BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――エンジンと気分

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 尼崎のピットとスタンドからの距離は近い。2マーク側の観覧席のいちばん端っこからなら、ピットの様子が見えるはず。だからファンの声もよく届く。カマギーが優出した4年前のクラシックでは祝福の声が凄かった。それを耳にして、カマギーもファンに手を振っていたものだ。今日の終盤は向かい風だったから、なお大きく響く。11R、ボートを降りた石野貴之が、腰を折ったまま動かなかった。すると、ファンからエールが届く。
「石野ぉー、大丈夫かーっ!」
 たぶんその声は石野に届いてます。それが力にもなるだろう。石野は明日も走る。ぜひ声援を送ってください!

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 4カドから羽野直也がまくり、それに続こうとした石野に、2コースから握って羽野を追おうとした田村隆信が流れて接触、というシーンが11Rではあった。リプレイを見ても不可抗力としか思えないが、田村としては気に病んでしまうところだ。石野のそばに即座に駆け寄ったのはやはり田村。今日はフライング、そしてこの局面と、田村にとってはつらい一日だった。着替えを終えた後も、力ない表情を見せていたほどだ。こんな日もある、ということで切り替えて、明日以降も奮闘を見せてほしいもの。勝ち上がりの権利は消えたが、田村にもエールを!

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 表情がガラリ一変は峰竜太! 昨年の大やらかしのリベンジ、というわけではないけれども、今年はドリームを逃げ切り。勝利者インタビューに向かう峰と顔を合わせたら、右手の人差し指をピンと立ててこちらに向けニッコリ。「直った!」。峰のテンションを下げていた劣勢モーターを、一日かけて立て直したというのだ。というわけで、一気にいつもの峰竜太(笑)。まだまだ上積みする余地がありそうで、「ここから!」と力強く言ってインタビュー室への階段を上がっていった。逃げ切り1着という結果もそうだが、機力アップが峰の気持ちを高揚させる。エンジン気配、感触は選手のメンタルをいかようにでも左右するのである。

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 気分が良さそうだったもう一人が、今垣光太郎。2着、1着という発進で、内枠デーとしては上々の発進だろう。レース後はボートを磨き上げるのがルーティンの今垣は、ピットで姿を見かけることが多い。それもあって、次から次へと新聞記者さんの取材攻勢がかかった。今垣は嫌な顔ひとつせず、それぞれに丁寧な受け答え。光ちゃんの人柄というのもあるし、今日のゴキゲンっぷりもあるだろう。
 その光ちゃん、ボートを磨きながら、艇修理の方に声をかけていた。光ちゃんが指さす先には、とっても小さな傷が。それを直してほしいとお願いしていたのだ。レース後にボートと長い時間向き合っている今垣だからこそ発見できる傷だろうし、また緻密なこだわりをもつ今垣らしいお願いでもあっただろう。さらに今垣は、艇運係の方にボートの場所移動のお願い。もともと競技棟に一番近い場所に置いてあったのだが、奥のほうに置きたいと願い出たのだ。これもまた、光ちゃんならではのこだわりと見た。こうしたことの積み重ねが、今垣光太郎という選手を作っているのだろう。

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 さて、今節は篠崎仁志に聞きたいことがあった。レースに関することではないので、ヒマそうなときを狙っていたのだ。11R締切直前、手を洗っていたので作業終了と判断して声をかける。「一昨日の田口、やっぱり負けなんですか?」
 仁志は艇界きってのボクシング通なのだ。一昨日、WBA&IBF世界ライトフライ級タイトルマッチ、田口良一vsヘッキー・ブドラーが行なわれた。統一チャンピオンのタイトルマッチは日本人初だったとかで、残念ながら判定負け。でも、素人目にはけっこう微妙にも思われたのだ。田口の負けが妥当かどうかを仁志に聞きたかった。
 残念ながら仁志は未見だそうで、しかしその判定の内容について細かく解説してくれた。これがまた含蓄が深く、素人にもわかりやすいもの。今週、井上尚弥がタイトルマッチを行なうのだが、それは仁志に匹敵するボクシング通だという井口佳典の部屋で観戦することになっているとか。ああ、僕もその部屋で見たい! 次の日にその様子を聞いてみることにしよう。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)