1Rのスタート展示前から、選手たちは慌ただしい時間を過ごしていた。プロペラ調整所は人口密度が高く、ここから試運転に向かう選手がいると一時的にスペースはできるのだが、すぐにまた別の選手が調整を始めて、賑わいは途切れることがない。やはり初日は、すべての選手が忙しそうだ。
松井繁が展示前にボートを水面に下ろしたのには驚いた。ドリーム選手インタビューからピットに戻り、さほど時間が経たないうちに動き出したのだ。1R展示の頃にはドリーム組のボートがずらりと装着場にあるのは珍しいことではないだけに、王者がさっそく動いたことにはさまざまな意味がありそうだった。松井のすぐあとには井口佳典も着水。こちらに会釈してくる表情は柔らかかったが、すでに気合が注入されている様子がうかがえた。
菊地孝平も、早くも闘志に点火したようだ。深く考え込むかのような表情は、IQレーサー菊地の“脳内コンピュータフル回転モード”だ。初日の朝からこの菊地を見ることになろうとは。今日の菊地は12Rまでの長い時間、この表情で過ごすことになるだろう。ドリーム戦を万全で迎えるために。
そうそう、峰竜太もかなり入り込んでいる様子だった。昨日など、「出てますよ~」と嬉しそうに声をかけてきたのに、今日は目の前を通り過ぎているのに気づかない。3R出走とレースの時間帯が近かったせいもあるだろうが、集中したときの峰はいつもこうなのだ。……と書いている最中に3Rが発走、コーナーコーナーで果敢なアタックを見せたものの5着。今節はブリンカーかけて作業する時間が増えそうだぞ。
さて1R。オープニングを制したのは茅原悠紀だ。きっちりと逃げ切って、幸先のいい1勝。レース後は吉田拡郎とレースを振り返り合い、爽快な笑みがこぼれていた。
一方、森高一真がいったんは2番手争いも、結果は4着。レース前、こちらの顔を見るや険しい顔をして「エンジンが動いてないわ」と愚痴った。それでも1マークは握って攻め、2番手争いの見せ場は作ったのだが、それは森高にとっては慰めにもならない。ピットに戻るや露骨に顔をしかめ、エンジン吊りの最中にはカウルに両肘をついて、がっくりとうなだれた。10Rまでに少しでも立て直しができるか。(黒須田)
1Rのレース後、遠藤エミと守田俊介が反省会。守田先輩がエールとアドバイスを送っていたようです。
操縦席に立ち上がってモーターを見下ろす谷村一哉。装着状況のチェックなのだろうが、こんな光景は初めて見たぞ。
鳴門ピットのスリット写真はデジタル化されてモニターでチェックできる。朝のスタート特訓の写真を、手元のタブレットを操作して呼び出している平本真之。右のモニターではスタート展示と本番レースのスリット写真が見られる。