BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――勝負駆けの空気

 

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 冷たい空気が漂うピットでは、早くから多くの選手が精力的に調整作業をし、また水面に出て試運転を行なっている。どのビッグでも変わらぬ光景ではあるものの、これが運命の一戦と思えば、少し違って見えたりもするものだ。普段なら柔らかい表情を向けてくれる湯川浩司が、険しい表情を変えずにこちらに会釈してきた。3R出走と、レースが近づいてきていることもあっただろうが、一味違った湯川と映るのも事実である。

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 今垣光太郎は、試運転をいったん切り上げてボートを陸に上げた。そして、ボートを磨き始める。操縦席の中まで丁寧に拭き始めてもいた。これは今垣のルーティン。どのピットでも見られるものだ。しかし、これがチャレンジの場だと考えると、その横顔にはいつもは感じない力強さがあるような気がしてくる。まあ、僕自身もこの舞台を特別なものと捉えてしまっているということだろう。

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 そんなふうにピット内を眺めていたら、 森高一真が腕を組んで、考え込みながら水面から上がってきた。そして、いったん控室に戻る途上で「おぅ、クロちゃん。たいして出てへんわ」とつぶやくように言った。引き当てた31号機は2連対率43%あるのだが、想像したほどの手応えがないようだ。森高の表情には、逆にいつもの力強さがないようにも見える。「なんでやろなあ……」と口にしながら、競技棟へと入っていく森高。グランプリはほぼ当確となっているが、それは戦いの場においては関係ない。妙案を思いつくまで、森高は考え込み続けるだろう。

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 そうしたなかで余裕があるのは、白井英治と寺田祥の山口コンビ。ドリームインタビューからピットに戻っても、しばらくは作業を始めずにゆったりと過ごし、1R終了後に同時にモーターを装着した。まだ乗ってもいないのだ。ドリームの時間帯は、さらに気温が下がるはずで、それを見越しての動きであろう。地元の2人だけに、調整のしかたはよくわかっている。もちろん、前検での感触が悪くなかったということもあるだろう。

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 整備室では、桐生順平と茅原悠紀が並んでゲージを擦っていた。もうゲージ擦り!? これもドリーム組ということもあるかもしれないが、「早い段階からゲージを擦っている選手はエンジン出てる」の法則を考えると、やはり気になる光景だ。ドリーム組、ということは賞金ランク上位に好気配の選手が揃っている、ということか。優勝戦前にベスト18が決まってしまう、なんてこともあるような気がしてきた。

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 2R、岡崎恭裕がイン逃げ快勝。一発逆転に向けて好発進だ。2着は篠崎仁志で福岡ワンツー。岡崎はピットに戻ってきた直後には表情を特に変えていなかったが、仁志と顔を合わせると笑顔が漏れた。仁志の表情も柔らかく、お互いにいい手応えを得られただろうか。今のところ、18位以内に福岡勢は皆無。グランプリに福岡勢不在という事態を避けるためにも、篠崎元志、前田将太らニュージェネ勢で、激しくしのぎを削る一節になるだろう。

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 1Rの女子戦は、6コースから川野芽唯が波乱を演出する勝利。これはさすがにレース後にも、笑みが漏れていた。ポイント制で行なわれるレディースチャレンジカップ、外枠を勝利で乗り切ったのは大きいだろう。これで気分も勢いも乗っていくはずだ。なお、その展開を作った山下友貴も、敗れたとはいえ力強い表情をレース後に見せていた。こちらも今後のレースに期待しよう。

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 そうそう。昨日、レディースオールスターのファン投票中間発表があった。1位は中村桃佳! 本人に振ってみたら「ビックリしました」と笑った。並み居る強豪先輩を押しのけての1位はたいしたものである。ただし、2位の長嶋万記とは約60票差。今節のドリーム1号艇の追撃を振り切るには、今節の活躍が重要となってくるだろう。ここでおおいに目立って、さらにたくさんの投票を集めて1位逃げ切りを狙え!(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)