BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――灼熱の準優!

10R 苦笑い

f:id:boatrace-g-report:20180102093217j:plain

 レース後は苦笑いが目立つのだった。まず、長嶋万記。スタートでヘコんでしまっては、もう笑うしかない。台風の影響なのか、向かい風がかなり強く吹く中でのレース。スタート勘がつかめないのも無理はない。

f:id:boatrace-g-report:20180102093228j:plain

 2着の細川裕子もスタートで後手を踏んだ。いったんは優出圏外を走らねばならなかったが、1周2マーク逆転で2着。レース後に仲間に囲まれると、優出を果たした笑顔というよりは、1マークの失敗→なんとか優出という過程に対する苦笑いを浮かべた。

 岡山トリオでは、樋口由加里も苦笑いだった。見せ場を作れなかったことに対してのものか。あとの二人、田口節子と喜井つかさからは苦笑いは見られず、田口はやや表情を硬くし、喜井は淡々と敗戦を受け入れている雰囲気だった。田口は1マークでは1等も見えていたし、松本晶恵に差されたものの2番手を走っていたのだから、硬い表情で当然。ただ、田口とモノノフ仲間の池上カメラマンとの会話では、田口の口から「もう帰ろう!」という言葉が聞こえてきた。そのときの田口は苦笑いだった。

f:id:boatrace-g-report:20180102093246j:plain

 勝った松本晶恵は、もちろん苦笑いにはならない。ピットに上がった瞬間、櫻本あゆみとハイタッチ。それは力強いものではなく、なんともかわいらしいハイタッチであった。その後はカメラマンに囲まれて笑顔。会見にもスッキリとした表情であらわれている。その会見では、畠山を狂わせた笑顔を何度も見せていた。アキエスマイル、ほんとにヤバいんです。

 

11R グレートマザーがニッコニコ

f:id:boatrace-g-report:20180102093257j:plain

 五反田忍は惜しかった! 1マークではたしかに日高逸子を差し切ったのだ。しかし、ホームが強い向かい風ということは、バックは強い追い風。内から伸びてきた艇が見えれば、握ってしまっても仕方ないわけだが、これは流れる。その意気や良し、であっても、本人は悔しいだろう。

 控室に戻るときには、寺田千恵が五反田に並びかけて、カポック脱ぎ場に着くまで声をかけ続けていた。五反田は何度もうなずいていたあたり、慰めとアドバイスといったところか。二人ともヘルメットをかぶったままだったので表情や言葉は伝わってこなかったが、何度も悔しい思いをしてきたテラッチが五反田に気遣いを見せることは不思議ではない。同じレースを戦った敵同士であっても。

 今井美亜には、落合直子が寄り添っていた。ヘルメットを脱いだ今井の表情は明らかに悔しさに満ち満ちており、笑みを浮かべてもいたが、その笑み自体が引きつっていた。まあ、当然である。

 中谷朋子は感情を表に出すような場面は見当たらなかった。レース後にはリプレイに見入る姿もあったが、一貫して表情は変わっていない。静かに悔しさを噛み締めている、といったところだろうか。

f:id:boatrace-g-report:20180102093309j:plain

 敗者と対照的に、日高逸子がニッコニコになるのも当然のことである。エンジン吊りの間は淡々としたものだったが、カメラマンにポーズを要求されたあたりから笑顔がこぼれまくりだった。会見でもゴキゲン。レディースチャンピオン優出が5年ぶりであること、昨年と今年は優勝がないことなどを訊かれても、ハッハハーと笑っていた。今節の登番トップが、優出を果たして笑顔を振りまく。なんともハッピーな光景である。

f:id:boatrace-g-report:20180102093321j:plain

 遠藤エミも、カメラマンからフラッシュの雨を浴びせられながら、笑っていた。ところが、撮影会が終わるや、急に真顔になって首をひねったのだ。納得いかない、といった雰囲気。2度3度首をひねっているうちに、こちらと目が合った。目を合わせながらもう1回、首をひねる。遠藤のなかにまだ何か、しっくりきていない部分があるのかもしれない。残念ながらその後に捕まえることができなかったので、明日朝に接触できたなら尋ねてみよう。

 

12R 格上の貫録

f:id:boatrace-g-report:20180102093332j:plain

 SG2節連続準優出、女子初のSGでの3連勝など、今年の女子勢では格上の成績をマークしている小野生奈が、その力の差を見せつけて優勝するのか。準優1号艇は3人ともが優出したが、逃げ切りは小野だけである。しかも、山川美由紀の前付けをこらえてのものだ。圧倒的に価値のある優出である。

 まあ、小野のレース後を表現するなら、結局のところは「元気いっぱい」となってしまう。リフトで上がってきて、仲間がボートを引っ張ろうとすると、「よろしくお願いします!」。エンジン吊りが終わると「ありがとうございました!」。ヘルメットをかぶったままでも、ざわざわとしているなかでも、ハッキリと耳に届く。会見でももちろん明るい。笑顔で質問にハキハキと応えていく。SGで実績を残そうと、予選トップで優勝戦1号艇に辿り着いても、小野生奈のそういったところは変わらない。それが明日も自然体でキープされるようなら、かなり優勝に近いと思うのだが、どうだろう。

f:id:boatrace-g-report:20180102093343j:plain

 2着の岸恵子も、レース後にわりと淡々としているように見えるのは変わらない。ただ今日の場合、仲間が非常に喜んでいるのである。岸はレディースチャンピオン17回目の出場。初代レディースチャレンジカップの覇者でもある。なのに、今回が初の準優進出だったのだ。そしてとんとん拍子で優出にも辿り着いた。彼女の苦闘を近くで見てきた仲間が笑顔にならないわけがないのである。それが反射するかのように、岸も柔らかい笑顔を見せていた。足的にはもちろん優勝が狙える。明日、一気に優勝まで突っ走ったときには、仲間は、岸は、どんな表情を見せてくれるだろう。

 敗れた選手たちでは、川野芽唯が苦笑い、山川美由紀は意外や笑顔で、佐々木裕美も口元に悔しさがうかがえる感じではあったものの笑顔。守屋は少し表情がカタかった。

 川野には、松本晶恵が歩み寄って慰めていた。2番手の目が充分にあっただけに、心残りであろう。松本の言葉の投げかけに、川野はがっくりとうなだれるような仕草を見せながら、苦笑い。足の差も感じられただろうから、そういう表情になるだろう。

f:id:boatrace-g-report:20180102093356j:plain

 山川の笑顔からは、やるだけやったが駄目だったか、というようなある種の充実感も見えたような気がした。今節は大整備を施し、予選道中通じて調整に駆け回り、外枠では前付けもし、この準優でも2コースに潜り込んだ。たしかにやるだけやった、と言うべきである。だとするなら、機力劣勢のなかでよくぞここまでと、称えるべきである。もちろん優出を逃した悔しさはあるだろう。それでも、山川のどこか達観したような表情は、たくさんの修羅場をくぐり抜けてきた者にしか出せない、貫録である。(PHOTO/池上一摩 TEXT/黒須田)