BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット@シリーズ――気温急降下

 

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 気候一変。昨日はあれほど暖かかったピットだったが、今日は風の冷たさが身にしみる。といっても、寒暖計の示す12・9℃は、いつものグランプリなら暖かいほうである。今日は風が強い。これが体感温度をぐっと下げる。我々は寒い寒いと口にしていれば済むが、選手はそうはいかない。体感温度なんてどうでもよく、この気温下降がもたらす機力の変動に気を配らなければならないのだから、重大事なのだ。

 というわけで、プロペラ調整室は人口密度をぐっと濃くする。寒風を切り裂いて試運転に励む選手も多い。選手のコメントによくある「気候に合わせて」というのは、つまり調整に忙しくなるという意味にもなる。グランプリ組もシリーズ組も、変わってくる機力に対応しようと必死だ。予選暫定トップの丸岡正典も、プロペラ室に姿があった。出番は3R。レースまでにできる限り合わせようと必死の様子だった。

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 もっとも、体感温度の冷たさは、選手にとっても大変である。2R発売中に森高一真がいったんペラ調整を切り上げて、係留所につけてあったボートに向かった。プロペラを装着して、試運転の準備である。さあ、このときだ。プロペラは金属。プロペラをつける箇所は、水中に浸かっている。モーターを持ち上げて、プロペラ装着。これ、冷たいでしょう。かじかむ手で慎重にプロペラを装着する間にも、風は容赦なく吹き付けてさらに手を冷やす。工具も金属だから、もちろん冷たい。というわけで、装着を終えて控室にいったん引き揚げる際には、両手をこすり合わせて、身を縮めるのだった。

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 1R、中野次郎が逃げ切った。ここまではゴンロク。絶好枠でなんとか気を吐いた。予選突破は望むべくもないが、やはり1着は精神安定剤にもなりうる。次郎のレース後の表情は明るく、寒さを忘れさせる爽やかさがあった。

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 一方、深刻な表情に見えたのは毒島誠。ここは4着で、どうにも消化不良のレースが続く。レースを終えてボートを引き上げた毒島は、艇首を引いて空いているスペースを探す桐生順平に、整備室のほうへ運んでほしいと指示を出した。整備室入り口脇にスペースを見つけた桐生はそこに向かってボートを引き、他の関東勢も後を追う。毒島がここを選んだのは、着替えを終えるや否やギアケース調整を始めたから。その動きは実に俊敏で、2R発売中には調整を終えて、ふたたびギアケースを装着している。後半は6Rで時間に余裕がなく、それもあっての速攻調整であったか。予選突破は厳しくなってきたとはいえ、このまま終わるわけにはいかないのだ。そんな毒島は、きっと寒さなど少しも感じずに、調整に集中しているはずだ。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)