BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

頑張れ48歳!

 

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 今日のところは、どうしても“若手”たちに目を奪われてしまった。たとえば福田雅一が、モーター架台をボートリフトにせっせと運んでいる。毎年、本来ならばベテランである選手が新兵作業をしている姿は見てきているわけで、その都度その都度、新鮮な思いでそれを眺めるわけなのだが、今年は僕の“同級生”がやっているわけである。ということは、もし僕がボートレーサーで、今年マスターズに出ていたら……そうか、俺もやっているわけか、この仕事を……などとつい、じんわり見入ってしまった次第なのである。

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 ボートレースの世界では、登番が上下関係を決める。つまり、期が上であれば、たとえ年が下であっても先輩。今節の新兵は福田らの69期、山一鉄也らの68期で、昨年マスターズデビューだった山一も昨年に引き続き、新兵作業に勤しんでいる。

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 ということは、マスターズデビューである市川哲也は、福田や僕と“同級生”であっても、新兵ではないということになる。だから、市川はモーター架台運びには加わっておらず、ひたすらペラ調整に没頭していた。ちなみに、“同級生”で最も登番が上の選手は、3285。キャリア10年以上のファンならSGでしょっちゅう見た登番のはずで、そうです、かの植木通彦であります(現役だったら今年マスターズデビュー! ちなみに選手会長でなければ上瀧和則もデビュー年)。そうか、もし不死鳥と同期だったら、俺は別に新兵仕事してないのか……などと、市川の懸命の作業を見ながら考えた次第。つーか、今日のワタシはピットで変てこな妄想にふけっていたわけですな。取材しろよ。

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 モーター架台運びをしていた新兵はほかに、高橋勲、長溝一生。高橋は昨年も同様の姿を見かけていた。長溝は今年デビューなので、やはり“同級生”。長溝はニコニコ顔で、1期上の大場敏にモーター架台参加を強要していた(笑)。まあ、市川も含めて、66期、67期あたりは“若手”には違いないわけで、どこかで市川や大場、あと乙津康志あたりが心配仕事に飛び回っている可能性はあるな。あ、あとモーター架台運びをしていた選手に、日高逸子がいたこともお伝えしておきます。

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 “同級生”で登番が少し上の選手には、渡邉睦弘がいる。渡邉は今年の関東地区選で優出するなど、ここ1年ほどは好調モードを維持しているが、なんとこれまでにGⅠ参戦は3節。それもすべて、関東地区選なのだ。地区選以外のGⅠは今回が初で、それがプレミアムGⅠ。48歳にして、ここまで多くの報道陣が集結しているピットは初体験であろう。ということもあるのだろう、なんとなく動きがぎこちないように見える。この写真は僕が撮影したものだが、明らかにレンズが向けられているのに気づいていて、この前の何カットかはレンズをちょいちょいチラ見している。で、気まずそうに小さく小さく会釈したりもしているのだ。プロのカメラマンもたくさんいるし、中継スタッフも山ほどいるし、この場での振る舞い方に戸惑っている雰囲気があるわけだが、ここでおおいに名前を売って、この舞台にいるのが当たり前の選手となってほしいワタシである。頑張れ、同級生!

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 とまあ、“若手”にばかり肩入れしていてもいかんので、今節の主役候補筆頭となるドリーム組。西島義則は、6班のスタート特訓&タイム測定の頃には、すでに通勤着に着替えていた。今日の作業はすべて終わった、ということだ。もともと仕事の早い人ではあるが、もし前検で不満が多ければいきなり本体を割ることもあるし、ギリギリまで作業をしていたはず。すなわち、前検は好感触だった、という証が通勤着姿なのだ。昨年は優勝戦1号艇で唇を噛む結果となっているだけに、雪辱への視界は良好と言っていいだろう。

 会見で気になったのは、コースを問われて少し歯切れが悪くなったことだ。コメントとしては「ピット離れで遅れなかったら2コース」なのだが、語調はスムーズさを欠いた。前付けも頭にあるんじゃないの? 僕は咄嗟にそう思ったのだがどうだろう。そもそも、西島らしいコメントではないですよね。まあ、実際に2コースが濃厚と僕も思うが、スタート展示からちょっと注目してみたくなる西島の雰囲気である。

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 西山昇一については、「どんなレースをイメージしているか」という質問に対する返答から、少し面白い展開になった。

「この年なので、イメージも何もないですね。その場に行ってみて、体が動くかどうかですから。(進入は)まあ、一節通して背番号通りじゃないですか。(津との相性は)特にないですね。というか、ここが得意とか不得意とか作らないようにしていますから。(今節の目標は)今節というか、今月いっぱい、無事故完走です」

 え、どこが面白いのかって? 僕も聞きながら、なにも言っていないのと同じだよなあ、なんて思っていた。そしたら、西山が苦笑いしながら言ったのだ。

「これじゃあコメントになってないですよね」

 ダッハハ! 自覚してましたか。面白いというのは、西山がこんなふうに自分にツッコミを入れたり、笑ったりするのを見たのは初めてだったということだ。

「でも、本心を言っているんです。僕は、目標はほとんどの場合ないんですよ。今節も仕事だから来た、って感じで」

 派手さはなくても、実直愚直。そんな生き方を貫いて、50代半ばにしてピークを迎えたかと思わせるほどの強さを見せつけるにいたったわけだ。こんな男の優勝、ちょっと見たくなってきたな。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)