BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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常滑ヤングダービー 優勝戦私的回顧

火事場のインモンキー

 

 

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12R優勝戦

①松田大志郎(福岡)23

②篠崎仁志(福岡) 18

③桐生順平(埼玉) 17

④岡崎恭裕(福岡) 17

⑤宮地元輝(佐賀) 11

⑥丸野一樹(滋賀) 17

 

 おめでとう、大志郎! 一昨年、26歳で臨んだ第1回ヤングダービーはあえなく予選落ち、去年はF2持ちで準優進出(4着)、3度目の挑戦で20代の頂点&記念初制覇を成し遂げた。努力家の大志郎らしいワンステップアップの栄冠だった。

 

 

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 レース自体は楽勝にはほど遠い、本人もファンも肝を冷やすものだった。スタートはコンマ23。スリットの手前でスタンドの誰かが「1が遅れた!!」と叫び、同時に悲鳴にも似た声があちこちから飛び交った。

 スリット通過。篠崎が半艇身近く出し抜いている。さらに5コースの宮地との差は1艇身近い。絶体絶命の隊形に見えた。あれほどスタートをバチバチ決めてきた大志郎だったが、さすがに記念ファイナル1号艇のプレッシャーがあったか。

 

 

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 ただ、先攻めの権利を有する2コースの仁志にとっても、悩ましい隊形だったはずだ。楽にまくりきるほどのアドバンテージではなく、待って差せば仕掛けが遅くなる。ややもたれかかるように内に艇を寄せた瞬間、3コースの桐生が先に動いた。全速の強ツケマイ。さすがの判断の早さ。SGのトップレベルならではの、見る前に飛ぶターン。一撃で決まっても不思議のない強襲だったが、大志郎も完璧なインモンキーで応戦し、間一髪で桐生の引き波から逃げきった。1号艇のプレッシャー、スリットで後手を踏んだ焦り、マイシロのないやや強引な先マイ……そんなこんなの中で、よくぞあれだけ絶妙なハンドルを入れきったものだ。桐生をして「松田君のターンが素晴らしかった」と脱帽せしめる会心の1マークだった。

 

 

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 大志郎のGI初制覇のゴールに、ガッツポーズはなかった。それも、らしい光景だと思った。本人と話したことはないが、シャイで寡黙で生真面目で律儀で九州男児らしい男臭い若者。それが私の抱いている大志郎像だ。もっと言うなら昭和の職人みたいな古風なイメージもある。不言実行、田頭実のような頑固で度胸満点なレーサーになってほしい、とも。GI制覇でもまったく浮かれた様子のない大志郎を見て、ますますその意を強くした。

 さて、これからだ。この勝利で、ここ半年の大志郎の視界は大きく開けた。大村チャレンジカップを射程圏に入れ、来年のクラシックの権利も手に入れた。クラシック。去年の尼崎で6を並べた屈辱のSGデビューシリーズ(優勝は桐生だ)。その悔しさがさらなる精進の原動力になっているはずで、来年の児島でのリベンジマッチが大いに楽しみになった。

 やまと学校時代、同期の西川昌希とともに落ちこぼれのレッテルを貼られていた大志郎。動の西川、静の大志郎。そんなイメージを勝手に抱いてるのだが、今後も同期と切磋琢磨して水面では大いに暴れてもらいたい。まあ、できるだけ余計な感じのフライングは切らないように……ね(笑)。

(photos/シギー中尾、text/畠山)