“色物組”の活躍
ヴィーナスシリーズ、ルーキーシリーズ、マスターズリーグ。この３つのグループを私は勝手に“色物”と呼んでいるのだが、今日はそれぞれの大将格が目覚ましい活躍を魅せてくれた。
まずはヴィーナス組の小野生奈。そのリズム＆レースっぷりは圧巻の一語だった。緒戦は６Ｒの６号艇。この遠い枠が嫌われてまったくの人気薄（２連単1-6で46倍！）だったが、６コースからコンマ03でブイ際をきれいになぞり、バック中間でキッチリ３番手を取りきっていた。２艇のフライングが発生したとはいえ、「恵まれ」ではない自力の３着。百歩譲って「Ｆ艇が４・５コースから攻めてくれたから展開が生まれた」と解釈しても、こうした強運はＳＧでは必要不可欠な要素だと思う。
後半10Ｒも、ありえないような展開の利が生じた。女子戦の３コースから全速の握りマイでインの遠藤エミに襲い掛かったところ、艇を合わせて応戦したエミがターンマークに追突、もんどり打って真横に流れ去ったのだ（←選手責任の転覆）。あの接触がなければ１＝３の着順は微妙な態勢ではあった。ただ、生奈の強襲が半端ないものだったからこそ、エミのハンドルに焦りが生じた可能性も否めない。だとするなら、これもまた生奈の自力勝ちと解釈してもいいだろう。
自身の持ち味であるスリット＆１マークから攻めに攻め抜いての３着・１着。これに６号艇＆３号艇という枠を加味すれば、初日の“貯金”はかなりでかい。明日の10Ｒは凄まじい猛者たちの中に放り込まれたが、攻めの姿勢を貫いてもらいたい。
続いてルーキー組からは、恐れ入ります羽野直也！ そのパフォーマンスの派手さでは、生奈をさらに上回るものだった。口開けの１Ｒは６コースからの最内差し。６Ｒの生奈と同じような展開から、スピード溢れる旋回で先輩たちを置き去りにして２着を獲りきった。
やっぱこの子、ちょっとモノが違うかも??
改めてそんなことを感じたわけだが、後半11Ｒがまた素晴らしい。４カドからの一撃まくり!! 直前でホーム追い風→向かい風に劇的に変化し、スロー３艇がドカ遅れ（この変化はスローの方が修正が難しい）という運も味方したのだが、それにしても鮮やかな一撃決着だった。１～３コースが11勝した今日の尼崎水面でただひとりのダッシュ勝ち、というのも持っている男の証だろう。
６号艇で２着＆４号艇で１着。生奈よりもこれまた一回り大きな“貯金”を手にした羽野直也。明日の11Ｒも生奈同様の２号艇で、どこまで貯金を殖やすことができるのか。今回の投票で智也や憲吾、菊地などを上回ったルーキーが、その人気以上の成績を残すとするなら、艇界にとっては太陽ほどに明るい話題になることだろう。
そしてそして、マスターズ組からはもちろん御大・今村豊。先のマスターズチャンピオンでも随所にモノの違いを見せつけた今村だが、ＳＧで光り輝いてこそのレジェンドだ。前半２Ｒは、２コースから差しハンドルでのバック伸び比べ勝負。先行する下條雄太郎、重成一人に最内からじわりじわりと迫り、舳先をねじ込むようにして２マークを先取り。見事に１着をもぎ取ってしまった。
一方、後半11Ｒは前出・羽野の４カドまくりをモロに浴びるという斬られ役に甘んじた。ただし、まくられてからの対応の機敏だったこと。すぐに視点を切り替えて周囲を見回し、ぽ」っかりと開いたブイ際にいち早く舳先を突き刺していた。外の艇が玉突きになった運も味方して、不幸中の幸いの２着ゲット。23歳＆56歳のワンツー決着という、近年のＳＧではまるで見かけない光景が実現したわけだ。
ヴィーナス生奈、ルーキー羽野、マスターズ今村。この面々が一堂に会するというのもオールスターらしい事象だし、さらに初日に揃って予選の上位に食い込んだことも、今節の密かな愉しみではあるな。できればこのままの勢いでＶ争いの最前線を突っ走り、最終日の12Ｒで揃い踏み、なんていうオールスターらしい光景を拝んでみたいなぁ。（text/畠山、photos/シギー中尾）
