１Ｒスタート展示が終わると、ピットは閑散となった。係留所では、湯川浩司、石渡鉄兵が調整作業をしている姿はあった。ただ、係留所は満艇状態になってはいるものの、選手不在のボートが多かった。試運転やスタート練習を終えて、いったん一服つけているか、ペラ室で調整を始めたかしている選手が多かったということ。まあ、この暑さだ。しっかり涼をとり、体調を整えるのも“整備”である。回転を合わせていた湯川が作業を終えて陸に上がると、大粒の汗がポタポタと垂れていた。しっかり水飲んで、と思わず声をかけそうになる。
前回のレディースチャンピオンでは、女子選手が暑さに負けずにひたすら動き回っていた旨を記事にしている。そしてそれを称えた。では、女子に比べてＳＧクラスの選手が怠けているのか、といえばそんなわけがない。２日目前半の様子は対照的ではあるが、メモリアル戦士たちがダラダラしているなんてことは断じてないのだ。２日目前半にしてピットが閑散とするのは、彼らの仕事が早いということでもある（これもやはり、女子の仕事が遅いということでも断じてない）。また、戦う準備を整える方法を確立している（だから強い）ということも言えるだろう。
装着場の真ん中で、ボートのへりに座りながら、中田竜太が高尾晶子さんと談笑していた。装着作業を終えて、会話が始まったものと思われるが、すぐに動き出す必要がないほど、他の準備は整っているということでもある。もちろん、このあとには調整作業が始まることだろう。ＳＧクラスは時間の使い方もうまいと思う。
装着場をふらふらと歩いていると、整備室から永井彪也があらわれた。こちらを見るや、丁寧にあいさつを投げてくれる。うん、爽やかだ。イケメンですな。永井は自分の作業はもちろん、先輩たちの世話をする、いわゆる“新兵仕事”もこなさなくてはならない。だから、合間合間に装着場にやってきては、何やかやと雑用をこなすわけである。永井の背中を見送ると、山田祐也も同様だった。１Ｒが近づいてきて、山田はアカクミ（スポンジ）とピンクの艇旗と試運転の艇番を用意していた。１Ｒには田村が出走している。早くから１Ｒを走ったあとには試運転をすることが伝えられて、山田がその準備をしていたということだろう。ＳＧを制覇してきた先輩たちもこういう時期を超えて、スターとなった。永井も山田も、誰もが通る道を今、力強く歩き始めているのである。
さてさて、本日の公開勝利者インタビューのブース話。２Ｒ、岩瀬裕亮が１着。ＳＧ３節目にして水神祭！ 微笑みを浮かべながらやってきた岩瀬は「やっと勝てました」と顔をほころばせた。３年前のメモリアルに出場してからしばらくＳＧ出場がなかったから、なおここまで長くかかったと実感されているのだろう。これはもちろん通過点でしかないが、しかしここを通過してはじめて、ＳＧ制覇への道を踏み出したということにもなる。まずはＳＧ常連となって、頻繁に顔を合わせられることを期待しています！（ＰＨＯＴＯ／中尾茂幸 黒須田 ＴＥＸＴ／黒須田）
