BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――調整は進む

 

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 10時10分頃、1Rスタート展示を15分後に控えた時間帯にピットに入ると、装着場は閑散としていた。選手の姿も見られず、最初に見たのはスタート展示の準備に向かう井口佳典。タイミング的に緊張感が伝わってくる表情で、静かに待機室へと歩いていった。

 みなゆったりと過ごしているのか、というと、もちろんそうではない。井口の後をそーっと追って、係留所を覗き込んでみると、ボートがずらーっと並んでいる。調整作業をしている選手も何人かいて、むしろ誰もが作業に追われている感じだ。

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 装着場に戻って隅のほうに陣取っていると、やがて係留所から次々に選手があらわれる。手にペラを持っている選手もいれば、手ぶらで整備室あるいは控室へと消えていく選手も。いずれも真剣極まりない表情で、調整の方向性を思案している雰囲気だ。桐生順平は、いつもなら丁寧に挨拶してくれる気持ちのいい選手だが、当初はこちらに気づいていなかったのか、また考え事が途切れていなかったのか、頭をちょこんと下げるだけですれ違っていった。気持ちはレース、もしくは調整に一直線なのだ。

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 整備室を覗くと、案の定、今朝もペラ調整所は人口密度が高い。微調整くらいの選手が多いのか、それほど大きな金属音は聞こえてこないけれども、カンカンと高い音は常に整備室内に響いている。ひとり、守田俊介がかなり強く叩いた瞬間があって、今日は昨日に比べて湿度が高くなっていることを思い出させられる。風も追い風に変わり、もろもろと模索している選手もいるだろう。

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 リードバルブ調整を始めたのは、魚谷智之。調整用のテーブルで、鋭い顔つきで作業をしていた。そこにJLC解説者の池上哲二さんが歩み寄ると、魚谷の頬が少しだけ緩む。池上さんと会話を交わしながらも、魚谷は作業の手を止めることはなかった。さらに芝田浩治もやってきて声をかけていたが、言葉を返しながらも、調整は進んでいくのだった。

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 昨日、マンシュウを叩き出した谷村一哉は、ギアケース調整。1Rスタート展示の頃に装着し、発売中になってボートを水面に下ろしている。とはいえ、ものの数分で戻ってきて、ふたたびギアケースを取り外した。試運転をしての感触で、やり直したということだろう。整備して、乗って、また整備して、乗って……という手間のかかることを、このクラスはまず厭うことはない。こうした繰り返し、積み重ねがSG戦士を作り上げる部分は確実にあると思う。

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 本体整備をしたらしい寺田祥も、谷村と同じタイミングで着水し、ほぼ同じタイミングでピットに戻っている。装着場では谷村と笑顔で言葉を交わす。同支部の1期違い、は先輩後輩でありながら、盟友という関係性のほうが正確であろう。心安く話せる仲だ。それにしても、寺田の表情がやけに柔らかかった。整備が当たったか? 今日は12R1回乗り。走りっぷりに注目しよう。

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 さてさて、1Rは服部幸男がイン粘る山口剛を振り切って1着。レース後は静岡の後輩たちに囲まれて、ゴキゲンな微笑を浮かべていた。そのなかで、何度か「出足、出足」という言葉が聞こえてきた。どうやら、伸びは悪くないが、出足がもう少し欲しい、ということのようだ。今日はこの1回乗りの服部、午後にかけて出足を上向かせるべく、ペラと向き合い続けるはずだ。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)