BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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宮島レディースオールスターTOPICS 2日目

BEAUTY WINGS

 

 今日のMVPは後藤美翼で決まりっ!! 4Rの美翼は4カドからコンマ08と踏み込んだが、スロー3艇もコンマ05~08でスリット横一線。そこからだ。ダッシュの利で半艇身ほど覗いた美翼は、迷うことなく内3艇を絞め込んだ。グイグイ絞め込んで、そのまま叩き潰した。まさに「叩き潰した」という表現がぴったりの強引な絞めまくり、圧勝。最近の女子戦で、こんなにバイオレントな強襲はあまり見ないぞ。スロー3艇は玉突き・壊滅状態で、しかも5コース遠藤エミがその玉突きに巻き込まれたため、3連単4-6-2は300倍を超える大穴となった。

 

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 次はいつ書けるかわからないので、ちょっとした想い出話を記しておこう。後藤美翼にはじめて会ったのは、7年ほど前のやまと学校の食堂だ。BOATBoyの「やまと学校体験記」みたいな企画で行ったのだが、取材班に気づいた美翼はツカツカと駆けつけて元気一杯に自己紹介した。、

「東京の後藤美翼と申します。よろしくお願いします!!」

 お、この子が翔之の妹か。思っていると、美翼は人懐っこい笑顔で食堂の壁に貼られた紙を指さした。それは、当時の鬼教官が打ち込んだ訓練の成績表だった。優秀な生徒から順番に、上から下へ。しかも、トップの生徒の文字はめちゃくちゃでかく、下に行くに従って少しずつ小さくなっていく。美翼が指さしたのは、いちばん下。誇張ではなく、虫眼鏡で見ないとそれとわからないほど小さな文字で「後藤美翼」っぽい塊が並んでいた。

「こんな成績ですけど、元気だけが取り柄なので頑張ります!」

 悪びれることなく、美翼はそんなような言葉を大声で言った。一点の曇りもない笑顔が印象的だった。

 

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 翌日の昼、私はまったく正反対の美翼の顔を目撃する。他の108期生が水上で訓練する中、美翼だけが校舎の片隅で泣いていた。声もかけられないほど激しく、肩を揺らして泣きじゃくっていた。

「後藤訓練生、後藤訓練生、事務室まで」

 校内にアナウンスが流れ、美翼は泣きじゃくったまま走って事務室へと向かって行った。なにか不祥事でも起こしたのか、と思ったが、そうではなかった。病気だか怪我だか(たしか突然の病気発覚だったと思う)で、長期療養=退学の可能性が高い。学校の関係者からそう聞かされた。何度も何度も同じアナウンスがかかり、そのたび美翼は泣きながら自室と事務所を往復し続けていた。泣き止むことがなかった。一点の曇りもないクシャクシャの笑顔から、一夜にしてぐちゃぐちゃの泣き顔へ。そのギャップがあまりにも激しすぎて、私はただぼんやり立ち尽くして美翼の後ろ姿を見つめていた。

 

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「後藤美翼、帰郷したよ。108期はもうアウトだと思う」

 後日、関係者からそんな話を聞いた。笑顔と泣き顔がいっぺんに浮かんだ。

 その1年後……私は同じやまと学校で美翼と再会した。109期の卒業式典、美翼は兄の後藤隼之とともにクシャクシャの笑顔を振りまいていた。

「ちょっと遠回りしましたけど、その分だけ強くなれた気がします!」

 笑って、泣いて、また笑って。私が美翼と接したのはこの“3日間”だけだが、妙に忘れられない選手(訓練生)として脳裏に焼きついている。

 

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 うむ、なんだかセンチな回想記になってしまったが、「108期」のとびっきりの劣等生が7年後に女子レーサーの祭典(GⅡ)で4カド絞めまくり。その峻烈な光景を眺めていたら、ついつい書きたくなってしまった。今節の美翼はと言えば、この1着で予選8・00の第7位。6・4号艇でのこの成績は大いに胸を張っていい。いや、それどころか、この記事が実は“非常識なフライング”で、「優勝戦までとっときゃよかった~」なんてことになったりして? うーん、さすがにそこまでのシンデレラ・ストーリーは難しいと思うのだが……。(TEXT/畠山、PHOTOS/シギー中尾)