前回のクイーンズクライマックスで、畠山が「前検を斬れませーん!」と泣いていた。むっふっふ、オッサンの目も年の瀬を迎えて曇ったか、などと内心ほくそ笑んでいたのだが……。
すみません! バトルトーナメント、黒須田も前検を斬れません!
日ごろ、畠山に前検チェックを任せっきりという部分もあるにはあるが、今日の博多水面は実に厄介だった。ホーム強めの向かい風が吹き続け、ただでさえ水面は波立っている。さらには博多名物「うねり」も入ってきていた。強烈な難水面だったのである。
それもあってか、試運転はほとんどが単走ばかり。それも1マーク手前で多くの選手がドカッとレバーを放っていた。数組の足合わせもやはり同様で、落とすタイミングが合わなかったときには2艇旋回が成立しない有様。静水面での足合わせっぽく決まることはほとんどなく、たまたまビタッと決まったのを見たのは市橋卓士と山田祐也くらいだろうか。このマッチアップは、旋回で山田、直線で市橋が良さそうだった。
こうした水面だから、頼みの綱のスタート練習も難しかった。スリットがバラけたり、放り放り行っているように見える選手がいたり。いちおう、良く見えた選手もいるにはいたのだが、正直自信はございません。
瓜生正義/小野生奈/西島義則/笠原亮/松本晶恵/小山勉/吉川元浩/市橋卓士/濱野谷憲吾
注目モーター以外では、このあたりの名前に「○」を付けていました。
抽選記事に記した注目7機については……
67号機……佐藤隆太郎
悪くはなかったと思うのだが、際立った動きかというと微妙か、と。
71号機……藤原菜希
雰囲気はたしかに良かった。ただ、今日の時点ではスローよりダッシュのほうが力強かったような気が。トーナメントは3号艇。3カドやらないかなあ。
52号機……権藤俊光
同班の湯川浩司と同じくらいか、少し湯川に分があるように見えた。
18号機……篠崎元志
これは「○」が付きました。3本ともスローから発進して、出ていく雰囲気あり。しっかり合わせ切れば、元志らしい攻撃が可能と見える。
23号機……山田祐也
先述のとおり、市橋との足合わせでは旋回系で分が良さそうだった。スタート練習は特に目立たず。直線系は上積みが必要か。
27号機……吉田凌太郎
スタート練習1本目は枠なりで、両脇の西島と笠原のほうがよさそうに見えたがどうか。
63号機……新田雄史
「○」こそ付けなかったものの、雰囲気は悪くない感じ。2本目のスローからの足が元志とも遜色ないように見えた。
なんだか煮え切らない前検チェックですみません! あ、あと特筆したいのは、明日の6R(トーナメント5)6号艇の木村光宏はすべて深い起こしにしていました。動く気マンマンでしょう!
さて、チェックを終えてピットに走ると、すでに着替えを終えた帰宿バス1便組がチラホラ。今日は3便制のようで、基本的に班ごとに振り分けられた模様。スタート練習とタイム測定はトーナメント1から4までが前半、5から8までが後半で、1便組はトーナメント1、2、3の選手が該当。もちろん、選手班長の瓜生正義は最後まで残るし、居残り作業を希望する選手は他班で早くあがれる選手とチェンジするなど調整もできる。トーナメント1から3のなかでは、池田浩二が居残っていた。
で、多くの選手はプロペラ調整主体だったのだが、これがもう、すごい叩き方をしている選手ばかりだった! 山崎智也が親の仇かと思うほどにガッシンガッシンと叩けば、5mほど離れた場所で中村桃佳がそれ以上の力強さでガッジンガッジンと叩いている。その間近では濱野谷憲吾もガンガン。そしてその隣で田口節子がガーンガーンと木槌を振り下ろす。これが、装着場の隅にある“屋外調整所”でのお話。寒いから体を激しく動かしていたわけではあるまい。
整備室奥の調整所では茅原悠紀がガツンガツン。で、背中を向けている男子選手が悪霊を叩きつぶすがごとき、今日イチの強さでグワングワングワンと叩いているのだが、これは誰なのか確認できなかった。今回初対面の選手もいるので、そのなかの一人だろうか。
整備室入口脇の調整所では、仲口博崇が作業中。ただし、これは微細な部分を精緻に叩いており、僕が見た範囲では数少ないタイプなのであった。
ようするに、今日の難水面では足の判断がつかない選手も多く、また回転が合い切っていない前検で荒れた水面を走ったのだから「ひたすら乗りにくい」と感じた選手も多かった、ということだと思う。明日はさらに気温が下がるという予報で、今日のうちにある程度は叩き変えておかなければ、ということもあってのガッツンガッツン祭り。選手にとっても、私にとっても、実に難しい前検だったのである。
というわけで、最後に前検タイム。
1 原田篤志 6秒81
2 篠田優也 6秒82
中村桃佳
4 仲口博崇 6秒83
5 市橋卓士 6秒84
遠藤エミ
7 仲谷颯仁 6秒85
8 池田浩二 6秒86
木下翔太
トップタイムは原田で、2位に篠田、中村が続く……というわけですが、ハッキリ言って、これはあまり鵜呑みにしないほうがいいかも。というのはその3人は同班なのであります。つまり、タイム測定の時に風が弱まった可能性がある。実際、名前をあげた9名中8名はトーナメント5から8、すなわち後半にタイム測定を行なっている。後半のほうが風が収まっていた可能性は高いでしょう。前半組で入っているのは、池田浩二です。
ワーストも。
1 池田明美 7秒10
2 山崎智也 7秒08
3 石橋道友 7秒07
4 宮本夏樹 7秒05
5 鈴木勝博 7秒04
小山勉 7秒04
はい、こちらは6人中5人が前半組。池田と石橋はトーナメント1(1班)です。時間を追うにつれ、風が弱まっていったと考えていいでしょう。そうなると、8班(最終班)なのにワースト2位の智也のタイムは、ペラを強烈に叩いていたことも含め、相当に気になるわけですが……。(PHOTO/池上一摩 TEXT/黒須田)