BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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丸亀オーシャン 準優ダイジェスト

踊るカープ軍団

 

9R

①辻 栄蔵(広島) 12

②重成一人(香川) 14

③山口 剛(広島) 13

④服部幸男(静岡) 13

⑤前本泰和(広島) 11

⑥濱野谷憲吾(東京)11

 

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 スリットはメチャクチャきれいな横一線。こうなるとスロー勢、特にインコースが断然有利だ。足が万全の辻栄蔵がソツのないインモンキーでくるり回り、早々に最初の1議席を決定付けた。

 2着争いは3コースから握った山口と、やはり5コースから服部を目標に握って攻めた前本の一騎打ちムード。広島勢による“仁義なき戦い”は、引き波を力強く超えてさらに伸び続けた前本が、先輩の意地で2議席目をもぎ取った。地元の重成も凄まじい追い上げを見せたが、“赤ヘル軍団”の牙城を崩せず4着に沈んだ。今日の丸亀水面は風、または潮の影響なのか、2コースに激辛の環境だった。地元のエースも、山口の引き波に泣かされた印象だ。

 

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 1着・辻、2着・前本。

 辻の足は予選から常にトップレベルだと思うのだが、日に拠って、あるいは昼夜によってストレート系にそこそこ大幅な変動があるような気がしてならない。“ペラ職人”と呼びたくなるほどペラ調整に励む選手なので、枠番を踏まえて意識的に変えているのか。それともゾーンが狭いのか。いずれにしろ、回り足は節イチを争うほど強力なので、明日もこの部分をしっかり維持する仕上がりになるだろう。足的には2コース向きのパワーだと思う。

 

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 前本の足は昨日から超ゴキゲンで、今日も引き波を超えてから押していくレース足が半端なく見えた。直線も回転が合うと上位レベルだが、スリットから自力で攻めきるだけの行き足はない。明日もスロー勢の展開をしっかり見据えて、渾身の差しを狙うだろう。ツボにはまれば、バック前半で一気に突き抜けるだけの破壊力はある。前検から支持してきただけに、応援したいパワーでもあるな。

 

最大のV機

 

10R

①峰 竜太(佐賀) 11

②山崎智也(群馬) 16

③茅原悠紀(岡山) 17

④小野生奈(福岡) 15

⑤松田大志郎(福岡)18

⑥丸岡正典(大阪) 21

 

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 スリット横一線もイン有利だが、さらに自身だけが舳先ひとつ突き抜けてしまえば、インにとって盤石の隊形と言っていい。しかもしかも、それが峰竜太なのである。1マーク手前のアドバンテージはちょうど1艇身。例によって智也が2コースから握ったが、まったく届かない。上体を急激に左に傾けて描いた航跡は、ターンの出口で他を3艇身ほども置き去りにしていた。そのターン、速すぎる! 第3議席、確定。

 一方、2着争いは混戦を極めた。智也が握ったのを見た茅原は、我慢の差しハンドルで智也の内に舳先を入れる。さらに4カドのまくり屋・生奈も、ぐっとこらえて二番差しに構えた。大人になったと言うのか場馴れしたと言うのか準優らしい戦法だったし、パワー差も生かして生奈が完全に主導権を握った。茅原、智也の賞金王コンビの内から、1艇身ほど突き出てゆく。

 

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 優出だっ!

 バック後半で私は確信した。それほど生奈の2マークのターンには絶大なる信頼を置いているし、パワー的にもぶん回すだけで決着がつくと思った。実際、生奈は1ミリの迷いもなく全速で握ったのだが……そのターンはかなりチグハグで、水面を噛みすぎたというか、大きな水しぶきを上げてガクンガクンと縦に揺れて失速した。機力的な問題があった可能性もあるが、おそらくは気持ち(レバー)とハンドルが噛み合わなかったのではないか。瞬く間に茅原が内から突き抜け、さらに切り返した丸岡も艇を横付けし、そこで今節の生奈のV戦線はほぼ終焉を迎えた。

 

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 そしてそして、生奈に代わって3艇身ほども抜け出した茅原が、今度は2周1マークでやらかしてしまう。痛恨のキャビテーション。これまたレバーとハンドルがシンクロせずに、自滅したように見えた。ふたりともに「ここをしっかり回れば、優出確定!」という思いが強すぎたか。若さはレーサーに非凡なスピードを授けるが、同時にメンタル面での振幅の激しさも内包させる。諸刃の剣の凶の部分を露呈して、ふたりの若武者が大魚を逸した。2着を取りきったのは、無欲無心に前を追っているように見えた丸岡だった。

 

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 1着・峰、2着・丸岡。

 11Rの結果も踏まえて書くが、峰の足はスリット同体なら文句なしに逃げきれるパワーだ。もちろん、彼の卓越した光速モンキーも込みで。今日と同じようにコンマ10ほぼ全速で行ければ、V確率は95%以上だと思う。メンタル面でも、予選トップ~逃げ~逃げという過程ではなく、「降って湧いた1号艇」という心の余裕も間違いなくプラスに作用するだろう。ついについに、その時が来た。ほぼほぼ、そう言いきっていいだろう。

 丸岡の足は、優勝戦の5号艇ではかなり苦しいか。自力でまくれるだけの伸びは難しそうだし、展開を突いても引き波でややブレーキが掛かってしまうだろう。正直、現時点では「道中の幸運も含めて、よくぞ優出まで漕ぎつけた!」という思いの方が強い。もちろん最後の一発勝負、何が起こるか予断は許さないのだが……。

 

くノ一の刺客

 

11R

①篠崎仁志(福岡)15

②遠藤エミ(滋賀)09

③井口佳典(三重)08

④原田幸哉(長崎)10

⑤松井 繁(大阪)12

⑥坪井康晴(静岡)15

 

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 波乱は最後に待ち受けていた。井口の意表の3カド攻撃が、その布石だったか。“カド受け”のエミが井口の猛攻に耐えるべく、ゼロ台まで踏み込んで舳先を並べた。その内の仁志は、コンマ15発進。SG準優としては過不足のないスタートだったが、エミの舳先がグイと突出している。そして、そのアドバンテージを得たエミは、迷うことなく上から襲い掛かった。必死に艇を併せて抵抗する仁志には、もはやまともに旋回するだけのマイシロがなかった。真横に流れるようなインモンキーは舳先がターンマークに接触し、左右にバタバタと揺れてからやっと前に進みはじめた。

 

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 この大競りを尻目に、井口が飄々とブイ際を突き抜けていく。ほとんど採用しない3カド戦法をこの大一番でやらかし、しかもコンマ08までぶち込んだ度胸と行動力は、さすがの井口だ。バック中間で5番目のファイナリストがほぼ確定。そして、最後の一席をつかみ取ったのは、バック最内から力強く伸びきった坪井だった。大外を走る仁志は2マークを全速でぶん回したが、坪井を捉えきるだけの迫力はなかった。

 1着・井口、2着・坪井。

 井口の足は初日から上位レベルで、スリットから舳先ひとつ抜け出す行き足が取り柄か。ただ、今日の3カドでしつかりエミに受け止められたように、同体から突き抜けるだけの破壊力はない。明日もまた3カドがありえるが、4号艇の前本がそれを嫌えば押さえつけられるだろう。同体から峰を叩き潰すのは至難の業、となれば辻が動いた瞬間にツケマイ気味のまくり差しを打つ可能性が高い。それが決まるかどうかは、峰のスタート&メンタル次第だと思う。

 

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 坪井の足は今日も節イチ級、いや節イチだったと言いきりたい。バック最内からぐんぐん伸びて、2マークのターンは井口に舳先を突っ込むほどの勢いに見えた。どこをどう整備すれば、これだけパワーアップするのか。明日も坪井マジックでさらに上昇するようなら(←ちょっと考えられないことだが!!)、展開次第で6コースからでも頭まで突き抜ける可能性はある。あくまで、スロー勢がもみ合いになったら、ではあるが。(TEXT/畠山、PHOTOS/シギー中尾)