手?)を出し抜いてのイン奪取。その利を生かしてきっちり逃げきった。イン絶対有利の近代SGで、この「2号艇でイン逃げ」の価値はめちゃくちゃでかいぞ。

 で、この説明だけだと「単なる展開&強運による1・2着じゃん」と思われるだろうが、実はそうではないのだ。レースを再度振り返ろう。3Rは確かにマーク差し。ただ、川上にまくられた3艇が1マークで団子状態になり、それぞれの艇間はわずかばかり。割り差しは危険とみて大外に舳先を向けてもおかしくない隊列だ。が、石野はその狭い間隙を、エイヤッの気合でぶっ差した。わずかでも躊躇していたら、前が完全に塞がって6着大敗も十分にありえただろう。

 

 

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 続く9レースのイン奪取。1号艇が“離れ遅れの常連”笠原だからして、レース後の私は勝手に「笠原遅れのごっつあんイン」と思い込んでいた。が、笠原本人が「石野の離れが良かった」と漏らしたと聞いて、慌ててリプレイを見直した。確かに、石野の離れだけが突出していた。単なる僥倖ではない、“自力”のイン奪取だったのだ。あと、さらにたたみ掛けるならコンマ07&08の完璧すぎるスタートだな。

 一見、ラッキー連発に見せかけておいて、実は文句なしの自力駆け。つまりは超抜リズムで初日を駆け抜けた石野が、今日の1号艇で負けるわけもなし。指定席のインコースからコンマ11の過不足ないスタートを決めて、危なげなく押しきった。2日間でイン逃げ2本も含め、勝率9・33の暫定トップ。私の石野26号機のパワー評価は「中堅上位」レベルで盤石のV候補とはまだまだ呼べないのだが、この流れ、勢い、リズムは今年2発目のSG制覇があってものったく不思議ではないだろう。

 

金星のはずが……

 

 うむ、今日も書かねばなるまい。暫定トップの石野に続き、遠藤エミが予選2位にランクアップした。うーーーん、やっぱすごいぞ45号機! 今日の7Rは大事なイン戦だったが、スタートで2コースの菊地孝平にきっちり半艇身出し抜かれた。見た目にはかなりヤバイ景色だ。が、スリットから伸び返すわ伸び返すわ。あっという間に舳先を並べ、1マークを豪快にぶん回して先頭に立った。あの伸び返しの行き足は、ちょっと反則級だな。

 

 

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 返す刀で最終12R、今度は2コースからイン山崎智也をズッポリ差しきっての大金星!!?? いや、実は2マークで落としすぎたところを智也に逆襲のツケマイを喰らって2着……なのだが、あの差してからのレース足も反則級だったな。レース後、智也が冷や汗を拭きながら?「ターンして(イン逃げが)普通に決まったと思ったんですけどね」と苦笑い。それほどありえないパワーだった。

 昨日同様、今日のエミも実戦でのミスが目立った。7Rのスタートは菊地が素晴らしすぎたとしても、1マークのターンは握りすぎだったはず(差した艇に軽い玉突き衝突があった)。12Rはもちろん、2マークの落としすぎターン。大事に大事に回ろうとしたのだが、グランプリ2V男はあの落としマイが通用するほど甘くはなかった。おそらくエミ本人も、女子戦では通用する“常識”が、SGではまったく歯が立たない“非常識”だということを痛感しているだろう。3戦のすべてで。今日までのトップ2を比較すると「リズム&実力の石野、パワー&強運のエミ」ってな感じだろうが。あ、もちろん、エミには男子選手を含めてもトップ級のターンスピードがあり、それがこの成績の一部を担ってもいるのだが……3戦ともに、どこかしら危なっかしく見えるエミ。レースっぷりを見るだに「まだまだ頂点には」というネガティブな思いも残るのだが、日々これ勉強。節イチ級のパワーとともに、SGならではの常識をもっともっと学んでもらいたい。

 

 

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 最後に……昨日まで思いっきり持ち上げてきた濱野谷憲吾40号機だが、今日は明らかに変調をきたしていた。スリット付近の行き足が少なく見積もっても5割引き。一撃でKOするようなパンチ力は影を潜めた。それが天候の影響なのか、整備(昼間からペラを叩いたらしく、何度も試運転を繰り返していた)の影響なのかはわからない。とにかく、明日以降の憲吾40号機がどうなるのか、まったく予断を許さない状況になったとお伝えしておく。(photos/シギー中尾、text/畠山)