まったくもって、今日はおかしな気候だった。ピットの寒暖計を見たら……21℃!? グランプリの住之江ピットといえば、ひたすら寒さに震えるというのが相場なのに、ありえない気温だ。それもあってか、ペラ室からはかなり大きな打突音が響いていた。下條雄太郎がかなり強めにハンマーを打ち下ろしている姿も見かけている。調整の難しい一日だったのは間違いない。
後半レースのメンバーたちも、調整にかなり忙しそうな様子を見せている選手が何人もいた。何度も係留所とペラ室を走って往復していたのは茅原悠紀。住之江はそもそもピットが広いから、駆け足で移動する選手は数多く見かけるが、茅原のそれはまさに全力疾走。プロ野球の選手ならトリプルスリーを達成できるかと思える、迫力ある走りだった。
で、明日は気温が一気に下がる予報なのである。いやはや、選手たちは大変だ。明日はまた調整をやり直さなければならないかもしれないのである。それもあってか、今日は1便出発後にも居残るシリーズ組は多かった。辻栄蔵の様子を覗きに行ったら、シリーズ出走組の姿が鈴なり。9Rを走った濱野谷憲吾にしても、1便で帰ろうと思えば帰れるはずなのに、最後まで残ってペラを叩いた。このところSGでは目立った活躍を見せられていないけれども、濱野谷は本当に熱心に調整をする。それで外すこともあるのかもしれないが、しかし決して努力をやめようとしないし、今日のように居残り調整をすることもあるわけである。明日は6号艇での勝負駆けだが、この作業が奏功するだろうか。
シリーズ復活戦。これが大穴になった。魚谷智之のまくりに乗った重成一人が、5コースから差し切ったのだ。会心の一撃が出るのが一日遅かった……。しかし、1st敗退の鬱憤を晴らす一撃とはなっただろう。レース後の重成は決して表情を緩めるわけではなかったが、絶好の展開が向いてきたこともあっただろう、顔つきは非常に明るかった。1st敗退からリズムに乗れず、シリーズで準優に乗れなかった1st組は去年も一昨年もいた。これはかなり大きな屈辱ではあるまいか。重成は前半4着で、大きな着を並べるかたちになっていただけに、この1着巻き返しは大きい。これで勢いに乗って、明日の勝負駆けをしっかりクリアしたいところだ。
白井英治は、逆に1号艇を取りこぼすという不本意な結果。レース後は眉間にぐっとシワを寄せる、いつもの敗戦後の表情を見せている。ただ、当たり前かもしれないが、昨日の敗戦に比べれば、悲壮感は少ない。昨日が6号艇で3着、今日が1号艇で3着、同じ着順なのだが、本来はより悔しいであろうと思われる1号艇での敗戦よりも、外枠であろうともトライアルでの敗戦のほうが痛いわけである。まあ、今日の結果で白井はシリーズ予選2位につけることとなった。こうなったら2つめのタイトルを狙ってしまおう。明日は外枠デーではあるが、ポイントアップを期す一日となるだろう。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)