BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――笑顔と落胆と

 

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 5Rの山田祐也は惜しかった。素晴らしいスピードの5コースまくり差しが突き抜けた……と思った瞬間に舳先が浮き、SG初出走初勝利は霧散した。

 すっかり暗くなったピットで山田に声をかけると、「いや~~、乗り方の問題でしたね~。モンキーの荷重のかけ方が……」と顔をしかめた。1着が見えていただけに、そりゃあ悔しさは増幅する。初のSG夢舞台とか、相手が強いとかは関係ない。むしろそうした舞台で掴みかけた勝利を逃したのは、後悔ばかりが残るだろう。

 ただ、これでやれる手応えはできたでしょ、と問いかけると、山田ははにかみながらもうなずいた。実際に怯んでいたかどうかはともかく、あれだけのレースがSGでできたのだから、気後れはいっさいなくなったと言っていい。昨年の新人王が見せたハツラツと輝く光。水神祭におおいに期待しよう。

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 若者との会話に爽快さを感じていたら、峰竜太がニコニコと近寄ってきた。「SG獲ると、負けても楽しいですわ」。ダハハハハ! 浮かれちゃってるのか。今日は2走して3着、5着。あまりいいところを見せることができなかったが、峰竜太は明るいのである。こらこら、と諫めたくもなるわけだが、これは機力的には好感触だからでもある。巻き返せる手応えがあるのだ。あと、悲願達成のご祝儀笑顔、ということでいいだろう。勝負どころになってくれば、また負けて悔しがる峰竜太になるはずだ。今日のところは、ゴキゲンで明日の戦いに向かい、今日の分を取り返してもらいたいと言っておこう。

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 SGをいくつ獲っても、負ければ露骨に悔しがるのが今垣光太郎。まあ、峰竜太もいずれ同じ境地にはなるだろう。今日はあまりいいところなく5着。肩を落とすのがまあ、当然の初日となってしまった。

 それでも、光ちゃんはルーティンを放ったらかしにはしない。レース後の今垣のルーティンといえば、ボート磨き。12Rを走ったあとは、すぐに着替えて帰宿の準備をしなくてはならないが、そのときでもカポック姿のままできるかぎりボートに残り、できるかぎりボートを磨く。それは相棒への愛情でもあり、また明日もしっかり戦おうという準備でもある。今日ももちろん、その姿があった。7Rを走った後は調整作業をこなし、そののちに閑散とした装着場にあらわれて、いつも通りにピカピカに磨き上げた。明日こそはという気持ちが、そのときに芽生えたりもするのだろうか。

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 やはり自分のボートのそばにいたのは池永太。ただしボートを磨いていたのではなく、艇底を覗き込んでは、ちょっと持ち上げて軽くズラしたりするなど、ボート架台に乗せるバランスを気にしているようであった。これも相棒への慈しみの一環であろうか。その姿にレンズを向けていたら、池永はカメラ目線になってニコッと笑った。この男、無骨にも見えるが、実に好漢なのである。7月のはじめに、メモリアルのキャンペーンでボートレースアンテナショップ那覇にともに行ったのだが、終始気を遣い、周りを盛り上げてイベントを成功に導いていた。若松は純地元水面。ここで目立つ活躍を見せて、今後につなげたいところだ。

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 整備室を覗くと、30号機=深川真二と赤岩善生が話し込んでいた。期待された9Rは5着。30号機のパワーを発揮することができなかった。それもあって、おそらくは点検だろうが、モーター本体を覗き込んだりする姿があった。そののちに、赤岩との会話が始まった感じだ。赤岩には以前、深川とはよく話をする間柄だと聞いたことがある。整備の面において、通じる部分があるようだ。今日の赤岩は、なんとも厳しい機力に苦しむレースとなった。大きな整備もして、レース後ももちろんモーターと向き合い、プロペラ調整にも手を付けている。エース機とワースト機という対照的な二人だが、しっかり能力を引き出してレースに向かおうという方向性自体は変わることはない。明日はともに底上げしたパワーをレースで見せてもらいたい。

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 さてさて、後半も勝利者インタビューブースのお話。10Rを勝った毒島誠が汗びっしょりでやってくると、なぜかソフトバンクホークスのユニフォームを着ている。ホークスファンでしたっけ?

「いや、ここに辿り着く前に、ファンに着てくれって渡されたんですよ。どこのファンかって? 一生懸命頑張っているプロ野球選手全員を応援してます(棒読み)」。

 最後の棒読み部分では毒島も我々も大爆笑となった。進入から厳しく、超抜・寺田祥が控えているという一戦を逃げ切って、実に気分が良さそうであった。前半5着を巻き返す1着でもあり、メンタル的には上向きで明日に向かえそうだ。メモリアルでSG初優勝を果たしたのは、なんともう4年も前のこと。そろそろてっぺんに立つ毒島を見たいぞ。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)

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資料を見ながらスポーツ報知・藤原記者の取材に応える遠藤エミ。今日は着をまとめて、明日の1号艇で得点を上積みさせたいところ。

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今日は3R1回乗りだったが、その後はたっぷりとペラ調整に時間を費やした谷村一哉。3年前の若松メモリアルは白井英治のSG初Vばかりが語られるが、あのとき優勝戦1号艇だったのは谷村一哉。これはリベンジの舞台でもあるのだ!