春場所が行なわれている大相撲さながらの、ド迫力の取組がピットで実現! 美祢豊対讃岐森だ! 激しい差し合いからお互いを突き放し、そして呵々大笑……って、じゃれてただけですか、そうですか。エンジン吊りを待つ間、今村豊と森高一真が相撲のように激しくじゃれ合う光景なのでありました。来月には56歳になるレジェンドが年下の後輩とまるで垣根なく、上下もなく絡んでいる。このあたりも今村の若さの秘訣でしょうかね。ニュージェネあたりとも同じようにじゃれ合ったりしているのだから、さすがというしかありません。
2R、出走待機室でレース観戦しようという選手たちが椅子を埋めていく。平本真之もその一人で、待機室に入っていくと、すでに6つある椅子がすべて埋まっているではないか! うーん、どうしようと悩む平本。すると下條雄太郎が腰をすーっと浮かせた。平本が下條の座っていた椅子に腰掛ける。ただし、半分スペースを空けて。その空いたスペースに下條が腰を下ろす。待機室の椅子はゆったりサイズだから、小柄な選手はギリギリ2人で使えるのですね。それにしても、仲のいい同期生よ。二人は体を密着させたまま、2Rのゴールまで見続けたのでありました。
ペラ調整をいったん切り上げた山崎智也が、はるか遠くに岡崎恭裕を発見。手で何かの合図を送ると、岡崎も智也のほうに歩み出し、二人は装着場の真ん中あたりで合流した。微笑なども浮かべながら語り合う二人は、その間ずっと、左の手のひらを上に向けて右手で線を引いたり、叩いたり、指差したりしている。これ、おそらく手のひらをプロペラに見立ててるんでしょうね。このあたりをこう叩いて、ピッチをこうして、みたいな。選手は手をボートに見立てて、展開について話したり、足合わせの感触を話したりしているが、プロペラに見立てている様子はあまり見たことがありません。もしそばで話を聞いていたとしても、僕にはまったく理解できなかっただろうなあ。仲のいい智也と岡崎だけに通じる話もきっとあったことだろう。
湯川浩司と峰竜太が、ニッコニコ顔で話している姿もあった。二人は足合わせをしていたようで、峰はボートを陸に上げ、湯川は係留所でプロペラを外して装着場に上がってきて、そのタイミングがどんぴしゃだったから、すぐに会話は始まった。この二人の絡みはあまり見たことがなかったが、太田和美がよく峰をイジっていて、その縁で大阪支部の選手が峰に絡んでいる様子はたまに見かける。峰も人懐こい性格だから、大阪の先輩たちにもかわいがられているのだろう。そんな様子が伝わってくる、湯川と峰の表情だ。まあ、二人とも感触は悪くなかったということでもあるんでしょうけど。
というわけで、水面では敵でも、陸では仲良きことは美しきかな。などと書いていたら、今目の前で、篠崎元志と仁志が足合わせをしていました。この兄弟も仲いいもんなあ。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)