BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――グランプリファイナルまもなく開戦!

 気温は穏やか。しかし住之江ピットの空気は凍り付いているようだった。他のSGだと最終日になれば、優勝戦に残れなかった選手は和やかな表情をしているものだが、今日に限っては敗者たちもなんとなく堅い。グランプリファイナリストの6人の気配が、場の空気を支配しているのだ。

 

 9時20分。ゴールド塗装のボディに毛書体の選手プレートがついたグランプリファイナル艇が、スタート特訓を終えてピットに引き上げてくる。

 

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 艇を陸に上げた後、菊地孝平は丁寧に相棒についた水滴を拭っていた。どのみちふたたび水面に下りることを考えるとあまり意味のない作業にみえるが、これが菊地自身の決まり事なのだろう。5分ほどかけてしっかりと艇を拭いた後、今度はペラを外してこちらも布で水滴を取りながら、選手棟へと引き上げていく。

 

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 毒島誠は険しい顔で考え事をしているようだった。特訓の状況を脳内で反芻しているのだろう。艇を陸に置き、選手棟へ引き上げるべく歩き出したのだが、10mほど歩いてふたたび艇の下へと小走りで戻ってきた。考え事に集中しすぎたのか、手袋をハズすのを忘れていたのだ。後の選手インタビューでは穏やかな表情を作っていた毒島。端からみれば気楽な5枠だが、若干の緊張はありそうだ。

 

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 厳めしい顔。というか、強力な目力で真っすぐ前を見据えていたのが、石野貴之と井口佳典の二人。あいさつをしようと思うのだが、寄れば斬られるといった雰囲気で声をかけづらい。選手よりも早くピット入りしていた中尾カメラマンによれば、「普段は挨拶すると笑顔で返してくれる選手も、みな一様に硬い表情をしていた」とのこと。グランプリのファイナリストたちは、この1走のために1年間走ってきた選手ばかり。そこには我々には想像のつかない並々ならぬ思いがある。

 

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 1レースが終わり、選手の出迎えに顔を出したのが峰竜太。同県の先輩でシリーズ優勝戦に出場している深川真二と話し込みながら歩いていた。一昔前の峰のように、ガチガチに緊張しているということもなく、かといって無理に緊張をほぐしているというわけでもなく、いうなれば自然体。ただ、減量の影響なのか、表情がやや疲れているように見えたのは気のせいか。

 

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 そして1億円にもっとも近い席を得た桐生順平。特訓から上がってたときと、1R終了後の出迎えでしか姿を見ることはなかったのだが、その一瞬の印象だが表情からは緊張がうかがえた。また、石野、井口、峰は、10時台前半にペラを叩いていたが、桐生のペラはまだ艇につけっぱなし。

 気温が上がりだした11時30分。桐生が動き出す。新聞記者の取材を終えた後、イヤホンを耳に入れながらペラ調整。昨日は1号艇で敗れているだけに、どのように仕上げてくるか見モノである。

 2017年のチャンピオンが決まるグランプリ。あと数時間でスタート!

 

(TEXT/姫園淀仁 PHOTO/池上一摩)