BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――経験値というアドバンテージ

 

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 平山智加がSGジャンパーを着用していた。つい一昨日までSG参戦していた選手が4人もいる今節だが、その4人は着ていない(というか、住之江でもこの4人は着ていなかった)。ここ何年かではもっともSGの舞台で揉まれてきたのが平山智加。そのプライドのようなものがSGジャンパーを着させるのか。……なーんていうのは深読みであって、たいがいは特に意味がなかったりするもの。SGジャンパーは風を通しにくくて暖かいらしいから、寒さ対策だったりすることもある。ただ言えるのは、このジャンパーを所有しているということは選手としての誇りであると同時に、レベルの高いところで走った経験の証しである。それはこういう場ではアドバンテージになると思う。

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 実際、松本晶恵は一昨日までの経験でひとつの覚醒があったようだ。初めて体験したSGの舞台で、松本はSG戦士たちとSGの戦いを繰り広げた。水神祭は大きな自信となったようだが、それ以上に「自分はまだまだだ」と思い知らされ、それが逆に自分に伸びしろがあるということを実感させるものになったという。「レースに対する考え方も、もっとストイックに取り組んでいきたいと思った」という、その発想自体が松本をパワーアップさせているのだ。SGからここに転戦してきたことが、間違いなく松本にアドバンテージを与えている。

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 小野生奈は、SGは何度か体験していたが、グランプリの舞台を目の当たりにするのは初めてだった。そして、尊敬する先輩のグランプリ制覇を目の前で見た。非常に感動したそうだが、これもまたデカいだろう。自分がグランプリに出るというのはまだ現実味はないはずだが、しかしグランプリを肌で実感し、しかも身近な存在が栄光に浴する瞬間に立ち会えたことは、小野のテンションを上げたはずだ。実質中0日の過酷な転戦で疲労がないわけはないが、しかし気持ちはむしろアゲているはず。今日もいつも通り元気いっぱいの小野生奈だったが、その元気の質はより濃くなっているはずである。

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 海野ゆかりがレディースチャンピオンなどに比べてかなりリラックスしている感じに見えたが、これもSG効果か? 海野が津でも時に見せていた鋭い視線は実にカッコよく、また魅力的だが、今日のような笑顔が多い海野もまた素敵である。会見でもなんだかゴキゲンに見えたなあ。相棒の33号機を「ミミちゃん」とか言ってたし(笑)。時に眉間にシワを寄せ、言葉を選んで口にすることもある、ってのが海野の会見のイメージなのだが、今日はまったく正反対で、見たことのない海野ゆかりがそこにいるのだった。「点数(勝率)は私がいちばん持ってないかもしれないけど、一発はいちばんあります」とにこやかに言ったりするんだもんなあ。SGのヒリヒリした舞台から来たからこうなるのか、なんて考えたりした次第なのであった。もちろん、これは海野にとってポジティブなことだと思う。

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 山川美由紀は、会見で経験値が豊富であることを振られ、「モーターボートは経験値だけでは勝てないですから」と言った。それはもちろんその通り。女子戦を長く支えてきた山川が言うのだから、なお間違いはない。ただ、クイーンズクライマックス皆勤賞が日高逸子、寺田千恵のみという点に、やはり経験値の重さを感じざるをえない(山川も、一昨年のケガによる長期離脱がなければ皆勤賞だったはず)。今年のクイクラには100期台が4人、90期台も4人と、女子戦での若手の台頭は著しい。そんななかで、山川、寺田、日高が女子最高峰にしっかりと名を連ねるのは、経験値のアドバンテージの大きさを象徴しているとも言えるはずである。どんなに若手がスピードで世代交代を迫っても、彼女たちの経験値は確実に武器になる。短期決戦ならなおさらだろう。

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 そんななかで、クイクラ初出場、SG経験もない樋口由加里、SG経験一節の竹井奈美がどう戦うかにも注目したい。まずは怯まずぶつかっていってほしいぞ。樋口は機力的に厳しいようで、まずは相棒のパワーアップが喫緊の課題。竹井は明日の初戦、外枠に日高先輩と山川先輩がいて、進入から怯まずに戦えるかどうかだろう。この特別な舞台は経験値アップにつながるが、しかしここには経験値を上げるために来ているわけではない。山川が言う通り経験値が勝敗を決するわけではないし、樋口や竹井がたとえば外から果敢に勝ち切れば舟券の配当も美味しいし(笑)、恐れることのない戦いを期待したい。

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<シリーズ組>

 クイクラ前年度覇者・川野芽唯はどんな思いでシリーズを戦うのか、がクイクラ組が合流する今日は気になっていたわけだが、まあ一言で言って、いつもと変わらず、だ。予想通りといえばそうだし、たとえ格の低いレースであってもモチベーションを下げずに戦える選手こそ強いのだと思う。12Rは1号艇での出走だったが、展示から戻ってきたあとには笑顔も見えていて、リラックスした雰囲気はある。その点は昨年とは違うのかもしれないが、妙なテンションダウンなく戦えていることはたしかだろう。

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 地元開催のクイクラに何としても出たかったはずの平田さやかも、腐ることなく懸命に調整作業をしている。クイクラであれ、シリーズであれ、地元水面で恥ずかしいレースはしたくないというのが道理であって、これもまあ、当たり前のことではあるが。注目度の差はどうしたってぬぐえないクイクラとシリーズだが、平田には平和島全体の盛り上げ役になってもらわねば困る。遅くまでペラ調整を粘って続けていた平田にエールを送りたい。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)