ビッグ初日は多くの関係者がレース場を訪れる。1Rのスタート展示前には、潮田会長を先頭に競走会の方々がピットを表敬訪問していた。そのなかには、植木通彦特命理事も。艇王も、現役だったらここを走ってたんだろうなあ。植木さんの同世代がずらりと揃うマスターズピットなのである。そこに、今垣光太郎があらわれて、植木さんらにご挨拶。植木さんはともに戦ってきた光ちゃんを笑顔で迎え、がっしりと肩を抱いた。そして。
「もうフライング切るなよ~~~」
わーお。光ちゃんは前節にフライングを切っており、F2での参戦。そりゃもう、3本目は絶対に切れません。それにしても、先輩だからこそできる激励だよな~。久々の顔合わせだったのか、光ちゃんもニコニコと笑顔を返していた。“選手同士”の二人の絡みはかつてよく見られたもの。あれがもう10年以上前なんだなあ……。
植木さんと他選手の絡みをもっと見たかったが、試運転やペラ調整などに各選手忙しい時間帯。それ以上は残念ながら見ることはできなかった。そう、初日の朝ということで、どの選手も実に精力的に作業をしている。植木さんとは同県同期の今村暢孝も、プロペラ調整所でペラと向き合っていた。隣には、ドリームインタビューを終えて戻ってきた松井繁が陣取る。二人とも、鋭い目つきで調整を進めていたが、その合間に何度も会話を交わしているのが印象的であった。開会式で西島義則が「15年前のSGみたいなメンバー」と言っていたが、ピットを眺めまわすとまさにその通り。松井とノブさんも当時はSGのピットで、こんなふうに会話を交わしていたのだろうか。あるいは当時はそうでもなかった? 今村は最近もダービーなど出場していたわけだが、二人の絡みは記憶にない。松井は今節も「いつも通り」を繰り返し、その通りに作業に励んでいるが、しかし王者とノブさんの絡みがなんとなく“マスターズっぽい光景”にも見えた。うん、なんだかんだ言ってもマスターズはいいな。
今日の開会式では、「年を取ったと感じる瞬間」が選手登場のマクラとなっていて、なかなか楽しいMCともなっていたわけだが、実際のところ、ピットで見る選手たちは実に若々しい。1R出走の渡邉英児など、展示の前の準備行動など実にキビキビシャキシャキしていて、歩くスピードも速く、背筋もピッとしてるものだから、20代でも充分通用しそうな振る舞いである。
係留所からピットに続く坂を速足で昇ってくる熊谷直樹も同様。50を超えているとは思えない力強い足取りで、涙もろくはなったんだろうけど(笑)、肉体的な衰えなどまったく感じさせない。すれ違いざまに「こんちわ!」と声をかけてくる顔つきは、なんとも爽やかで、五十路を超えているのが信じられない。
そして、オープニングを飾った日高逸子も、本当に若い! エンジン吊りを終えて着替えに向かう姿は実に麗しく、勝利の笑顔もまたハツラツと輝いている。四捨五入なら還暦のグレートマザー、ほんと、まったく見えません! ベテランたちの「まだまだ若々しい!」を目の当たりにするのも、また“マスターズっぽい光景”なのである。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)
1R2着の飯島昌弘が、鈴木博に声をかけられて、舌をべローンと出して笑ってました。何言われたんだろ?