BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――暑さになど負けるわけがない

 

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 試運転をいったん切り上げ、プロペラを外して調整室へと歩み出した松田大志郎が、こちらに気づいてペコリと頭を下げる。おはようございますと口にしながら、松田の顔面からは汗がポタポタと垂れていた。文字通りの汗だく! 曇り空だった昼頃はまだ涼しかったが、陽が出始めたとたんに気温は上昇。ピットは、立っているだけで汗がじんわりと滲む暑さとなっている。そんななかで選手は、今節1走目を満足いく戦いにするべく奔走する。流れ落ちる汗など意に介することなく、陸でも水面でも走り回っているのだ。

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 あの王者でさえ、とにかく駆ける。1R発売前からプロペラ調整に没頭した松井繁は、すっくと立ち上がり、ペラ調整室を出るや走り出した。ボートはボートリフト近くの屋外に置かれていて、そこまではものの20mあるかないかというところだが、その間を走ったのだ。ペラを装着し、ハンドルとモーターをつなぐワイヤーもチェックして、松井はカポックを着込んだ。そのとき、徳増秀樹が水面に出ようとリフトに乗り込んでおり、それを見た王者は「待ってぇ~~!」と声をかけて、大急ぎでボートをリフトに乗せた。とにかく走り回っていたのだ。

 というわけで、夏になるたび、暑サニモ負ケズ、駆けまわる選手たちにリスペクトの念は生まれる。アロハ一枚でうろちょろしている僕がアチーとか言っているわけにはいかないのだ。

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 そうしたなかで、丁寧な調整が目立ったのが森高一真だ。ドリーム1回乗りの森高は、たっぷりと時間があるのを利して、リードバルブ、ギアケースとひと通りの作業をじっくりとしていた。SGではドリームに乗る機会が多いわけではない森高だが、だから初日の朝からこうした整備の姿はあまり見かけたことはない。地元戦ということもあり、とにかくやれることは一片のやり残しもなくやり尽くそうという強い気持ちが垣間見える。と言っても、肩に力が入った様子は見られない。リードバルブの調整中も、近くを通りかかった井口佳典や、目の前に座り込んだ萩原秀人と談笑する場面もあった。雰囲気はいいと思う。

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 その萩原秀人が余裕綽綽な感じだったのも印象深い。森高の前に座り込んで、しかし自身はバルブの調整をしているというわけではない。ようするに、なにもしていないのだ。単に1期上の先輩と話し込んでいるだけにも見える。ボートを見ると、ペラは装着されたまま。10R1回乗りだから慌てて調整をする必要もないのだろうが、大きなことをせずとも戦えると判断しているのだとすれば、これは怖い。10Rの萩原には注目しておこう。

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 さてさて1R、中田竜太がオープニングレースを飾った。前回の丸亀の記念レースは4月の周年記念で、フィナーレは中田がイン逃げで優勝。そして今回の記念レース=オーシャンカップの初日1Rは中田のイン逃げ。3カ月越しで丸亀の記念レースは中田の連続イン逃げ、ということになる。まあ、だから何だというわけではないけど。まずは幸先いい初戦を終えて、中田の顔は明るかった。童顔がきらりと輝いていた。

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 一方、結果を出せなかった峰竜太、笠原亮、茅原悠紀はいずれも顔をしかめている。それも僕に向かって。着替えを終えてピットにあらわれた峰は、こちらの顔を見るや、悔しそうに顔を歪めて、そのま過ぎ去っていった。笠原も、こちらを見つけて思い切り渋面を作って、さらに首を振る。2Rをモニター観戦していたときには、笠原は一瞬だけ隣に来て、1マークを見終えるとすぐさまペラ調整に戻っていったりもした。足色にまったく満足していないようだ。茅原は、こちらの顔を見るや「悔っやしい~っ! めっちゃ悔しい!」と声をあげている。初戦シンガリの最悪発進に、茅原はストレートな悔しがり方をしてみせたわけだ。それぞれがまっすぐに心中を表にあらわした、という光景。初日1Rからアツイ!(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)

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 こういうシーンを見ると、私と同世代、それより上の世代の方は、まず「Gメン」と言うと思う。

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 支部は分かれても、師弟関係は変わらず。グラチャンでは原田幸哉門下は柳沢一がいましたが、今節は岩瀬裕亮!