BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――明暗

 

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 初日にして、早くも選手の表情に明暗が見て取れる。たとえば、5コースからまくり差し快勝の山田祐也は、モーター架台を運ぶ新兵作業をしていても、どこか余裕のある雰囲気に見える。山田はメモリアルでも5コースからあわやの展開を作ったように、このコースからのまくり差しは得意技。それをしっかりと爆発させて、気分が悪かろうはずがない。

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 木下翔太も、報道陣からの問いかけには朗らかに応えていた。屈託なく笑う様子もあった。木下は6号艇で3着、後半9Rを4コースから差して1着。後半の1着は2番手に迫られる場面もあったけれども、捌き切って勝利をもぎ取った。外枠2走の初日をこの着順で乗り切ったのは大きい。大外枠も使ったわけだから、明日からの計算が立てやすくなったとも言える。テンションが上がって当然である。

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 それと正反対なのが、やはり愛知勢だ。今日の愛知勢は冴えなかった。9Rで木下に差されたのは磯部誠。この男までも1号艇を活かせずに初日を終えてしまった。木下を追いかける走りは迫力があったけれども、いくら気合が伝わる走りをしたとしても、地元ビッグでの1号艇を落としたことは納得いくはずがない。ピットに戻ってきたときの磯部は明らかにうつむいていて、エンジン吊りでは顔が歪む場面もあった。やはり差されて舳先掛けられて伸びられて2着、という展開だった海野康志郎が「俺と同じやん!」とからかって、それでようやく磯部の頬が緩んだ。まあ、苦笑いではあるのだけれど、少しは気持ちがほぐれたか。

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 11R発売中まで試運転をしていた佐藤博亮も、やはり表情は暗い。試運転を終えてモーターを格納に向かう際にはどうしても視線が下を向いてしまうし、同じタイミングまで試運転をした樋口由加里と話し込む場面でも、首をひねったり眉間にしわが寄ったりしていた。成績もそうだが、モーターの感触が芳しくなければ、選手のテンションはやはり下がる。昔、山崎智也が「エンジンが出ていないときは、朝起きると『またあのエンジンに乗らなきゃいけないのか』と気分が落ち込む」と言っていた。それが地元ならなおさらで、佐藤の明朝が心配になってくる。

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 感触が悪くても、わりと明るかったのは中嶋健一郎。試運転に降りていく際に、「ぜんぜん厄落としになってなかったですわ」と大笑いだ。レース場入り記事にも書いたとおり、蒲郡に来るときに右折禁止に気づかず違反キップを切られ、「これで厄落としできたと思うことにします」てなことを言っていた中嶋。しかし26%のエンジンを引き、初日はゴンロク。うーん、「明日から頑張ろう!」なんて返したけれども、むしろ悪いツキが続いている感じになってしまっている。ただ、その後はギアケースを交換して、ふたたび試運転に向かっている。同期の村岡賢人に「これからギアケース交換するわ!」と元気よく報告もしていて、その前向きな感じが実に素敵なのだった。

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 前年度覇者の松田大志郎も、淡々とはしているものの、どこか切羽詰まった感がある。10Rで1号艇ながら2着に敗れた後も、速攻で整備室に向かった。覗き込むと本体を割る姿が。整備可能な時間は小一時間ほどしかないが、やらずにはおれなかったのだろう。そんなときにでも表情を変えることはほとんどないが、危機感のようなものは抱いているはずである。なお、塩田北斗も本体整備。深谷知博、渡邉優美もキャブレターなど細かい部分の調整を念入りに行なっていた。

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 さてさて、今日の気になる背中は片橋幸貴。「僕は逃げません」って(笑)。そう、いかなる困難からも逃げないという姿勢は立派である。素晴らしい。でも、インのときはおおいに逃げてくださいね(笑)。もちろん、外から大穴をあけてくれるのも大歓迎です!(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)